2019/01/10 のクイズ

近隣の中核病院から、出生後2時間の新生児搬送の依頼がありました。児は常位胎盤早期剥離のため、全身麻酔下のもと緊急帝王切開施行となり、在胎週数36週5日、出生体重2,200g、Apgarスコア1分値1点、5分値3点、10分値4点で出生しました。自発呼吸はなく、筋緊張も弱いため気管挿管となりました。出生後60分以内の血液ガスは、pH6.9、塩基欠乏(BD)14mmoL/Lでした。明らかな染色体異常や外表奇形は認めず、心エコー上も異常は認められません。気管挿管後も刺激による反応は見られていません。搬送には40分かかるそうです。
2015CoSTR(国際コンセンサス)に基づく低体温療法の適応基準に沿って判断した場合、この児は低体温療の適応基準といえるかどうか、それぞれの判断の理由と合わせて間違っているものはどれでしょうか?
  1. 1. 在胎週数36週以上であり、体重1,800g以上であるため、低体温療法の基準を満たしている。
  2. 2. 塩基欠乏(BD)が14mmol/Lであり、適応基準Aの項目に該当していない。適応基準Aは、全てを満たしていなければならないため、低体温療法の適応とはならない。
  3. 3. 低体温療法の除外基準に該当せず、適応基準のA項目に該当する。また、筋緊張低下を認めていることから、基準B項目にも該当しており、低体温療法の基準を満たしている。
  4. 4. 生後6時間以内であるため、低体温療法開始時間の基準は満たしている。

挑戦者3197人 正解率39%

新生児の脳を保護するためには、少しでも早く新生児を目標の低体温に到達することがより効果的です。搬送中の食道温のモニタリングは困難であり、腋窩温は周囲の環境の影響を受けやすいため、できる限り直腸温を測定します。目標の体温は36℃台とします。
なお、低体温療法を施行するには、2015CoSTRに基づく適応基準を確認していく必要があります。適応基準には、全身低酸素虚血の客観的所見を見る基準A、脳症の主観的所見を見る基準B、中等度以上のaEEG異常を見る基準Cがあります。この中で、基準A、Bはどちらも満たさなくてはなりませんが、基準Cは必須ではありません。

1. 在胎週数36週以上であり、体重1,800g以上であるため、低体温療法の基準を満たしている。
不正解

低体温療法の除外基準では、「在胎週数36週未満、出生体重1,800g未満」となっているので基準を満たしています。よって、この選択肢の内容は正しいです。

2. 塩基欠乏(BD)が14mmol/Lであり、適応基準Aの項目に該当していない。適応基準Aは、全てを満たしていなければならないため、低体温療法の適応とはならない。
正解

低体温療法の適応基準Aは、「全身低酸素虚血の客観的所見、少なくとも以下のうち1つを満たす」となっています1~2)。よって、この選択肢の内容は誤りです。
1)生後10分のApgarスコアが5点以下
2)10分以上の持続的な新生児蘇生(気管挿管、バッグ換気など)が必要
3)生後60分以内の血液ガス(臍帯血、動脈、静脈、末梢毛細管)でpHが7未満
4)生後60分以内の血液ガス(臍帯血、動脈、静脈、末梢毛細管)で塩基欠乏(BD)が16mmoL/L以上

3. 低体温療法の除外基準に該当せず、適応基準のA項目に該当する。また、筋緊張低下を認めていることから、基準B項目にも該当しており、低体温療法の基準を満たしている。
不正解

この児は、刺激による反応がなく、筋緊張低下という状態です。2015CoSTRの基準B項目は「傾眠、筋緊張低下、吸啜低下、痙攣発作・人形の目反射の消失、瞳孔反射異常」とされ、どれか一つが該当する場合は基準を満たしていると判断します。よって、この選択肢の内容は正しいです。

4. 生後6時間以内であるため、低体温療法開始時間の基準は満たしている。
不正解

低体温療法の除外基準は、「冷却開始の時点で、生後6時間を超えている場合」となっています。この児の場合、出生2時間後の情報で依頼があり、搬送には40分かかるということなので、治療開始までには生後6時間を超さずに低体温療法を実施できることから、基準を満たしているといえます。よって、この選択肢の内容は正しいです。

引用参考文献など

1)田村正徳監.2.適応基準と除外基準.2015CoSTRに基づいた新生児低体温療法実践マニュアル.東京医学社,2016,18-26.
2)細野茂春監.蘇生後のケア.日本版救急蘇生ガイドライン2015に基づく新生児蘇生法テキスト.第3版,メジカルビュー,2016,89-96.
3)仁志田博司.呼吸器系の基礎と臨床.新生児学入門.第4版,医学書院,2012,373-375.

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