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2016年08月07日

血液の分配と微小循環|循環

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

〈前回の内容〉

血管の構造と機能

今回は、血液の分配と微小循環について解説します。

片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

Summary

  • 各器官への血流量分配を変化させるのは、主に血管平滑筋(特に細動脈)の収縮・弛緩による。
  • 細動脈の収縮は交感神経により、前毛細血管括約筋の収縮弛緩は局所ホルモンやO2、CO2に強く影響される。
  • 毛細血管と組織間の物質交換は間質液を介して行われる。物質交換は血管圧と間質液圧に左右される。

 

〈目次〉

 

血液の分配

血管は心臓の拍動で生じた血液(安静時約5L/分)を体内の各器官に分配する。循環血液量の総量を決定するのは心臓のポンプ力であり、各器官へ血流量分配を変化させるのは血管平滑筋の収縮と弛緩による。

安静時には、脳に約15%、冠状動脈に約5%、肝臓と消化管に25~30%、腎臓20~25%、骨格筋に15~20%、皮膚などに3~6%、その他の脂肪や骨に約5~10%(表1)が分配される。

表1全身の各器官への血液配分の割合

全身の各器官への血液配分の割合

 

血液の配分は、運動や食事で変化する。例えば運動時には、骨格筋の酸素消費量が増加するので、これに伴いここに配分される血液量が増加し、その分、消化管への配分が減少する。一方、食事の際は消化管へ配分される血液量が増加する。脳への血液量はいつもほぼ一定である。

 

微小循環〔 microcirculation 〕

細動脈、毛細血管、細静脈部分の循環を微小循環という。細動脈 arteriole は、いくつかのメタ細動脈に分かれ、さらに分岐し毛細血管に達する。毛細血管の大部分は真性毛細血管であるが、他に太くて直接細静脈に至る優先路もある。

細動脈には交感神経が多く分布している。メタ細動脈には平滑筋は少ないが、活発に収縮する。メタ細動脈から毛細血管に分かれる部分には前毛細血管括約筋が毛細血管を取り巻いている(図1)。

図1微小循環(細動脈、毛細血管、細静脈)

微小循環(細動脈、毛細血管、細静脈)

真性毛細血管で物質交換が行われる。前毛細血管括約筋の収縮弛緩が真性毛細血管への血流を調節する。細動脈には交感神経が密に分布し、血流の配分調節に重要な役割を果たしている。

大地陸男:生理学テキスト.第4版、p.288、文光堂、2003より改変)

 

細動脈の収縮は交感神経により強く影響される。一方、前毛細血管括約筋部分の平滑筋はO2、CO2分圧やオータコイド(局所ホルモン)などの局所的因子によって強く影響される。細動脈の収縮、弛緩が血流量分配に強く影響している。

 

毛細血管壁を介する体液の移動

毛細血管内の血液量は全血液量のわずか5%程度であるが、ここでの物質移動が生命維持のために極めて重要である。毛細血管の血液と組織との間の物質交換は間質液を介して行われる。

毛細血管壁は他の血管壁と異なり小孔(内皮細胞間の小孔)がある。水や電解質グルコース、尿素などはこの小孔を自由に通るが、タンパク質や他のコロイドはほとんど通過できないので、間質液の組成は、血漿タンパクを除いたものとほぼ等しくなっている(細胞の環境参照)。毛細血管壁を介する物質の通過機序は、主に拡散 diffusion、濾過 filtration である。

毛細血管壁を介する体液の移動は、血液と間質液にそれぞれある圧力(血圧と間質液圧)とコロイド浸透圧 colloid osmotic pressure (膠質浸透圧ともいう)によって左右される。

血圧(毛細血管圧)は、血漿中の水分を血管の外(間質)へ出す圧で、間質液圧は、間質液中の水分を血管内へ入れる圧である。タンパク質は毛細血管壁をほとんど通過できないので、体液はタンパク質のあるほう(血管側)へ移動する。すなわちコロイド浸透圧は体液を引き込む力となる。

図2コロイド浸透圧

コロイド浸透圧

 

血圧は毛細血管の部位で異なる。細動脈側では約35mmHg、細静脈側では約10mmHgである。血漿コロイド浸透圧は動脈側・静脈側等しく約25mmHgである。動脈側では10mmHg(35-25)の圧で体液を押し出し、静脈側では押し出す力が10mmHg、引き込む力が25mmHgなので、この差で間質液中の水分は血管内に再吸収される。

栄養失調は血漿タンパク質含量の低下をきたし、腎疾患などによりタンパク質排泄(尿中へ)増加も血漿タンパク質含量の低下をきたす。

静脈閉塞や心不全では静脈側の血圧が上昇するので、血管内に再吸収される間質液中の水分量が低下する。炎症などにより毛細血管透過性が増加すると間質液中のタンパク質含量が増加する。

 

〈次回〉

血圧

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

参考文献

著作権について

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  • 1.夜間に十分な睡眠ができるように長時間作用型の睡眠薬を投与する。
  • 2.ベッドから立ち上がる際は、オーバーテーブルにつかまって立ち上がるよう指導する。
  • 3.夜間は一人で動くと危ないので身体抑制を行ってもよいか、本人とご家族に尋ねる。
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