人工呼吸器装着患者に対する過度の安静は、なぜ悪いの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。
今回は「人工呼吸器装着患者に対する過度の安静」に関するQ&Aです。

 

下地大輔
東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科

 

人工呼吸器装着患者に対する過度の安静は、なぜ悪いの?

 

過度の安静は、呼吸機能や循環機能の低下、抗重力筋の低下などの廃用症候群を招くだけでなく、ICU在室日数や在院日数の延長、退院時のADL能力を低下させる恐れがあります。

 

人工呼吸器装着患者に対する過度な安静の害

過度な安静は廃用症候群を引き起こし、呼吸器系や循環器系だけでなく、骨格筋や骨、患者の精神面にまで影響を与え、結果的に患者の回復を遅らせることになる(表1)。

 

表1過度な安静の害

 

心血管系 心機能低下、血栓塞栓症、起立性低血圧
呼吸器系 肺肝機能障害、上気道感染、誤嚥性肺炎、排痰能低下
筋骨格系 筋力低下、関節拘縮、筋萎縮、骨粗鬆症
尿路系 尿路感染症尿路結石
消化器系 便秘、食欲減退
神経系 神経反応性低下、協調運動障害
内分泌系 尿量増加、細胞外液変化、電解質異常
皮膚 褥瘡

 

患者がICU退室後の病棟生活や退院後の日常生活へと円滑に移行するためにも、過度な安静は避けるべきである。

 

仰臥位などの安静臥床による呼吸機能低下のメカニズムとして、FRC(機能的残気量)の減少が挙げられる図1)。

 

図1姿勢の違いによる呼吸機能の変化

 

鎮静薬を使用した人工呼吸器管理下では、背側の横隔膜運動が減少し、重力の影響による換気血流比の不均衡分布が生じ、下側の肺障害(荷重側肺障害:dependent lung disease)などの二次的合併症を引き起こすリスクがある(図2)。

 

図2下側肺障害

 

 

海外における報告では、人工呼吸器装着患者に対する早期離床チームの介入によりICUの在室日数や入院期間が短縮するとされ、積極的な離床は早期のICU退室、退院に有利に働くとされている。

 

2013年の人工呼吸器装着患者に対する早期リハビリテーションの研究報告をまとめたシステマティックレビューにおいても、早期離床の効果として身体機能の向上や退院時の能力に好影響をもたらすことが明らかとなっている

 

略語

 

  • FRC(functional residual capacity):機能的残気量

[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護知識トップへ