ABCDEバンドルってなに?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。
今回は「ABCDEバンドル」に関するQ&Aです。

 

古賀雄二
川崎医療福祉大学保健看護学科准教授

 

ABCDEバンドルってなに?

 

「バンドル」とは「束」の意味で、複数の行為を同時に行って効果を示すものをいいます。
ABCDEバンドルは、それぞれの行為の頭文字をとったもので、医原性リスクを低減することで合併症を防ぎ、患者機能やQOL維持を目指す包括的ICU患者管理指針です。

 

ABCDEバンドルの概要

ABCDEバンドルは、人工呼吸や鎮静のデメリットおよびICUせん妄・ICU-AW(ICU神経筋障害)などの医原性リスクにより生じる病態が負のサイクルを形成し患者に不利益をもたらすという理論(図1)に基づき、それらの低減策を組み合わせた管理指針である(表1表2)。

 

図1敗血症患者のICU-AD・ICU-AWの関係図

敗血症患者のICU-AD・ICU-AWの関係図

 

Vasilevskis EE, Ely EW, Speroff T, et al. Reducing iatrogenic risks: ICU-acquired delirium and weakness—crossing the quality chasm. Chest 2010 ;138:1224-1233.

 

表1ABCDEバンドルの概要

 

A: 毎日の鎮静覚醒トライアル
  • 鎮静薬を減量・中止することを毎日試みて過剰鎮静を防ぐ方法
  • 類似する考え方に無鎮静管理などがあるが、ABS(鎮痛重視型鎮静)が基本となっている
B: 毎日の呼吸器離脱トライアル
  • 一定の条件を満たした患者の人工呼吸器への依存をできるだけ少なくしていく方法
C: AとBのコーディネーション、鎮静薬の選択
  • 毎日の鎮静覚醒トライアルと毎日の呼吸器離脱トライアルを統合したABCトライアルと、鎮静薬の選択を指す
  • せん妄リスクのより高いベンゾジアゼピン系薬剤を避け、デクスメデトミジンの使用が推奨される
D: せん妄モニタリングとマネジメント
  • CAM-ICU・ICDSCなどの評価ツールを用いたせん妄モニタリングを行い、せん妄リスクファクターの管理を行うことである
E:早期離床
  • 離床開始基準と4段階の離床プロセスを表2に示す
  • このほかにもABCDEバンドルではICU-AW予防を早期離床に含めている(図2

 

表2ABCDEバンドルのベッドサイドプロトコル

 

〈ABC〉実施要件は人工呼吸管理中であること
1 : SAT安全評価
けいれんがない、アルコール離脱症状がない、興奮がない、麻痺がない、心筋虚血がない、頭蓋内圧上昇の所見がない
2 : SAT安全評価をパスしたらSATを実施する
SATは、すべての鎮痛薬・鎮静薬投与を中止する
  失敗:半量から鎮静を再開し、必要に応じて減量する
  成功:SBTスクリーンを実施する
3 : SBT安全評価
興奮がない、酸素飽和度≧88%、FIO≦50%、PEEP≦7.5cmHO、心筋虚血がない、多量の昇圧薬を使用していない、吸気努力がある
4 : SBT安全評価をパスしたらSBTを実施する
SBTはTチューブを使用するか、人工呼吸器設定をRR0、CPAP/PEEP≦5cmHO、PS≦5cmHOにすることで、換気補助を中断することである
  失敗:SBT開始前の人工呼吸器サポートに戻す
  成功:抜管を検討する
〈D:非薬剤性せん妄介入〉 実施要件はRASS>-3
  痛み:客観的ペインスケールにより痛みの評価と管理を行う。
  見当識: 曜日・日付・場所について説明する、最近の出来事について話す、ケア提供者の名前がわかるようにする、時計やカレンダーが見えるようにする
  知覚:必要に応じて補聴器や眼鏡を使用する
  睡眠: 睡眠維持テクニックの推進:騒音除去、昼夜の変化をつける、ケアなどによる睡眠を阻害しない、安楽・リラクセーションの促進
〈E:早期離床〉
1 : 早期離床安全スクリーン
RASS>−3、FIO≦60%、PEEP≦10cmHO、2時間以内に昇圧薬増量がない、24時間以内に活動期の心筋虚血がない、24時間以内に新たな抗不整脈薬を必要とした不
整脈がない
2 : 早期離床安全スクリーンをパスしたら早期離床を行う
  レベル1: ベッド上や座位での可動訓練
  レベル2:端座位
  レベル3:椅子への移動、立位保持
  レベル4:歩行(足踏みや室内歩行)

ICU Delirium and Cognitive Impairment Study Group: Bedside Treatments for ABCDE Protocol.http://icudelirium.staging-vh. mc.vanderbilt.edu/docs/ABCDEF_Education_Handout.pdf(2014年11月18日閲覧).より作者Dr. Elyの許可を得て和訳転載

 

ICU-AWは、重症敗血症や全身性炎症に伴う多臓器障害・不全、ベッド上安静や過剰鎮静による不動、高血糖、コルチコステロイドの使用、筋弛緩薬の使用が主なリスク要因となって生じる運動器(末梢神経・神経筋接合部・骨格筋線維)の障害である。

 

ICU-AWは敗血症患者以外の患者にも出現しやすく、予防(リスク要因の除去)以外に特異的な治療法はないとされる医原性リスク管理の重要性が示される病態である(図2)。

 

図2ICU-AWと筋消耗

ICU-AWと筋消耗

 

Schefold JC, Bierbrauer J, Weber-Carstens S. Intensive care unit-acquired weakness(ICUAW)and muscle wasting in critically ill patents with severe sepsis and septic shock. J Cachexia Sarcopenia Muscle 2010;1:147-157.

 

医原性リスク低減策として、看護師には、ABCDE+αの視点でケアプランを見いだすことが求められる。

 

+αの内容には感染、皮膚トラブル、日常生活や家族からの隔離、病状や処置やケアに関連するさまざまな身体症状や不快感の対策など多岐にわたるが、患者の個別性が反映される部分である。家族の力(power of family)を加えてABCDEFバンドルと呼んでもよい。

 

略語

 

  • ICU-AW(ICU-acquired weakness):ICU神経筋障害
  • 医原性リスク :医療行為が原因で生じるリスク
  • ICU-AD(ICU-acquired delirium)
  • ABS(analgesia based sedation):鎮痛重視型鎮静

[文献]

 

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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