「看護師ならではの宿」とは? | ペンション経営ナースライフ【3】

現役ナースがペンション経営!?

「健康に不安がある人にも旅行を楽しんでもらいたい」そんな想いをカタチにしたナースマン・桐木智一が、ペンション経営ナースライフをお届けします。

 


 

第3回:「看護師ならではの宿」とは?

今回は看護師が宿をつくるとどうなるのか、ちょっと具体的に話してみたいと思います。

 

 

看護の視点が活きる宿

看護師のいる宿ということで、病院や介護施設のようにすべて介護してもらえると思われるお客さんが時折いらっしゃいます。

 

しかし「和みの風」はあくまで宿なので、特別な事情がない限り食事介助もおむつ交換もしませんし、点滴などの医療処置もしていないんです。

 

「じゃあ、看護師が宿をやる意味って何?」と思われることでしょう。

 

私は、「看護の視点でサービスを提供できること」だと考えています。「お客さんに『過ごしやすい』と感じてもらうため、どう環境を整えるべきか」といった視点を大切に。それは部屋とトイレの位置であったり、ホールへの動線であったり、ベッド位置や高さだったり、食事の内容だったり・・・。有料になりますが、入浴介助をすることもあります。経管栄養の方に対しては、お湯を用意して栄養剤を温めたり、栄養剤のバッグをかける器具を貸し出したりといった配慮をしています。

 

「hotel」も「hospital」も語源は同じ「おもてなし」。相手の小さなニーズを敏感にキャッチし、環境を整えることこそが、看護師の得意とするところだと思っています。

 

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モーター式の電動ベッド。奥に見えるのが経管栄養のバッグをかける器具です。木製の洋服かけを改造して作りました

 

また、お客さんの体調が変化したときにアドバイスができるのも看護師ならでは。宿泊中にお子さんが発熱や嘔吐、怪我をすることは珍しくありません。何か起きた場合の対応を説明すると、皆さんに安心してもらえます。そのとき・その場で対応してもらえるという「安心」を、看護師は提供できるんです

 

実際には何も起きなくても、旅行が難しい方にとって、看護師の存在は「旅行したいけどできない」というハードルを少しでも下げることになると考えています。

 

「障害者優先」でないからこそのバリアフリー

宿をつくるにあたり「バリアフリーの宿」を数カ所、見学に行きました。そこで感じたのは、「障害者にとって安心なサービス」を追求したがための、一般の宿との差。内装ひとつとっても、無機質なステンレスが目についたり、広すぎる空間が落ち着かなかったりして、私の理想とは異なりました。

 

私たち夫婦はほっこりとした和風の雰囲気が好きなので、建物や装飾を木で統一しました。手すりは木材で2段にして、機能性を保ちつつ雰囲気に溶け込むようにしています。玄関のスロープは常時置くと玄関を占領する上に、不必要な方には危険なので必要なときのみ設置するようにしています。

 

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こちらが玄関のスロープ。必要なときには設置しますが・・・

 

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普段はこのような形で収納しています

 

また、障害があるからといって、優先的な対応はしておりません。他のお客さんと同様に、日常を忘れリラックスしていただけるよう常々考えています。人工呼吸器をつけているお客さんの横で、他のお客さんの子どもたちが遊んでいる・・・。そんな情景を宿の日常にしたいんです。「ママ、あの人何で機械をつけているの?」そんな疑問から、障害者への心理的バリアが少しでも減るならば、それはとても嬉しいことだと思うんです。

 

 食物アレルギーが与えてくれた「気づき」

 開業の準備中に、息子が生まれました。生後3カ月には発疹、掻痒感(そうようかん)が現れました。診断名はアトピー性皮膚炎食物アレルギーによるもので、アレルゲンは卵、牛乳、米、小麦、イモ類、牛肉、鶏肉、タラ・・・。食べられる食材を探し、お店を何件回ったことか。旅行はおろか外食すらままなりませんでした。

 

 

食物アレルギーを持つ子どもの親の気持ちが、いやという程わかりました。そんな経験を活かして、「和みの風」ではアレルゲン除去食を追加料金無しで提供しています。食材の間違いが症状を悪化させる危険性もあるため、神経を使いますが、なかなか旅行に行けなかった当時の願いから、今もサービスを続けています。

 

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子ども向けのアレルゲン除去食。手間暇かかりますが、喜んでもらえたときの嬉しさはひとしおです

 

「普段は子どもの小麦アレルギーで大変なんです。私が一番ゆっくりできました」と、にこやかに話すお母さん。「旅行が難しい」のは、身体が不自由な方ばかりではないのです。このことに気づくことができたのは、息子のおかげだと痛感しています。

 

宿を経営する中で、お客さんから学ばされることはたくさんあります。次回はそうした点についてご紹介したいと思います。

 


■執筆者プロフィール

名前:桐木智一(きりき・ともかず)

経歴:外科病棟・緩和ケア病棟に勤務後、訪問看護に転身。さらにそののち、バリアフリーの宿「和みの風」をオープン。訪問看護の仕事でケアにも携わりつつ、宿の経営を続けている。

和みの風HP:http://www9.plala.or.jp/nagominokaze/


【ペンション経営ナースライフ|連載記事】

【1】「看護婦さんが一緒だったら、旅行するのになぁ。」

【2】開業へひた走った5年間

【3】「看護師ならではの宿」とは? 

【4】「宿のオーナー」と「訪問看護」の二足のわらじ

【5】1人でも多くの方に、旅の幸せを

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