上部消化管内視鏡検査|消化器系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、上部消化管内視鏡検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

 

上部消化管内視鏡検査とはどんな検査か

上部消化管内視鏡検査とは内視鏡を経口的に挿入し、食道・十二指腸の粘膜を肉眼的に観察する検査である。内視鏡の進歩により消化管検査の主流となっており、肉眼的な観察のほか写真撮影や、必要時は粘膜の生検・組織診をすることも可能であり、ポリープの切除、早期癌の粘膜切除を行うこともできる。

 

図1上部消化管内視鏡検査時の患者の体位

 

通常20分程度で終了し、観察のみの場合は1時間、生検後は2時間の禁食が必要となる。ポリープの切除を行った場合は翌日以降の開始となる。

 

上部消化管内視鏡検査の目的

  1. 炎症性病変の観察:食道炎、急性胃炎、慢性胃炎
  2. 潰瘍の観察:急性または慢性の食道潰瘍・胃潰瘍十二指腸潰瘍の状態
  3. ポリープの観察:粘膜の変化、良性と悪性の鑑別、必要時組織診
  4. 癌の観察・粘膜切除:範囲、進展度、早期癌か進行癌かの診断、経過の観察、切除
  5. その他:スクリーニング、内視鏡的治療

 

上部消化管内視鏡検査の実際

  1. 咽頭麻酔を行う。医師の指示により鎮静剤を投与する。
  2. 左側臥位をとらせ、上下肢は楽な体勢となるよう整える。顔の下に処置用シーツを敷き、ガーグルベースンを準備する。
  3. 内視鏡挿入直前に再度咽頭麻酔をし、マウスピースを軽く噛ませる。
  4. 顎を出すように説明し、内視鏡を咽頭まで挿入する。
  5. 咽頭部からは顎を引くように説明し、嚥下運動をするよう声をかける。
  6. 身体の力を抜くように説明し、静かに内視鏡を進め、食道・胃・十二指腸まで観察する。
  7. 観察部位により左側臥位から腹臥位まで体位変換を行う。必要時介助する。
  8. 粘膜・病変部位の写真撮影を行う。
  9. 必要時、鉗子孔より鉗子を挿入し組織を採取、生検を行う。
  10. 生検部位から出血を認めた場合はトロンビンを撒布し、止血を確認する。
  11. 検査が終了したことを説明し、静かに内視鏡を抜去する。

 

上部消化管内視鏡検査前後の看護の手順

上部消化管内視鏡検査に関する患者への説明

  • 上部消化管内視鏡は食道・胃・十二指腸を肉眼的に観察する検査である。
  • 必要時には写真撮影や生検を行うことがある。
  • 身体の力を抜いて、リラックスしてもらう。

 

上部消化管内視鏡検査に準備するもの

・胃・十二指腸ファイバースコープと付属品 ・マウスピース ・咽頭麻酔薬(必要時鎮静剤) ・アルコール綿 ・ガーゼ ・ガーグルベースン ・ホルマリン液入り容器

 

上部消化管内視鏡検査後の管理

1)前日

  • 夜9時以降は禁飲食とする。
  • 検査の目的と方法を説明し、同意を得るとともに不安の除去に努める。

2)検査前

  • 検査前まで禁飲食・禁煙とする。
  • 感染症の有無・既往歴を確認する。
  • 内服薬を確認する。
  • バイタルサインの測定を行う。
  • ポリープの切除を行う場合は、血管確保を行い止血薬入りの点滴を滴下する。

3)検査中

  • 内視鏡挿入時は患者の手を握るなどして苦痛の緩和に努める。
  • 検査の進行に合わせ、患者の体位を整えるよう介助する。

4)検査後

  • 安静:1〜2時間は安静とする。
  • 食事:観察のみの場合は1時間禁食、生検後は2時間禁食とする。ポリープの切除を行った場合は翌日以降から開始する。
  • 観察:観察のみの場合は終了後、生検後は終了時と1時間後にバイタルサインの側定と腹部症状の有無を観察する。
  • 検査中・生検後などに出血を認めた場合は止血を確認し、検査後のバイタルサインや腹部症状の有無に十分注意する。
  • ポリープの切除、粘膜の切除後は安静解除後も入浴は避ける。
  • 検査直後の車・バイクなどの運転は禁止する。

 

上部消化管内視鏡検査において注意すべきこと

  • 高血圧・心疾患などの内服薬は医師の指示に従い、内服する場合は検査の3時間以上前とする。
  • 生検やポリープの切除をする患者の場合、ワーファリンなどの抗凝固薬は医師の指示に従う。
  • 苦痛を伴う検査であるため、常に声をかけながら行うよう努める。
  • 上部消化管内視鏡検査の合併症は表1に示した。

表1上部消化管内視鏡検査の合併症

 

上部消化管内視鏡検査現場での患者との問答例

明日は上部消化管内視鏡検査を行います。

 

どんな検査ですか。

 

口からカメラを飲んで食道や胃のなかを見る検査です。

 

苦しいですか。

 

カメラを飲み込む時につらくないようにのどには麻酔をしますが、少しつらくなる人もいらっしゃいます。検査中も看護師がついていますので、つらい時はすぐに伝えてください。

 

何か準備しておくことはありますか。

 

夜9時以降は食べたり飲んだりしないでください。検査が終わったら1〜2時間食事をとらないでいてください。

 

はい。

 

上部消化管内視鏡検査に関する患者への説明用資料

説明用資料上部消化管内視鏡検査を受ける方へ

この検査は内視鏡を挿入し、食道・胃・十二指腸を観察するものです。

 

【注意事項】

 

  • 前日の夕食は21時までに摂り、それ以降はおやめください。
  • 検査当日の飲食は、検査終了までおやめください。
  • 朝の内服薬は医師の指示に従い、必要時は検査の3時間前までに少量の水でお飲みください。
  • 血糖降下薬やインスリンを使用している方は、医師の指示に従ってください。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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