HIV検査|感染症の検査

看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。
今回は、HIV検査について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

 

AIDSとHIV

1981年アメリカで発見された新たな致死的疾患は、当初、男性同性愛者や麻薬常習者にカポジ肉芽腫やカリニ肺炎が多発することから後天性免疫不全症候群=AIDSと名づけられ、注目を集めた。

 

1983年にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が発見され、AIDSはウイルス感染症であることが明らかになった。その後、1986年に西アフリカのエイズ患者から、これとは遺伝子配列の異なるHIVが発見され、前者をHIV-1、後者をHIV-2と分類している。HIV-1は、世界中で広く流行しているが、HIV-2は主に西アフリカ地域に集中し、日本での感染は少ない状況である。

 

図1HIV感染における抗原抗体出現

HIV感染における抗原抗体出現

 

HIVは、ヒトのヘルパーT細胞や単球(CD4陽性細胞)に感染し、増殖して細胞を破壊するため、免疫力が著しく低下する。このため、弱毒菌による日和見感染が出現し、カリニ肺炎、サイトメガロウイルス感染症、カンジダ感染症、結核などにより死亡する。

 

感染時には初期症状として、感冒様症状を呈することもあるが、多くの場合、無症状である。感染後数年の潜伏期間を経て発症、初期には全身倦怠感、リンパ節腫脹、体重減少、下痢などのAIDS関連症候群(AIDSrelatedcomplex:ARC)を呈する。

 

その後、免疫力が低下するにしたがい、カリニ肺炎、真菌性肺炎、結核などの日和見感染症や悪性腫瘍を合併し、死に至る。この高度免疫不全状態におちいった状態を真性AIDS(full-blownAIDS)と呼ぶ。

 

図2HIV検査の手順

HIV検査の手順

 

HIV感染の診断は、血清中の抗HIV抗体価の検出(陽性)によるが、抗体が陰性でも、特徴的症状がそろえば診断しうる。抗体は感染後3〜8週で陽性となるため、早期の診断は困難である。

 

現在、抗HIV療法の進歩により、発病率、日和見感染症などの発症率や死亡率は低下してきているが、完治させる薬などはない。発症後、未治療の場合、2〜3年で死亡する。

 

感染経路は性行為感染、母子感染、わが国では血液製剤投与による血友病患者への感染が知られている。

 

HIVは一度感染すると終生キャリアになると考えられるため、抗体陽性者はキャリアと考えて対処すべきである。

 

AIDS発症までの潜伏期は2〜3年が10%、5〜6年が30%、8〜10年が約50%で、20年以内に感染者の約9割が発病する。

 

表1HIV感染症のCDC分類

HIV感染症のCDC分類

 

HIV検査の検査方法

  • スクリーニング法(ゼラチン凝集法PA、ELISA法)で陽性と判定された検体は、WB(ウエスタンブロット)や、IFA(間接蛍光抗体法)、PCR法などで確認する必要がある。
  • AIDSの臨床検査所見として重要なのは、CD4/CD8比の低下である。
  • CD4リンパ球は、正常人ではリンパ球の中の約40%を占めている。絶対数では700〜1000である。
  • AIDS発症のとき、CD4リンパ球は10%以下、あるいは5%以下となる。絶対数では100以下、50以下である。
  • したがって、血液中CD4リンパ球数を測定することは、免疫不全の程度、つまりAIDS発症の時期をある程度予測することができる。

 

HIV検査の実施について(通知)

平成5年7月13日 健医感発第78号

 

厚生省保健医療局 エイズ結核感染症課長

 

1.HIV検査実施に対する基本的な考え方

HIV抗体検査の実施に当たっては、人権保護の観点から、本人の同意を得て検査を行うこと。また、検査結果の取扱いについてはプライバシーの保護に十分配慮すること。

 

2.医療機関におけるHIV検査実施について

患者に対する検査実施に当たっては以下の点に十分配慮すること。

 

  1. 1)患者本人の同意を得ること。
    観血的処置を行う場合において医療機関内感染防止を主たる目的としてHIV検査を実施する場合にも、患者の同意が必要であること。
    患者本人が意識不明である等により同意がとれない状況においては、医師の判断によってHIV検査を実施することも認められる。小児患者に対してHIV検査を実施する場合には、保護者の同意を得て行う。
    なお、HIV検査の実施に当たって患者の同意が得られない場合には、HIVに感染している可能性があることを前提として対応する。
  1. 2)検査前および検査後の保健指導あるいはカウンセリングがなされること。
  2. 3)結果についてプライバシーが守られること。
  3. 4)HIVに感染していることが判明した患者・感染者に対して、検査を実施した医療機関において適切な医療が提供されること。やむを得ず検査を実施した医療機関において対処できない場合には、他の適切な医療機関へ確実に紹介すること。

なお、各都道府県においては、エイズ治療体制の整備に努めること。

 

妊婦に対してHIV検査を実施する場合には、検査前後のカウンセリングが特に重要となる。

 

また、検査結果についてはプライバシー保護の観点から母子健康手帳に記載しないこと。

 

3.医療従事者に対する検査実施について 

医療従事者のHIV検査の実施に当たっては、あくまでも本人の同意のもとに任意で行い、結果についてのプライバシーの保護に十分配慮すること。

 

4.就学時、就職時のHIV検査の実施について

HIVは日常生活においては感染しないことから、就学時、就職時のHIV検査は実施しないこと。

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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