TPF療法(看護・ケアのポイント)/頭頸部がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、頭頸部がん(頭頸部癌)の患者さんに使用する抗がん剤「TPF療法(ドセタキセル+シスプラチン+フルオロウラシル療法)」について、看護・ケアのポイントについて紹介します。

 

第1話:『TPF療法(化学療法のポイント)/頭頸部がん

TPF療法(ドセタキセル+シスプラチン+フルオロウラシル療法)

 

小野田友男
(岡山大学病院頭頸部がんセンター 耳鼻咽喉・頭頸部外科)

 

TPF療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:ドセタキセルの初回投与ではアレルギー症状に注意しよう。アルコールに弱いかどうかを把握することも必要です。
  • ポイントB:ドセタキセルは好中球減少が強くみられることが多いので注意が必要です。
  • ポイントC:シスプラチンは嘔気・嘔吐が強くみられます。投与当日の嘔気と、投与後5~6日目の遅発性の嘔気のコントロールが必要です。

 

〈目次〉

 

必ず覚えて! TPF療法の注意点

投与前の注意点

投与前に腎機能に問題がないか(クレアチニンクリアランス≧60mL/分が目安)、もう一度確認しましょう。

 

発熱や、咽頭痛などの感染症の兆候がないかどうかも確認しましょう。また、発疹アナフィラキシーショックなどのアレルギー症状にも注意しましょう。ドセタキセル(タキソテール)は、添加物としてアルコールが入っているので、アルコールアレルギーがないかどうかの確認も必要です。

 

TPF療法のポイントA

  • ドセタキセルの初回投与ではアレルギー症状に注意しよう。アルコールに弱いかどうかを把握することも必要です。

 

投与中の注意点

ドセタキセル(タキソテール)やシスプラチン(ランダ)は、血管外漏出により組織障害を生じることがあります。投与時に痛みや腫れ、違和感などがないかよく観察してください。もし、血管外漏出を発見した場合には、直ちに点滴を止め、主治医に報告しましょう。抜針の際には、できるだけルート内の薬剤を注射器で吸引してから抜針してください。

 

また、シスプラチン(ランダ)による急性腎障害を予防するためには、投与直後から2時間の間に強制利尿をかけることが重要です。シスプラチン(ランダ)投与後から約2時間の尿量、尿回数、体重変化に注意し、尿量が少ない場合などは主治医に報告しましょう。

 

ドセタキセル(タキソテール)は、投与5日目くらいから強い好中球減少症が生じることが多いので、手洗いやうがいなど事前の感染予防に努めましょう。

 

TPF療法のポイントB

  • ドセタキセルは好中球減少が強くみられることが多いので注意が必要です。

 

投与後の注意点

嘔気・嘔吐には急性のものと遅発性のものがあります。嘔気が強かった場合、次回からの治療への意欲が低下しますので、しっかりとコントロールする必要があります。

 

水分が十分に摂れない場合には、点滴が必要になる場合もあります。飲水量や体重変化など、水分バランスの管理をしっかり行いましょう。

 

TPF療法のポイントC

  • シスプラチンは嘔気・嘔吐が強くみられます。投与当日の嘔気と、投与後5~6日目の遅発性の嘔気のコントロールが必要です。

 

TPF療法時の申し送り時のポイント

ドセタキセル(タキソテール)によるアレルギー症状の有無を伝えましょう。

 

シスプラチン(ランダ)投与時の水分管理が問題なく行えたか伝えましょう。嘔気・嘔吐がどの程度であったか、飲水が可能であったか、点滴や利尿剤の追加が必要であったかなどを伝えるようにしてください。

 

また、好中球減少など、副作用の発現時期と程度についても伝えるようにしましょう。

 

申し送り例

TPF療法5日目の患者さんです。少しお酒に弱い方ですが、初日のドセタキセル(タキソテール)はバイタルの変化もアレルギーもなく終了しました。
4日目のシスプラチン(ランダ)投与時、嘔気がみられ、メトクロプラミド(プリンペラン)を一度使っていますが、その後は落ち着いて、食事は全量摂取できています。
尿量は目標の1,000mLに達していなかったため、乳酸リンゲル液(ラクテック)で水分負荷をかけました。その後は、尿量が得られています。
点滴の刺入部に異常はみられません。そろそろ好中球減少が生じる時期です。うがい、手洗いは指導していますが、感染兆候に注意をお願いします。

 

TPF療法時の看護記録に書くべきこと

入院時の発熱や咽頭痛の有無、アルコール耐性について記載しましょう。

 

シスプラチン(ランダ)投与後の尿量、体重の変化、水分摂取量も必ず記載しましょう。また、血管穿刺部位の発赤や疼痛の有無についても記載しましょう。

 

患者ケア・看護ケアはココを押さえる

シスプラチン(ランダ)投与に際して、腎機能を保つために水分の投与、尿量の確保が重要です。また、シスプラチン(ランダ)は嘔気が強く生じることが多いのですが、この嘔気のコントロールが不十分だと次回からの治療への意欲が失われてしまいます。十分な嘔気のコントロールとケアを行うことは重要です。

 

5日間以上の持続点滴をストレスに感じる患者さんも多いですが、フルオロウラシル(5-FU)は長時間かけて点滴を行うことによって効果が高くなります。そのため、そのことを患者さんにも理解をしてもらい、治療を継続することを心がけましょう。

 

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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
小野田友男
岡山大学病院頭頸部がんセンター 咽喉・頭頸部外科

 


*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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