名古屋市内で医療事務の従事者が麻疹発症|沖縄旅行歴のある麻疹患者から感染か

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パンデミックに挑む取材班

 

 

名古屋市は4月21日、市内の医療機関で医療事務に従事する30歳代女性が麻疹と確認されたと発表した。

 

患者は麻疹ワクチン接種歴が不明で、海外あるいは沖縄への旅行歴はなかった。勤務先の医療機関には、4月11日に麻疹と確認された沖縄旅行歴のある患者が受診しており、この患者から感染した可能性がある。

 

市の発表によると、患者は4月18日に38℃前後の発熱があり、翌19日午前に名古屋市北区のB医療機関を受診。午後にはC医療機関を受診し、その後レストランを利用していた。

 

4月20日には、勤務する名古屋市内のA医療機関を受診。A医療機関から保健所に、麻疹疑い例として報告された。21日に衛生研究所の遺伝子検査の結果、麻疹と確定した。

 

市によると、A、B、Cの各医療機関でこの患者と接触の可能性があった人については、それぞれを管轄する保健所が健康観察を実施している。

 

保健所の疫学調査の結果、患者の行動範囲は自宅に限定されていたものの、4月17日の8時から8時40分ごろと16時から17時ごろに交通機関を利用。また、4月19日には19時から19時45分ごろ、北名古屋市内のレストランを利用していた。

 

名古屋市は、この間に患者と接触した人が麻疹に感染している可能性があるとし注意喚起を行った。接触の可能性があった人で麻疹を疑う症状が出た場合は、事前に医療機関に連絡の上、速やかに受診するよう求めている。

 

詳しい感染経路については調査中だが、A医療機関は、4月11日に麻疹と確認された沖縄旅行歴のある患者が受診していたことから、この患者から感染した可能性もある。

 

【解説】麻疹の院内感染防止のための対応とは

今回の事例は、麻疹ワクチン接種歴が不明で、海外あるいは沖縄への旅行歴がなかったことを考えると、勤務先の医療機関を受診していた沖縄旅行歴のある麻疹患者から感染した可能性が高い。

 

こうした院内感染を防ぐために、医療機関は今、何をすべきなのだろうか。

 

国立感染症研究所・感染症疫学センターの多屋馨子氏によると、まず、職員全員のワクチン接種歴を確認しておくことが求められる。

 

医師や看護師だけでなく、受付や清掃に携わる人、守衛や事務員、さらには出入りする業者の人など、麻疹患者が来院した際に接触する可能性がある人については、全員確認しておくべきだという。春先は新入職者も多いことから、なおさらだ。

 

医療機関での麻疹対応ガイドライン』(第6版:暫定改訂版、2016年5月26日、国立感染症研究所感染症疫学センター)では、「雇用・実習開始前あるいは開始時に、すべての職員および実習生の麻疹罹患歴と麻疹含有ワクチンの接種歴を、母子健康手帳等の『記録に基づいて』確実に把握しておく」と記載している。

 

「記録に基づいて」と強調しているのは、記憶による把握は正確でない可能性があるからだ。

 

また、事前に医療機関に電話をして、海外渡航歴や麻疹含有ワクチン接種歴、麻疹の罹患歴などを伝えた上で受診する患者であれば、それらの情報をもとに麻疹を疑った対応が可能だ。

 

しかし、事前の連絡もなく受診する患者がいるのも事実。その場合は、院内感染のリスクが高まるが、どのような備えをしておくべきなのか。

 

多屋氏によれば、事前相談なく受診された場合の備えとしては、受付の段階で速やかに申し出てもらうよう医療機関の入り口に近いところにポスターなどで掲示する方法がある。

 

その際は、「アジアなどから帰国後に麻疹を発症する人が増えていること」「発熱、水、目の充血あるいは目やに、発疹などの症状があれば麻疹の疑いがあること」などを明記した上で、該当者は速やかに受付に申し出るよう、呼び掛けるのが肝要だ。今なら、沖縄滞在歴も加える必要があろう。

 

しかし、受付に申し出る前に既に多くの人に感染を広げている可能性も否定できない。速やかに感受性者と隔離した体制で診療に当たるとともに、それまでに空間を共有した人を特定して、感染拡大予防策を講じることも重要となる。

 

今やいつなんどき、麻疹疑いの患者が受診するか分からない状況となっている。

 

医療機関は、院内感染の防止に努めなければならないが、今一度、国立感染症研究所・感染症疫学センターの『医療機関での麻疹対応ガイドライン』に沿って、院内の対応を見直すべきではないだろうか(表1)。

(三和護=編集委員)

 

 

表1 麻疹院内感染防止の外来での対応(医療機関での麻疹対応ガイドライン、第6版:暫定改訂版、2016年5月26日、国立感染症研究所・感染症疫学センター)


◆平常時より来院患者には受付の段階で発疹の有無を確認し、麻疹を否定できない発疹がある場合には、速やかに別室に誘導・個室管理できるように予め準備しておく。

 

◆麻疹患者との接触が明らかで、麻疹が強く疑われる症状(発熱およびカタル症状**の出現)を認めた場合は、できる限り受診前に電話などで受診方法を相談してもらうことが望ましいが、相談なく受診された場合は、受付の段階で速やかに申し出てもらうよう掲示し、速やかに別室に誘導・個室管理できるように予め準備しておく。

 

◆来院時の入り口を別に設けておくことが望ましい。

 

◆通常の外来診療時間外に診察を行うことも現実的な方法である。

 

◆地域あるいは近隣で3週間以内に麻疹患者の発生がみられている場合には、受付の段階で来院患者に問診票などを用いて以下の項目を問診し、麻疹発症が否定できない場合は、速やかに別室に誘導・個室管理する。

 

(1) 麻疹患者との接触の有無(追記:接触の有無に関わらず、最近1カ月以内の渡航歴を必ず含める)

(2) 所属している学校、企業、施設内での麻疹患者発生の有無

(3) 麻疹罹患歴および麻疹含有ワクチン接種歴

(4) 発熱、カタル症状の有無

(5) 発疹の有無

**カタル症状:倦怠感、上気道炎症状(咳、鼻汁、くしゃみ、咽頭痛)、結膜炎症状(結膜充血、眼脂、羞明)。2~4日間続く。この時期はカタル期と呼ばれ、麻疹の経過中で最も感染力が強い。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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