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2017年03月17日

急性アルコール中毒【疾患解説編】|気をつけておきたい季節の疾患【5】

来院された患者さんの疾患を見て季節を感じる…なんて経験ありませんか?
本連載では、その時期・季節特有の疾患について、治療法や必要な検査、注意点などを解説します。また、ナースであれば知っておいてほしいポイントや、その疾患の患者さんについて注意しておくべき点などについても合わせて解説していきます。

→急性アルコール中毒【ケア編】はこちら

急性アルコール中毒

 

急性アルコール中毒の主訴_急性アルコール中毒の身体症状_季節の疾患

 

亀井 純
日本赤十字社和歌山医療センター集中治療部

 

〈目次〉

 

急性アルコール中毒ってどんな疾患?

急性アルコール中毒は、「アルコールの摂取により生体が精神的、身体的影響を受け、主として一過性に意識障害を生ずるものであり、通常は『酩酊』と称されるもの」と定義されています。

 

急性アルコール中毒の病態

アルコール(エタノール)は、中枢神経に作用して意識障害を来し、その程度は軽症(ほろ酔い)から重症(昏睡)までさまざまです。また、血管拡張作用、利尿作用があるため、血圧低下や頻脈といった循環への影響もあります。

 

急性アルコール中毒の症状

急性アルコール中毒の患者は、意識障害や悪心・嘔吐が主訴で受診するケースが多いです。「誰かと一緒に飲酒をしていた」「飲酒前までは異常なく、大量に飲酒した後に意識が悪くなった」という情報があればすぐに診断できますが、「身元不明で倒れているところを発見された」というケースもあります。その場合、病歴聴取による情報収集ができないため、診断が難しくなります。

軽症かつ病歴から急性アルコール中毒が明らかなケースであれば、診断は容易であり、対症療法および経過観察のみで自然軽快します。しかし、重症例では死亡に至ることのある疾患であるため、適切な重症度の評価が必要です。

急性アルコール中毒は、血中アルコール濃度に応じて臨床症状が異なります表1)。初診時、血中アルコール濃度がそれほど高くないのに症状が強い場合や、治療とともに濃度が低下しているにもかかわらず、症状が遷延する場合は、ほかの疾患(脳血管障害、感染症、頭部打撲など)を積極的に検索します。

 

表1血中アルコール濃度別の臨床症状

血中アルコール濃度_急性アルコール中毒_急性アルコール中毒の症状

 

ただし、個人差があるため、血中アルコール濃度と臨床症状は必ずしも厳密に相関することはなく、血中アルコール濃度のみで重症度を判定することはできません臨床症状が最も重要であり、血中濃度はもちろん目安になりますが、診断補助の参考程度にとどめておきましょう。

血中アルコール濃度を測定できない場合には、浸透圧ギャップから血中アルコール濃度の推定値を算出できます。浸透圧ギャップは血液検査データを用いて、以下の通り計算することができます。

浸透圧ギャップ
血漿浸透圧(実測値)-血漿浸透圧(予測値)
血漿浸透圧(予測値)
2×血清ナトリウム[mEq/L]+血糖[mg/dL]/18+尿素窒素[mg/dL]/2.8
血中アルコール濃度の推定値[mg/dL]
浸透圧ギャップ×4.6

急性アルコール中毒は、低血糖、電解質異常(低カリウム血症など)、乳酸アシドーシスなど、さまざまな代謝異常を合併することがあります。これらは血液検査、血液ガス分析により確認します。

もともと慢性的なアルコール摂取の背景があるケースでは、栄養障害を伴っていることが多く、ビタミンB1欠乏症による「ウェルニッケ脳症」を発症していることがあります。この場合、早期にビタミンB1の補充を行わなければ、不可逆的な脳障害である「コルサコフ症候群」に至ります。

ウェルニッケ脳症は、意識障害のほか、眼球運動障害、運動失調を特徴としますが、必ずしも典型的な症状がすべてそろうとは限りません。
ちなみに、コルサコフ症候群は、慢性期の後遺症として作話や記憶障害を来します。「お酒ばかり飲んでいて食事を摂らない」といった栄養の偏りや摂取不足があるかどうかを本人や家族から聴取しましょう。

 

急性アルコール中毒の鑑別診断

急性アルコール中毒は除外診断です。以下のような意識障害を生じる疾患を除外する必要があります。

  • 脳血管障害
  • 頭部外傷
  • 敗血症
  • 電解質異常:低ナトリウム血症など
  • アルコール性肝硬変による肝性脳症
  • 薬剤過量服用

また、意識障害の鑑別診断で一般的に用いられている「AIUEOTIPS(アイウエオチップス)」(表2も急性アルコール中毒の除外診断には有用です。

 

表2AIUEOTIPS

急性アルコール中毒_AIUIEOTIPS

 

急性アルコール中毒の処置・治療法

基本的な考え方

アルコールに対する特異的な解毒・拮抗薬はありません。急性アルコール中毒に対しては一般的に輸液を行いますが、これによる排泄促進効果はないとされています。支持療法を行い、アルコールが代謝排泄されるまでバイタルサインを維持します。また、アルコールは速やかに消化管から吸収されるため、胃洗浄や活性炭の投与は有効ではありません

 

初期治療の考え方

急性アルコール中毒患者には、まず呼吸と循環を維持する必要があります。意識障害の改善はアルコール濃度の低下を待つしかありません。

急性アルコール中毒患者で昏睡、呼吸が安定せず、血圧も低い場合は極めて危険です。バイタルサインを改善させるために、大量輸液や昇圧薬の投与が必要になるので、まず太い輸液ルート(18G以上)の確保を心がけます。

また、嘔吐している場合には気道閉塞のリスクが高く、呼吸抑制を生じている場合も含めて気管挿管を行った上で人工呼吸を行います。最重症の場合、バイタルサインを安定させるために血液透析を行い、血中アルコール濃度を低下させることもあります

急性アルコール中毒で昏睡、呼吸が安定しないということは、血中アルコール濃度が非常に高いことが予想されます。この場合もまず呼吸を安定させるための処置を行います。
嘔吐に対応できる体位(シムス位)をとる、必要であれば経鼻エアウェイを挿入する、気管挿管するという処置が必要となります。嘔吐への対応も事前に必要で、吸引はいつでもできるように準備しておきましょう。

軽症から中等症の急性アルコール中毒は、輸液と安静経過観察で改善することが多いのですが、アルコール摂取に伴う精神的高揚の対応に難渋することがあります。

また、急性アルコール中毒により末梢血管が拡張して、熱が体外に放出されるため、低体温を生じることがあります。この場合には加温輸液や電気毛布による保温を行います。

重症例や明らかな栄養障害のあるケースでは、ウェルニッケ脳症に対する予防あるいは治療としてビタミンB1を投与します。

 

診察する上で有用な方法はABCDEアプローチ

急性アルコール中毒患者には、気道(A:Airway)、呼吸(B:Breathing)、循環(C:Circulation)…すなわち「ABCの安定化」が最優先です。また、中枢神経(D:Dysfunction of CNS)、脱衣および体温管理(E:Exposure & Environment)の評価も行います(表3)。

 

表3ABCDEアプローチ

急性アルコール中毒_ABCDE

 

呼吸と血圧は第一にチェックする

急性アルコール中毒が疑われる患者が来院したら、まずは、呼吸と血圧をチェックしましょう。さらに、その結果により、気管挿管や昇圧薬が必要となるケースもあるので、救急カートも事前に準備しておきましょう。

 

アルコール中毒にとらわれない

飲酒していたという患者が意識障害で搬送された場合に、「急性アルコール中毒」と安易に決めつけないことが重要です。急性アルコール中毒以外に意識障害を来す疾患がないかどうかを考える必要があります。

 

見逃しやすいポイント

アルコール摂取後に脳血管障害を発症したり、転倒し頭部打撲したというケースもあるので、打撲痕や出血、運動麻痺や瞳孔所見などもチェックしてください。

 

 

急性アルコール中毒を「たかがアルコール」と言って侮らないことが最も強調したいポイントです。急性アルコール中毒で死亡する患者もあり、また意識障害のために除外すべき疾患が多くあることを常に考えて診療・ケアに当たりましょう。

 


[参考文献]


[監 修]
辻本登志英
日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部長 救急部副部長

芝田里花
日本赤十字社和歌山医療センター 看護副部長


[Design]
高瀬羽衣子


 

著作権について

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