最終更新日 2018/04/10

麻疹

麻疹とは・・・

麻疹(ましん、measles)は麻疹ウイルスによる感染症である。いわゆる「はしか」である。非常に感染力が強く、空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれの方法でも感染する。初感染の場合は90%以上が発病し、不顕性感染はほとんどない。

【病態】
小児、特に1歳代に好発し、春夏に多い。近年では成人麻疹の増加が問題となり、10~20歳代での発症が報告されている。10~14日の潜伏期を経て発症し、臨床経過から1)カタル期、2)発疹期、3)回復期に分類され、症状が出現してから2週間程度で治癒する。

1)カタル期(発症約5日目まで)
38度前後の発熱と鼻汁、くしゃみ、眼脂、咳嗽(がいそう)などを認め、3~4日間続く。カタル期末期の1~2日間に、解熱するとほぼ同時に口腔内の頬粘膜、ときに歯肉まで点状の白色斑(コプリック斑〈Koplik’s spots〉)を認める。この時期の気道分泌物や唾液、涙液が最も強力な伝染力を持つ。

2)発疹期(発症約10日目まで)
発疹の出現とともに再度発熱を認め、3~4日続く(二峰性の発熱)。発疹は耳後や頬部から始まり、体幹や四肢へ拡大する。小さな紅斑は融合拡大して不整型となる。一部正常皮膚が残存することで網状に見える。発疹には麻疹ウイルスは存在せず、発症機序としてはアレルギー反応が考えられている。この時期は高熱が持続し脱水や合併症をきたしやすい。

3)回復期
発疹期を過ぎると急速に解熱し、皮疹は色素沈着、落屑(らくせつ)を残し、次第に薄くなる。

【合併症】
中耳炎などの二次性細菌感染、肺炎、麻疹炎、亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panecephalitis;SSPE)がある。

【診断】
臨床症状で診断することが多いが、血清で抗体の上昇を確認することや、カタル期の気道分泌物からのウイルス分離やPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)も用いられる。

【治療】
発症した場合、ウイルスに対する特異的な治療がないため、安静、保温、解熱薬や鎮咳薬投与といった対症療法が行われる。細菌感染が合併する場合は抗菌薬が使用される。

【予防】
ワクチンを接種し発症そのものを予防することが重要で2006年度からはMR(麻疹・風疹混合)ワクチンが使用され、1歳児と小学校入学前1年間の幼児を対象とした定期接種が行われている。発症した場合は感染力が非常に強いため、患者の隔離が必要である。「学校保健法」では、解熱後3日経過するまで出席停止となる。

執筆: 上村恵理

長崎大学病院 高度救命救急センター助教

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