脳室ドレナージ中の患者さんがCT室から帰室後、意識レベルが低下した !
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、脳室ドレーンのクランプを開放していなかった場合について解説します。
兵庫医科大学病院 看護部
クリティカルケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
脳室ドレナージ施行中の患者さんのオーバードレナージを防ぐ最大のポイントは、CTなどの検査後必ず4つのクランプの確認を行うことです。
チャンバー上のワンタッチ式クランプのフィルター自体が汚染されても外気との交通が阻害されオーバードレナージとなるため、フィルター汚染の有無もチェックします。
日頃から脳室ドレナージのクランプの開閉の手順に沿って必ず回路をチェックしていきましょう。
- 脳室ドレーンには、クランプが複数ありますが、普段操作するのは、患者さんに最も近い部分のロールクランプのみです。
チャンバー上のワンタッチ式クランプは、検査等の患者移動を除き、普段は常時開放しています。
検査等でチャンバー上のワンタッチ式クランプを閉めた場合は、検査終了時に再度開放することを忘れないようにします。
起こった状況
症例
患者Aさん。急性水頭症で入院となり、脳室ドレーンを挿入しています。
脳室ドレーン挿入2日目であり、急性水頭症の評価のために午前10時にCT検査に出棟しました。
CT上水頭症の改善は認めるものの、脳室ドレーンの管理は継続が必要であると医師が判断し、脳室ドレーンは挿入したままです。
担当看護師が12時に昼食配膳しにAさんのもとを訪れ、声をかけましたがわずかに目を開くのみです。
看護師は、朝のCTでは、改善傾向にあったのに意識レベルが低下した理由がわからずオロオロしています。
どうしてそうなった?
脳室ドレナージは、通常高さを変えることによって設定圧を調節できるチャンバーのついた回路を使用します。
その見た目やクランプの多さなどの形状の複雑さもさることながら、特有の管理方法にも注意が必要です。
特に、脳室ドレナージを扱ううえでサイフォンの原理(図1)の理解は欠かせません。
図1サイフォンの原理

隙間のない管を使用すると高いところの液体が低いところの液体に流れる、これをサイフォンの原理と言う。
サイフォンの原理とは、「液体をある地点から目的地まで流す場合、管内が液体で満たされていれば、途中出発点より高い地点があっても流され続ける仕組み」のことです。
チャンバー上のワンタッチ式クランプ(図2)は常時開放しておくことで、ドレナージ回路がこの部分で大気開放され、サイフォンの原理を防ぎ、設定圧でのドレナージを可能としています。
図2脳室ドレナージ内のクランプ

脳室ドレーンは2つのロールクランプと2つのワンタッチ式クランプがある。
しかし、チャンバー上のワンタッチ式クランプは閉じたまま、その他のクランプを開放した場合、サイフォンの原理により、脳室内の髄液排出が急激に起こり、頭痛や嘔気、意識レベルの低下が生じます。
これを「オーバードレナージ」と言います。
オーバードレナージによって脳に強い陰圧がかかると脳室内出血、脳出血、硬膜下出血を起こす危険性があります。
脳室が過度に縮小することで周囲の脳が内側に引っ張られ異常な圧がかかります。
すると、脳室周囲や脳室内に出血することがあります。
さらに進行すると、脳表の血管(架橋静脈など)が損傷され、硬膜下血腫に進展する可能性があります(図3)。
図3硬膜下血腫への進行

こうなると、内側に引っ張られる圧に、外側から押し付ける圧が加わって脳の偏位が起こり、致命的な状態となります。
どう切り抜ける?
1 脳室ドレナージ回路を確認する
まず、意識レベルが下がった原因が脳室ドレナージ回路にある可能性を疑い、脳室ドレナージ回路のクランプを確認します。
その結果オーバードレナージが疑われる場合、脳室ドレナージの4つのクランプのうち、直ちに患者さんに一番近い部分のロールクランプA(図4)を閉め、医師に報告します。
図4脳室ドレーンの4つのクランプの役割

2 脳室ドレナージの排液量・性状を確認する
オーバードレナージによってどれくらいの髄液が損失したのか排液量を確認します。
普段、排液量の目標量は病態によって異なります。
脳室内には常に約150mLの髄液が満たされています。
それが、1日3〜4回入れ替わるため1時間に約21mLが産生されています。
そのため、成人の場合、正常な髄液循環から考えるとだいたい20mL/時間以上続くと低髄圧症を引き起こす可能性があります。
正常な髄液は、無色透明です。
しかし、出血病変の当初は血性であり、時間経過とともに、淡血性→キサントクロミー(薄い黄色調)→無色透明と変化していきます(図5)。
図5髄液の変化

正常は無色透明であり、出血後時間が経過していればキサントクロミーと呼ばれる薄い黄色の排液となる。
急激に性状が血性と変化した場合は、再出血を起こした可能性も考えられます。
3 意識状態・脳神経症状の把握
オーバードレナージによる意識レベルの低下を認める場合、まずはバイタルサインをはじめ意識状態の把握を行い、脳神経症状を観察していきます。
突然のけいれんの原因が、オーバードレナージによるものであったという例もあります。
オーバードレナージによる影響をCTなどで調べ、対応することとなるため、CTの準備や呼吸状態の悪化に備えて、酸素投与の準備も一緒に行いましょう。
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1) 道又元裕:ドレーン管理デビュー はじめてでもすぐできる すぐ動ける.Gakken,東京,2016:98-102.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



