細胞外液80,L/h分で持続点滴する予定だったが、15分で急速投与してしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、細胞外液80,L/hで持続点滴する予定だったが、15分で急速投与してしまった場合について解説します。

佃 美里

長浜赤十字病院看護部
集中ケア認定看護師

 

 

 

患者に細胞外液80mL/hで持続点滴する予定だったが、15分で急速投与してしまったことに焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

急速投与してしまったことがわかったら、まず患者さんの状態と投与していた輸液の内容を確認し、緊急性があるかどうかを判断するとともに、直ちに医師に連絡して指示を確認します。

 

心機能が低下した患者さんには急速投与は心負荷になります。
3号液にはカリウムイオンが含まれているので、急速投与により血清カリウム値が急激に上昇した場合、致死的不整脈のリスクが考えられます。
 

 

POINT
  • 高齢者では加齢に伴い心臓のポンプ機能の低下や腎機能の低下、肺機能の低下が見られる場合が多く、過剰な輸液で溢水となる可能性があります。
    新生児・乳児では腎機能が未熟であり、輸液負荷で輸液過剰になりやすいです。
    このことから、高齢者や小児に輸液を行う際は特に輸液セットの選択(輸液ポンプ使用を考慮)が必要です。

 

 

起こった状況

症例

80歳代の患者Aさん。

嘔吐下痢による脱水で入院し、生理食塩液80mL/h持続点滴の指示が出ていました。

 

X線撮影のため車椅子に点滴を架け、撮影後帰室し、点滴台に点滴を架け替えました。

 

車椅子を片づけた後、他の患者さんに呼ばれ、次に訪床したときは500mLの生理食塩液がすべて落ち切っていました。

 

既往に、腎機能の低下、心機能の低下があるAさんの経過をどのように観察すればよいかわからず困っています。

 

 

どうしてそうなった?

点滴の自然滴下に影響する要因としては(表1)のようなものがあります。

それらについて確認することが必要です。

 

表1自然滴下に影響する要因

自然滴下に影響する要因を表した表


さらに、ベッド上での寝返り、車椅子移動、歩行時など、輸液ラインを巻き込む可能性があります。
輸液が確実に滴下しているか、速度は問題ないか確認しましょう。

 

一般に等張液を投与すると、輸液は細胞内にあまり移動せずに、血管内や組織内にとどまって細胞外液を増やすことができるため、出血などで血圧が低下している場合などには等張液電解質輸液が用いられます。

 

腎機能障害がある場合、カリウムを含まない輸液(1号液など)を選択します。

 

 

どう切り抜ける?

Aさんのような高齢者では、心臓のポンプ機能の低下や腎機能の低下、肺機能の低下が見られる場合が多く、過剰な輸液で「溢水」となる可能性があります。
「溢水」とは水があふれることです。

 

過剰な水は、血管内には循環血液量として、血管外には浮腫として存在します。

 

基礎疾患に腎不全心不全のある患者さんは、溢水になるリスクが高まります。

 

さらに、循環器系疾患の既往がある場合は、心機能の低下から、前負荷が増大し、さらに心機能が低下する可能性があります(図1)。

 

図1フランク・スターリングの法則

フランク・スターリングの法則を表した図

心臓の血液を送り出す能力は、心室内の血液量によって心筋が引き伸ばされると大きくなる。
しかし、どこまでも引き伸ばされるわけではないので、ある時点を超えると限界に達し、その後は減少する。

 

腎機能障害の既往がある場合は、腎臓でのカリウム排泄低下に加え、酸の排泄低下、重炭酸の再吸収低下により代謝性アシドーシスが高カリウム血症の増悪因子となります。

 

また、水過剰、電解質の異常を来たし、心不全や肺水腫などの臓器不全を起こす可能性があります。

 

このように、過剰輸液、急速落下では、溢水による心不全のリスクがあるため注意が必要です。
そのため、IN/OUTバランスとともに(図2)の項目について観察し、うっ血症状を見逃さないようにしましょう。

 

図2観察項目

観察項目を表した表

 

また、電解質バランスの補正が必要になる可能性もあるため採血のオーダーの必要性も医師に確認しましょう。
 

 

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参考文献 閉じる

1) 渡邊朔太郎:ナースが書いた看護に活かせる輸液ノート.照林社,東京,2017:6.

2) 日本赤十字社和歌山医療センター看護部編:先輩ナースのかきこみが全部のってる!コツぶっくす 輸液.メディカ出版,大阪,2021:6.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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