腸管の動きを良くするための工夫とは?|人工呼吸管理中の栄養管理

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』より転載。

 

今回は「腸管の動きをよくするための工夫」に関するQ&Aです。

 

清水孝宏
那覇市立病院看護部看護師長

 

腸管の動きをよくするための工夫とは?

 

腸蠕動運動を促進する薬剤の使用や、交感神経系の過緊張状態を避ける管理をすることが工夫です。

 

〈目次〉

 

人工呼吸中の消化管の蠕動

人工呼吸器を装着している患者には、前述したように何らかの侵襲によって神経・内分泌系の賦活化が起こっていることが多い。

 

具体的には、ドパミンやノルアドレナリンなどの内因性カテコラミンが分泌され、交感神経系が緊張した状態となる。

 

交感神経系が緊張した状態では、副交感神経系の活動は抑制されているため、消化管の蠕動運動は抑制される。

 

鎮静薬や鎮痛薬を使用している機会も多いため、これらの薬剤も消化管の蠕動を抑制する。

 

腸管の動きをよくする工夫

人工呼吸管理中の患者の多くには、消化管蠕動を抑制する条件がそろっており、何かしら手を施さなければ消化管蠕動を改善させることはできないと考えるべきである。

 

まずできる介入は、適切な評価により、過剰な鎮静薬・鎮痛薬の投与を避けることである。

 

高血糖状態も迷走神経(副交感神経)を抑制するためコントロールする必要がある。

 

鎮静・鎮痛の評価と血糖コントロールを行ったうえで消化管蠕動を起こさせるような、あるいは刺激を与えるような方策を実施する。

 

1薬剤的な介入

メトクロプラミド(プリンペラン、エリーテン、フォリクロン)が、消化管蠕動を促進する薬剤として推奨されている。

 

漢方薬では、六君子湯や大健中湯などが用いられる。

 

このほかに、酸化マグネシウムなどの緩下薬が用いられるが、高マグネシウム血症や腎不全のある患者には注意が必要である。

 

2排便コントロールが重要

消化管蠕動を促進させる薬剤や緩下薬を使用しても排便がない場合も少なくない。

 

排便は、1日1回が理想的である。なぜならば、消化管内には数多くの腸内細菌が存在し、長期間消化管にとどまることで腐敗が進むからである。

 

胸腔や腹腔と共通した考え方が妥当ではないかもしれない。しかし、排便コントロールにて細菌が多数含まれた便を体外に排出することは、ドレナージと共通した考え方である。

 


[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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