大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』より転載。
今回は大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)について解説します。

 

大久保愛
新東京病院看護部
恩田香織
新東京病院看護部

 

〈目次〉

 

 

大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)はどんな疾患?

動脈瘤とは、大動脈の一部の壁が、全周性または局所性に拡大または突出した状態です。大動脈壁の一部が局所的に拡張して瘤を形成する場合、または直径が正常径の1.5倍(胸部で45mm、腹部で30mm)を超えて紡錘状(ぼうすいじょう)に拡大した場合に、「」と総称しています。

 

動脈瘤は、瘤ができる位置によって
胸部大動脈瘤(thoracic aortic aneurysm;TAA
胸腹部大動脈瘤(thoracoabdominal aortic aneurysm;TAAA
腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm;AAA
と呼び名が変わります(図1)。

 

図1瘤の発生部位による分類

大動脈瘤の発生部位による分類

 

動脈瘤は、加齢や動脈硬化などにより、血管壁を構成する組織が弱くなって一部が飛び出すように膨らんだり、血管全体が膨らんだりするものです。瘤ができるだけでは痛みもありませんが、膨らんだ部分は血管壁も弱くなっているので破れてしまう可能性が高くなります。瘤が破れて大量出血を起こすと、ショック状態、死に至る危険性が非常に高くなります。

 

大半は症状がなく、健康診断で指摘されることが多い疾患です。

 

50歳以上の男性に好発し、動脈硬化が誘因となります。

 

 

大動脈瘤はどのように分類する?

大動脈瘤は、瘤の形、瘤の壁の構造、瘤の発生部位によって分類されます(図2)。瘤の発生部位による分類は図1を参照してください。

 

図2大動脈瘤の分類

大動脈瘤の分類

 

※1 真性大動脈瘤

 

 

患者さんはどんな状態?

大半は自覚症状がありません。

 

腹部大動脈瘤の場合、瘤の大きさによっては呼吸困難、胸部違和感、血痰、嗄声(させい・かすれ声)が生じます。

 

 

どんな検査をして診断する?

大動脈瘤の多くは無症候性ですが、発見された場合は、まず胸部CT検査を行い、治療方針を決定します(表1)。

 

表1大動脈瘤に特徴的な検査所見

大動脈瘤に特徴的な検査所見

 

 

どんな治療を行う?

胸部大動脈瘤の場合、開胸手術の選択が多くなります(表2)。

 

開胸・開腹など外科的治療のリスクが高い場合は、ステントグラフトが選択されます。しかし、ステントグラフトには解剖学的な制約があり、CTで大動脈瘤の形をみてステントに合わない場合は、実施ができません。

 

破裂の危険性が高くないと判断される場合(直径5~6cmまで)には、内科的(保存的)治療で、経過観察となります。

 

表2大動脈瘤の治療

大動脈瘤の治療

 

※2 debranching TEVAR
★1 人工血管置換術

 

 

看護師は何に注意する?

大動脈瘤の内科的治療を行う場合は、服薬指導生活指導がポイントになります(表3)。薬をきちんと服薬するように、また、動脈硬化を進展させないように、食事指導、運動指導、禁煙指導を行います。

 

大動脈瘤の外科的治療を行う場合は、まず、手術や術後の生活に対する不安を解消します。術後は合併症の出現に注意するとともに、身体的・精神的苦痛を緩和します。手術が成功しても、動脈硬化や高血圧などの危険因子を是正するために、退院前には生活指導を行いましょう。

 

表3大動脈瘤の看護のポイント

大動脈瘤の看護のポイント

 

患者さんは、疼痛、安静による苦痛だけでなく、環境の変化、不安、睡眠障害などのさまざまなストレス因子が加わっています。年齢や社会的役割などの情報から、その患者さんに合わせた声かけ、対応がとても大切になります

 

 

大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護の経過

大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護を経過ごとにみていきましょう(表4-1表4-2表4-3)。
看護の経過の一覧表はこちら

 

表4-1大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護の経過 発症から入院・診断

大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護の経過 発症から入院・診断

 

 

 

表4-2大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護の経過 入院直後・急性期

大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護の経過 入院直後・急性期

 

★1 人工血管置換術
★2 TEVAR、EVAR

 

表4-3大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護の経過 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護の経過 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

 

★1 人工血管置換術
★2 TEVAR、EVAR

 

 

表4大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護の経過 一覧

 

横にスクロールしてご覧ください。

 

大動脈瘤(TAA、TAAA、AAA)の看護の経過 一覧

 

★1 人工血管置換術
★2 TEVAR、EVAR

 

 


[memo]

  • ※1 真性大動脈瘤(上へ戻る
    血管の壁は3 層(内膜・中膜・外膜)からなる。真性大動脈瘤は、血管壁の3層が保たれた状態で瘤状に膨らみ、それが局所的に起こる。
  • ※2 debranching TEVAR(上へ戻る
    大動脈瘤が、や腹部、下肢への血管分岐部に存在する場合に行われる特殊な手法。別の場所から血管のバイパス手術を行い、血流を保持させてからステントを留置する。

文献

  • 1)アステラス製薬株式会社ホームページ:動脈硬化のメカニズム.(2019.09.20アクセス)
  • 2)セルフドクターネット:生活習慣病とは?.(2019.09.01アクセス)
  • 3)道又元裕総監修,露木菜緒監修・解説:ICU3年目ナースのノート 改訂増強版.日総研出版,愛知,2017.
  • 4)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.

 


本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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