人工呼吸中の鎮静は、患者の予後に、どんな影響を及ぼすの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。
今回は「人工呼吸中の鎮静」に関するQ&Aです。

 

植村 桜
大阪市立総合医療センター看護部

 

人工呼吸中の鎮静は、患者の予後に、どんな影響を及ぼすの?

 

過剰鎮静による弊害として、VAP(人工呼吸器関連肺炎)などの身体的合併症、せん妄やPTSD(心的外傷後ストレス障害)など精神的合併症のリスクが増加します。

 

人工呼吸中の過剰鎮静による合併症

過剰鎮静による咳嗽反射の減弱や呼吸抑制は、VAPの発症に影響を及ぼす。

 

鎮静の結果、臥床安静が長期に及ぶと、廃用障害が引き起こされる(表1)。呼吸筋の萎縮や筋力低下は、人工呼吸器からの離脱困難を招く要因となる。

 

表1廃用障害

 

骨格筋 筋萎縮、骨粗鬆症、関節拘縮尖足
循環系 運動能力の低下、起立性低血圧、眩暈、浮腫
呼吸器系 低換気、下側肺障害
代謝 異化作用の亢進
その他 尿閉、腎結石、便秘、褥瘡、無力

ICUの重症患者においては、筋力低下を主体として、末梢神経や筋障害を併発する神経筋障害(ICU-AW)が注目されており、適切な鎮静管理下の早期運動療法の効果が期待されている。

 

鎮静による不動化は、DVT(深部静脈血栓症)や肺梗塞のリスクを増加させるため、リスクレベルに応じた予防策を講じる必要がある。

 

鎮静による健忘や妄想的な記憶がICU退室後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)と関連している。

 

ベンゾジアゼピン系薬剤は、せん妄やPTSD発症のリスク因子となる。

 

過剰鎮静そのものが人工呼吸器装着期間・ICU入室期間を長期化させ、精神的合併症のリスクをさらに増加させるという悪循環を招く。

 

鎮静は、身体的にも精神的にも患者の予後に影響を与えるため、医原性リスクとしてとらえ、ABCDEバンドル(『ABCDEバンドルってなに?』)のような包括的管理指針を導入し、患者の予後の改善に努めることが重要である。

 

略語

 

  • ICU-AW(intensive care unit acquired weakness):ICU神経筋障害
  • DVT(deep vein thrombosis):深部静脈血栓症
  • PTSD(post-traumatic stress disorder):心的外傷後ストレス障害

[文献]

  • (1)日本集中治療医学会:ICUにおける鎮痛・鎮静に関するアンケート調査. 日集中医誌2012;19:99-106.
  • (2)日本呼吸療法医学会人工呼吸中の鎮静ガイドライン作成委員会:人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン. 人工呼吸2007;24:146-167.
  • (3)Barr J, Fraser GL, Puntillo K, et al. Clinical practice guidelines for the management of pain, agitation,and delirium in adult patients in the intensive care unit. Crit Care Med 2013; 41: 263-306.
  • (4)飯田有輝, 坪内宏樹:ICU患者の早期運動療法の効果. ICUとCCU2012;36:407-413.
  • (5)臼杵理人, 松岡豊, 西大輔:集中治療室における急性ストレス障害(ASD)と心的外傷後ストレス障害(PTSD). ICUとCCU2012;36:181-187.
  • (6)古賀雄二, 若松弘也:ICUせん妄の評価と対策:ABCDEバンドルと医原性リスク管理. ICUとCCU2012;36:167-179.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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