手足口病【ケア編】|気をつけておきたい季節の疾患【8】

来院された患者さんの疾患を見て季節を感じる…なんて経験ありませんか?
本連載では、その時期・季節特有の疾患について、治療法や必要な検査、注意点などを解説します。また、ナースであれば知っておいてほしいポイントや、その疾患の患者さんについて注意しておくべき点などについても合わせて解説していきます。

 

→手足口病【疾患解説編】はこちら

手足口病

 

手足口病の症状_手足口病の主訴

 

井出 拓也
日本赤十字社医療センター・小児救急看護認定看護師

 

 

 

〈目次〉

 

 

手足口病は、主に5歳以下の乳幼児がかかる疾患です。一般的に、口腔内や四肢(手掌、足底や足背など)に2~3mmの水疱性発疹が見られます。手足口病患者さんには、基本的に対症療法となります。
発熱が見られる場合もありますが、それほど高熱になることや高熱が続くことはありません

 

1緊急度・重症度の高い患者さんを見逃さない

手足口病患者さんは、まれに、髄膜炎や小脳失調症、急性弛緩性麻痺、脳炎などの中枢神経系合併症を生じることもあります。そのため、緊急度・重症度の高い患者さんを見逃さず、治療が遅れることのないようにしなければなりません。
なお、中枢神経系合併症などにより、意識障害を呈する場合があります。患者さんが寝ているように見える場合は、意識障害なのか入眠しているのか、実際に起こして評価する必要があり、意識障害を認めた場合は、すぐに対応しましょう。

 

緊急度・重症度が高いと判断した場合は、すぐに医師への報告を行い、モニタリングの必要性について検討し、早期に治療が開始されるよう連携します。また、適切な待機場所を検討し(待合室、観察ベッド、処置室、初療室など)、再評価を含め、経時的に患者の全身状態を評価しましょう。

 

2脱水症状に注意

手足口病の症状である、口腔内の水泡が破れ、口内炎症状を呈すると、小児はその痛みで食べたり飲んだりするのを嫌がる場合があります。飲水量や食事量が低下すると、小児は容易に脱水状態に陥ります。

 

乳幼児は、自分で訴えることができないため、保護者から飲水状況や排尿間隔といった情報を得るとともに、他覚所見の評価(腋窩乾燥・口腔内粘膜乾燥・口唇乾燥の有無、眼球陥没・大泉門陥没の有無、バイタルサイン)が重要となります。

 

脱水症状の治療後は、活気や排尿の有無、脈拍数や呼吸数の変化(代償機能)などから、脱水症状が改善されているかどうかを評価しましょう。

 

3低血糖に注意

小児の場合、経口摂取不良から脱水同様、容易に低血糖に陥りやすくなります。低血糖状態に陥ると、一般的に交感神経刺激症状(発汗、不安、蒼白、動悸、嘔気など)と中枢神経機能低下症状(思考力低下、動作緩慢、意識障害など)が出現します。そのような徴候を認めた場合、血糖測定の必要性について検討する必要があります。

 

4発熱時のケア

基本的に、手足口病では、それほど高熱になることはありませんが、発熱時、寒気や悪寒戦慄がある場合は、部屋を温かくし、毛布などの掛け物で保温します。小児の場合、クーリングを嫌がる子に無理やり行う必要はありません。また、冷却ジェルシートは爽快感は得られますが、解熱効果はなく、シートがずれて口を覆い、窒息する危険性があるため注意が必要です。

 

発熱時は発汗することがあるため、清拭や寝衣交換が必要です。本人の状態を見ながら、入浴やシャワー浴で清潔を保つようにしましょう。

 

5接触感染・経口感染・飛沫感染対策の徹底

手足口病の感染経路は、飛沫感染、経口感染、接触感染です。最も重要な感染防止対策は、手指衛生です。手指衛生は、石鹸と流水による手洗いを基本とし、エタノール含有の手指消毒剤を用いることで、ウイルスの不活化効果が期待できます。子どもに対する基本的な感染防止対策では、遊具を個人別にするといった対応も必要です。

 

ナースの視点

1小児の観察ポイント

小児は、成長発達の途上であり、言語発達と表現能力が未熟なため、自ら症状や苦痛を適切な言葉で訴えることができません。また、訴える内容も明確でないため、伝わりにくい場合があります。

 

そのため、患児の重症感を見る際は、聴診器などは用いず、小児初期評価の三要素(ABC、図1)を用いて迅速(数秒で)に評価しなければなりません。小児初期評価の三要素とは、外観(Appearance)、呼吸(Breathing )、循環(Circulation)・皮膚色のことです。

 

図1小児初期評価の三要素

小児初期評価の三要素

 

文献1を参考に著者作成

 

このように、ABCの評価を行うことで、「何か変(not doing well)」という抽象的な患児の状態を「症候」として表現することができ、医療従事者間で共通言語とすることができます。

 

また、患児の場合、保護者の「上手く説明できないけれど、何か様子が変」だという訴えも、観察のポイントとなります。「遊ばない/(今まで興味があったものに)興味を示さない」「飲めない/食べることができない(食べさせようとすると嫌がる)」「ぐずって眠らない/眠り続ける」といった「3つのできない」状況を認めた場合、それらを子どもの示す異常サインとして認識し、ほかの所見とともに緊急度・重症度を評価することも重要です(図2)。

 

図23つの「できない」

3つのできない

 

2感染対策

手足口病の主症状である発疹は水泡状であり、水痘との見極めが難しい場合があります。また、発疹を主訴に医療施設に来院する患者さんの多くは、診断名がついていないことから、下記のような感染防止対策を講じる必要があります。

 

隔離

感染症が疑われる場合は、感染を拡大させないために、隔離を行います。また、周囲(保育園や会社など)での流行の有無や、来院患者さんの感染症罹患状況、すでに来院されているほかの患者さんの隔離状況を医療従事者間で共有し、残された隔離部屋の数などを確認しながら、感染対策を講じることが重要です。

 

患者指導

手足口病は、飛沫感染、経口感染、接触感染により感染します。そのため、患児自身だけではなく、オムツ交換や排便後は、保護者に必ず手洗いを行うように説明しましょう。

 

患児が幼児期以降であれば、清潔行動獲得時期にあるため、感染防止対策の必要性や方法を伝えます。幼児期前期の子どもには、教えるというより養育者が手本を示し、「真似をしたい」と思えるようなかかわりが必要です。そのためには、保護者や保育を行う保育者のかかわりが重要になります(図3)。
幼児期後期には清潔行動が自立して行えるようになりますが、子ども自身が「健康の保持・増進のために行う」という目的を持って清潔行動が行え、習慣化できるようになることが重要です。

 

図3幼児期には保育者のかかわりが重要

保護者のかかわり

 

3保護者への確認と指導ポイント

手足口病は、基本的に軽症な場合が多い疾患です。しかし、子どもが家庭で適切なケアを受けながら安全に生活するために、医療者が保護者に、病院受診のタイミングや、保護者が家庭で行う初期対応と社会資源活用の有無(表1表2)などについての説明や確認をする場合もあります。

 

表1保護者への説明・確認内容

保護者への確認内容

 

表2保護者への指導のポイント

保護者への指導のポイント

 

こういったかかわりは、受診抑制を目的として行われるものではなく、保護者が症状に対する具体的な初期対応を知り、それを家庭において実践しながら、病態変化時の受診のタイミングを判断する力を身に付けてもらえるよう行われるものです。

 

ナースは保護者の真の受診理由を知り、保護者のニーズに応えながら、上記のようなかかわりを行うことも重要な役割だといえます。

 

 

4学校保健安全法での取り扱い

学校保健安全法では、手足口病は第三種その他の感染症に含まれています。登園・登校については、日本小児科学会の「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」では「本人の全身状態が安定している場合は登校(園)可能である」とされています(ただし、厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、解熱後 1 日以上経過することとの記載があります)。

 


[文 献]

 

  • (1)Gaushe-Hill Mほか.吉田一郎監訳.APLS小児救急学習用テキスト.東京,診断と治療社,2006,23.
  • (2)厚生労働省:保育所における感染症対策ガイドライン(2012年改訂版)(2017年3月1日閲覧)
  • (3)国立感染症研究所HP:手足口病とは(2017年3月1日閲覧)
  • (4)東京都感染症情報センターHP:疾患別情報メニュー 手足口病(2017年3月1日閲覧) .
  • (5)遠藤文夫.最新ガイドライン準拠 小児科診断・治療方針.東京,中山書店,2012,464-8.
  • (6)『小児内科』『小児外科』編集委員会編.疑問解決小児の診かた.小児内科.43.増刊号,2011,241-3.
  • (7)厚生労働省HP:手足口病に関するQ&A(2017年3月3日閲覧)
  • (8)崎浜智子.感染症への対応.救急外来における子どもの看護と家族ケア.東京,中山書店,2009,60-71.
  • (9)日野治子.エンテロウイルス感染症/手足口病.最新皮膚科学大系15巻.東京,中川書店,2003,148-52.
  • (10)馬場直子.最近の手足口病と伝染性紅斑の話題.日皮会誌.123(13),2013,2999-3003.
  • (11)日本小児科学会.学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説.
  • (12)厚生労働省.保育所における感染症対策ガイドライン.

 


[監 修]
辻本登志英
日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部長 救急部副部長

 

芝田里花
日本赤十字社和歌山医療センター 副看護部長 救命救急センター看護師長

 


[Design]
高瀬羽衣子

 


 

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