敗血症 どんな患者さんに注意すべき?

『エキスパートナース』2015年8月号<「急変」になる前に病棟で見抜きたい!「敗血症」の気づき方>より抜粋。

 

今回は敗血症で注意すべき患者さんについて説明します。

 

川崎達也
静岡県立こども病院小児集中治療科小児集中治療センター長

 

〈目次〉

 

2016年2月 敗血症の新しい定義が発表されました。
敗血症の定義が変更。 臓器障害の有無が重要に

 

どのような患者に注意する必要がある?

ポイント

 

以下の背景因子に注意

  • 高齢者や乳児
  • 免疫に影響する疾患:悪性腫瘍や肝硬変 など
  • 免疫に影響する処置:薬剤や外科的処置 など

 

敗血症のなかでも、臓器障害を伴った重症敗血症には特に注意が必要です。重症敗血症を早期に発見・認識して早期に適切な治療を開始することで、より多くの患者の命が救われ、後遺障害もより少なく抑えることが期待されます。

 

重症敗血症を引き起こす原因は感染症にほかならないため、その診療にあたっては図1の原則に立ち返り、感染症に関与する背景などを検討することが重要です。

 

図1感染症にかかわる事象と患者の評価の手順

感染症にかかわる事象と患者の評価の手順

 

背景因子には、感染症の発生頻度と関連するものや、その重症化および致死率と関連するものがあります。年齢、基礎疾患、医療行為(薬剤・処置)が特に注意したい背景因子です(図2)。

 

図2敗血症を発症しやすい患者の背景因子(諸説あり)

 

以下に、それぞれについて述べます。

 

年齢:乳児・高齢者では、発生率が高い

1990年代の米国で行われたもので少し古い統計ではありますが、図33における重症敗血症の発生率をみると、年齢層として乳児および高齢者で高いです。特に高齢者に関しては、60歳代、70歳代、80歳代と年齢層が上がるごとに致死率が増加します3

 

図3重症敗血症の発生率と致死率(米国、1995年)

重症敗血症の発生率と致死率(米国、1995年)

 

基礎疾患:悪性腫瘍や肝硬変12

1)重症敗血症と合併しやすい疾患

重症敗血症では、何らかの基礎疾患をもつ患者が全体の半数以上を占めています。特に、表1に挙げるような疾患において重症敗血症の合併が多く報告されています。

 

表1疾患における免疫の低下(諸説あり)

疾患における免疫の低下(諸説あり)

 

また、乳児に限ると、新生児、なかでも低出生体重児において重症敗血症のリスクが高いです3

 

2)罹患リスクが高い疾患

好中球減少症や弁膜症、炎症性腸疾患、アルコール依存症の患者なども、重症敗血症に罹患するリスクが高いことが指摘されています1

 

医療行為(薬剤・処置):免疫に影響する薬剤や処置に注意する

また、表2に示すような医療行為を行うと、重症敗血症のリスクが増加します。

 

表2免疫の低下を引き起こす医療行為(諸説あり)

2免疫の低下を引き起こす医療行為(諸説あり)

 

加えて、気管挿管中、中心静脈カテーテル留置中、尿道カテーテル留置中の患者は、それぞれ「人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia、VAP)」「カテーテル関連血流感染症(catheter-related blood stream infection、CRBSI)」「カテーテル関連尿路感染症(catheter-associated urinary tract infection、CAUTI)」を併発することで、(重症)敗血症に進行するリスクを抱えています。中心静脈栄養管理中もリスクが高いことが知られています。

 

なぜ、これらの患者では注意する必要がある?

ポイント

  • 年齢、疾患、医療行為により”免疫弱者”となる

 

上述の患者でなぜ敗血症が生じやすいのかについて、誤解を恐れずズバリ指摘するなら、“免疫弱者”であるからです。免疫のはたらきが低下することで、病原体に対する抵抗性が弱まり、敗血症に罹患しやすくなります。

 

高齢者では、細胞性免疫機能の低下や排痰障害、尿閉といったバリア機能の低下により、免疫が弱まります。一方、乳児では、免疫記憶*1が蓄えられていないことに加えて、早産や生後3か月以降では、母体からの移行抗体*2が枯渇することから、感染症に罹患しやすくなります。

 

また、疾患や医療行為によっても、免疫の機能が低下するため、細菌などに感染して敗血症を発症しやすくなります。

 

メモ*1免疫記憶

特定の抗原に対して、抗原の構造などの情報を体の中に保持しておくシステム。これにより、二度目にその抗原が体内に侵入した際に強い免疫反応を迅速に生じることが可能となる。

 

メモ*2移行抗体

胎盤を通じて、母親から子へ受け渡される抗体。出生後は数か月かけて徐々に減少していく。

 

これらのリスクにどう対応する?安定後も注意が必要?

ポイント

  • 病棟に戻ってもカテーテルなどの留置や咳嗽の減弱がある場合は、感染に注意が必要

 

さまざまな臓器障害を合併しICUで重症敗血症として管理を受けた患者が、状態が安定して病棟に移動してきても、まだまだ安心はできません。

 

多くの場合、原因となった感染症の治療は継続中であり、中心静脈カテーテルをはじめとする侵襲的ラインが留置されたままであることが少なくないはずです。また、重症敗血症の急性期には異化*3が亢進し、回復期に入っていても栄養状態は回復していない場合があります。筋力低下による咳嗽の減弱などを伴っていることもあるでしょう。

 

これらはすべて易感染性につながるものであり、治療の終了していない感染症の再増悪や、新たな感染症をもたらす可能性があることを念頭に置いて、ケアに当たる必要があります。

 

メモ*3異化

とりこんだ物質や食物を分解し、より細かな物質に変えること。その際にエネルギーの産生が伴う。急性期では、臓器の回復などにエネルギーが使用されるため、低栄養になりやすい。

 

コラム:免疫の低下がなぜ、致死率の増加につながるの?

免疫には以下の5つの種類があり、それぞれ役割が異なっています(分類については諸説あり。図4)。

 

図4免疫の機能(一例)

免疫の機能(一例)

 

図3から読み取れる通り、年齢層が上がるほど重症敗血症に罹患した際の致死率が上昇することが示されています。小児領域から20歳代での致死率は約10%ですが、60歳代では約20%、80歳代では約30%にも達します。

 

これは、加齢により細胞性免疫と液性免疫の“司令塔”であるTリンパ球の機能が低下していくことや、身体機能の低下に伴い各種の物理的・化学的バリア機能が弱まっていくため、敗血症が重篤化しやすく致死率が高くなってしまうからです。

 

一方、基礎疾患や病態と致死率との関連については十分に研究が進んでいませんが、血液悪性腫瘍、なかでも造血幹細胞移植後の患者ではより致死率が高いと報告されています。

 


 


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P.22~「敗血症 どんな患者さんに注意すべき?」

 

[出典] 『エキスパートナース』 2015年8月号/ 照林社

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