刺激伝導系と心筋の特殊な性質|心臓とはなんだろう(3)

心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、刺激伝導系と心筋の特殊な性質について解説します。

 

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

〈目次〉

 

基本に立ち返りましょう。

 

心臓の仕事は、血液を循環させるポンプです。実質のポンプは心室で、心室筋が収縮することによって袋の容積を小さくして血液を肺・全身に送り出します。心房は心室の補助ポンプで、心室が拡張している間に全身・肺から受け取った血液を心室に送り込んでいます。

 

このように実際にポンプとして働く心筋を、作業心筋または固有心筋とよびます。これに対して、効率よいポンプ機能を達成するために、心臓の収縮を管理・調整するための心筋を特殊心筋、または刺激伝導系といいます。

 

自動車生産工場に例えると、工場の目的は自動車の生産ですが、実際に組み立てるのが組立工(作業心筋)で、効率よく必要な台数を生産するために、管理・調整するのが管理職(刺激伝導系)です。

 

洞結節

正常の心臓は規則正しく動く……、これは誰もが経験則として理解していることと思います。では“規則正しい”という源はどこにあるのでしょうか。心臓は、心筋細胞が電気刺激を受けて脱分極-収縮します。そのきっかけとなる電気信号を“規則正しい”間隔で発生するのが洞結節洞房結節ともいう。sinus node:SNサイナスノード)です。

 

心筋細胞は刺激がないと脱分極できませんが、洞結節細胞はまさに特殊で、自発的に脱分極、再分極を繰り返します。このサイクルは規則正しく、周期的に繰り返され、心臓の収縮のリズムをつくっています。心臓が洞結節のリズム(=調律)で動いていることを、洞調律サイナスリズム)といいます。

 

洞結節はどこにあるのでしょう。図1のハートマークを見てください。

 

図1洞結節の位置

洞結節の位置

 

4つに分かれたハートマークの右上は右心房、右下は右心室です。左は上が左心房、下が左心室ですね。☆印がついた右心房の右上が洞結節のお住まいです。図2では、上大静脈が右心房に流入するあたりに位置しています。

 

図2解剖図でみた洞結節の位置

解剖図でみた洞結節の位置

 

“洞”とはほら穴のことで、実際に見ると右心房のくぼみのような場所にあるので、こう命名されたようです。

 

この洞結節の規則正しい脱分極は、周期的に発信される電気信号となって、まず周辺の右心房を、そして池の波紋が広がっていくように心房全体を次々に脱分極させていきます。この興奮の広がりは、つまりは収縮となって心房内の血液を心室に送り出します。

 

まとめ

  • 洞結節は右心房の右上方にあって、規則正しく電気信号を発生する

 

房室結節・ヒス束(房室接合部)

心臓が心房と心室に分かれている理由を思い出してみましょう。

 

肺・全身への実際のポンプは右心室・左心室、つまり心室であり、心房はその補助ポンプです。効率よいポンプ機能を発揮するために、心室が拡張している間に心房が収縮して血液を送り込む。また、心室が収縮している間に心房が拡張して、全身・肺から血液を吸い込むという仕組みが必要です。

 

すなわち心房が収縮(興奮・脱分極)している間は、心室が拡張して待っていなければなりません。心房からの血液を受け取ってから心室が興奮する、この興奮の時間差が必要になります。

 

この時間差をつくるため、心房の興奮は房室結節という組織に集まって、伝導速度が遅くなります。いってみれば、タメをつくるわけです。

 

図3を見ましょう。縦線と横線の交差する右心房側にある☆印の場所が房室結節の位置です。

 

図3ヒス束の位置

ヒス束の位置

 

洞結節から発生された信号は、心房を収縮させ、その興奮は房室結節に結集して、伝導速度をペースダウンさせます。房室結節でゆっくり進行した興奮は、ヒス束という電線のような束を通って心房から心室を貫きます。心房・心室間の興奮は、房室結節→ヒス束を通過するルートのみで、唯一の伝導経路です。房室結節は、心房の興奮を集めて遅らせてヒス束はそれを心室に伝導します(図4)。この両者は心房と心室のつなぎ役ですから、あわせて房室接合部とよびます。

 

図4刺激伝導系

刺激伝導系

 

まとめ

  • 房室結節は、心房を収縮させた興奮を集めて、心室への伝導を遅らせる
  • ヒス束は、心房・心室間の唯一の伝導路
  • 房室結節・ヒス束を房室接合部という

 

脚・プルキンエ線維

高速の伝導路

ヒス束から心室に侵入した興奮は、左右に枝分かれした伝導路、右脚・左脚となって心室を心尖部に向かって回り込み、支線のようにプルキンエ線維になります。

 

脚は心室の内腔側に分布し、プルキンエ線維は、最後には網状ネットワークとなって、心室筋の内側から外側に向かっていきます。右脚は1本の線維が右心室心尖部で木の枝のように分かれますが、左脚はまず、心基部前方に左脚前枝、心尖部後方に左脚後枝の2本に分岐して、それぞれ扇状に左心室全体にプルキンエ線維が広がっていきます(図4図5)。

 

図5脚、プルキンエ線維

脚、プルキンエ線維

 

細かいことを書いて、頭を混乱させてしまいましたが、脚・プルキンエ線維の仕事は、心室を規則正しい順序で、短時間で収縮させることにあります。そのために脚以下は、実際収縮する心室筋に比べて、伝導速度がきわめて速くなっています。

 

牛の乳搾りでも、上のほうから順序よく、素早く搾らないと出てきません。

 

まとめ

  • 房室結節をゆっくり伝導してきた興奮は、心房・心室間の唯一の通り道であるヒス束で心室に伝わり、脚・プルキンエ線維という高速の伝導路を通って、心室筋を順序よく、素早く収縮させる

 

コラム刺激伝導系の理解のための例え話

ここは、大胆に心臓を病院の看護部に例えてみましょう。病院はアクティブ心臓病院という名前にしましょう。看護部は、看護という収縮を行い、健康な患者さんを送り出すのが仕事です。

 

実際の看護は病棟(=心室)のスタッフ(=心筋細胞)が担います。総師長と管理者などがいる看護管理室は、病棟の補助をするので心房です。心房看護管理室では、毎朝規則正しく朝礼を行い、命令を出します。命令を出しているのは、看護部のトップである洞結節総師長です。

 

出された命令は、心房管理室のスタッフを働かせ、房室結節副総師長に集まります。命令は、副総師長からヒス束病棟師長を通って、心室病棟に伝導されるのですが、房室結節副総師長の伝達能力が悪いため、心室病棟に伝わるのに時間がかかります。しかし、心室病棟に伝わった命令は、右脚・左脚主任、プルキンエリーダーによって、高速で心室筋スタッフに伝わり、順序よく、素早く収縮看護が行われます(図6)。

 

図6アクティブ心臓病院看護部の役割

アクティブ心臓病院看護部の役割

 

この繰り返しが、毎日行われているから、アクティブ心臓病院はうまく患者さんを入退院させられるのです。

 

伝導速度

今度は電気生理学的な視点で考えてみましょう。

 

隣の細胞の興奮つまり脱分極は、自らの細胞膜の電位を浅くして、脱分極し、さらに隣の細胞を脱分極させます。この興奮の流れを伝導といい、その伝わる速さを伝導速度といいます。この速度は各心筋細胞の種類で異なっていますが、何で決まるのでしょう。これは細胞間をつなぐ介在板の抵抗で決まります。抵抗の少ない細胞間は速く、抵抗の多い細胞間は遅くなります。

 

ちょうど、渋滞の道路でなかなか自動車が進まず、車の少ない道路ではスイスイ走れるようなものです(図7)。最も抵抗の少ないつながりは、脚・プルキンエ線維、抵抗が高いのは房室結節です。

 

図7抵抗が多いと、どうなる……

抵抗が多いと、どうなる

 

伝導速度の数字でいえば、脚・プルキンエ線維がいちばん速くて4m/秒、心房筋・心室筋つまり作業心筋は1m/秒程度です。ヒス束は意外と遅く、1m/秒で心房・心室筋と同程度です。いちばん遅いのは、そうです、房室結節で0.05m/秒程度です。ちなみに、洞結節は、電気を発生する場所で、伝導はあまり関係ありませんが、測定してみると房室結節と同じくらいで0.05m/秒です(図8)。

 

図8興奮の伝導速度

興奮の伝導速度

 

これを踏まえて、心臓の収縮を考えてみましょう。まず、洞結節が自発的に周期的に電気信号を出します。これが、心房に伝わり1m/秒の伝導速度で心房内を次々に興奮させていきます。実は心室の脚・プルキンエ線維にあたる高速伝導路が心房内にもあるのですが、詳しくわかっていません。

 

その興奮は、すべて房室結節に集まりますが、ここを0.05m/秒という、心房の20分の1のスピードでノロノロと進みます。この間に心房の収縮は終了し、拡張した心室に十分血液を送り込みます。

 

ヒス束から心室に入った興奮は、脚・プルキンエ線維を4m/秒という、心房の4倍、房室結節の80倍という高速で、心室内を伝導し、順序よく、素早く心室全体に伝導します。この脚・プルキンエ線維から波及した興奮は心室内を1m/秒で伝導して心室を一気に収縮させていくのです。

 

活動電位持続時間

個々の心筋細胞一つひとつが静止電位から活動電位に脱分極して、活動電位が続いている間は筋節(サルコメア)という細胞内の収縮単位が縮んで、いわゆる収縮を持続します。活動電位が終了して静止電位に戻る(再分極といいます)と、収縮は終わり、筋節は元の長さに戻ります(図9)。

 

図9脱分極と再分極した心筋細胞は……

脱分極と再分極した心筋細胞は

 

この活動電位が続いている時間を活動電位持続時間といいます。言い換えれば、活動電位持続時間は心筋の収縮持続時間といえます。心房筋と心室筋、いわゆる作業心筋では、静止電位が深く、ある程度の刺激がなければ、脱分極しないようになっていますが、ひとたび脱分極すれば、しっかり活動電位を持続します。ただし、心室筋のほうがポンプとして重要なので、心房筋の活動電位持続時間に比べて、長くなっています。

 

具体的には心室筋の活動電位持続時間が、500msec(0.5秒)なのに対して、心房筋では300msec(0.3秒)程度です。これに対して洞結節、房室結節、少し違っています。まず、静止電位は緩やかに、自発的に上昇して、0相つまり脱分極しますが、立ち上がりは作業心筋、脚・プルキンエ線維のような鋭い立ち上がりではなく、緩やかです。また、活動電位の持続は短く、すぐに再分極します(図10)。

 

図10活動電位持続時間

活動電位持続時間

 

このように、自発的に脱分極→再分極を繰り返すのが、洞結節と房室結節の細胞内電位の特徴ですが、その繰り返す周期(サイクル)は、洞結節のほうが短いので、洞結節が心臓全体のリズムをつくるのです。

 

まとめ

  • 伝導速度:脚・プルキンエ線維>ヒス束、心室、心房>>房室結節(洞結節)
  • 活動電位持続時間(収縮持続時間):心室>心房>>(房室結節、洞結節)

※カッコ内は実際の伝導や収縮に関係しない心筋グループです。

 

不応期

不応期には、細胞レベルの不応期と心筋の種類ごとの臨床的な不応期があります。ここでは、心電図の解読に必要な実際の不応期の解説をします。ひと言でいえば、不応期とは「一心不乱時間」です(図11)。

 

図11一心不乱時間

一心不乱時間

 

電気刺激によって、心筋は興奮・収縮するのは、皆さんすでに理解していると思います。心筋は一度興奮すると、しばらくの間は活動期に入り、刺激をしても興奮できない時間帯があります。これが不応期です。興奮できないということは、収縮できないとともに、伝導できないということでもあります。

 

もう一度復習しましょう。心筋の仕事は、血液を送り出す収縮という仕事と、上流から伝わってきた信号を下流に伝える伝導という2つです。

 

読者の皆さんは、看護に携わっている方が多いと思いますが、看護師の仕事も、看護(収縮)と申し送り(伝達・伝導)ですね。勤務が始まって、一心不乱に仕事中は、他の仕事頼まれても無理ですね。当然その命令の申し送りもしません。これが不応期です。

 

また、心筋の種類によって、不応期も違います。

 

心房筋がいちばん短く、次いで心室筋、房室接合部(房室結節・ヒス束)は極端に長くなっています。なぜ、房室接合部の不応期は極端に長くなっているのでしょう。

 

これは、心房からたくさんの電気信号が発生されるような異常事態が起こった場合に、それをすべて心室に伝導してしまうと、心室のポンプ機能が破は綻たんしてしまうからです。

 

房室接合部は、不応期が長いために、ある程度の頻度でしか心室に信号を送らないようにできていて、心室を保護しているのです(図12)。

 

図12房室接合部の不応期が長い訳

房室接合部の不応期が長い訳

 

受攻期

刺激伝導心筋にはありませんが、作業心筋である心房筋、心室筋には受攻期があります。これは不応期の終わり頃の時間帯で、ここに刺激が入ると、心房筋、心室筋が痙けい攣れんしてしまうことがあります。

 

皆さんも筋肉が痙攣した、俗にいう“つった”ことがありますよね。疲れて休もうとしているときに刺激が入ると、筋肉は痙攣してしまいます(図13)。心臓ではこれを細動といいます。

 

図13不応期と受攻期

不応期と受攻期

 

看護勤務も、もうすぐ終わる、あるいは勤務終了直後に仕事を命令されると、ヤケを起こしますね。キレると言い換えてもいいです。このデリケートな時間帯を受攻期といい、キレて暴れた状態が細動です。

 

心房が痙攣することを心房細動、心室の痙攣は心室細動です。ポンプ機能は心室ですから、心室細動になると循環が停止します。

 

心房細動は、痙攣している心房筋の各細胞から電気が出ていますが、これが1分間に600~800回という高頻度です。この高頻度の信号を心室に伝えないようにして、心室を守っているのが房室接合部です。不応期が長いため、心室には適当な数の信号しか届きません(図14)。

 

図14不応期の長さ

不応期の長さ

 

まさに病棟のスタッフがキレないように、副総師長・病棟師長がムリな命令を伝えないようにしているのです。

 

まとめ

  • 心筋は一度刺激を受けて興奮すると、しばらくは興奮できない不応期をもつ。心房筋がいちばん短く、房室接合部が極度に長くなっている
  • 心房・心室筋の不応期終了付近は受攻期といわれ、ここに刺激が入ると細動という心筋の痙攣を起こすことがある

 

自動能

自動能をひと言でいうと“ペースメーカーになる能力”です。

 

活動電位持続時間のところでも説明しましたが、洞結節はまわりからの刺激がなくても勝手に脱分極して、規則正しい間隔で電気信号をつくる能力をもっています。この“規則正しい間隔で電気信号を発信する能力”を自動能といいます。言い換えれば、全体のリズムをつくる能力、ペースメーカーになる能力です。自動能は、洞結節ばかりではなく、他の心筋細胞にも備わっています。

 

通常は、洞結節がリズムをつくっていることはすでに説明しましたね。

 

では、もし洞結節が不調になってしまい、信号が出せなくなってしまったら、どうなるでしょう。心臓が止まってしまいますね。それでは困りますので、今度は房室接合部(房室結節・ヒス束)が自動能を発揮します。
洞結節も、房室接合部も故障してしまったらどうしましょう。今度はさらに下位の脚・プルキンエ線維で、電気信号を発生します(図15)。

 

図15洞結節や房室接合部が不調になると……

洞結節や房室接合部が不調になると

 

では、なぜ通常は洞結節がリズムをつくるのでしょうか。答えはその能力の違いです。洞結節が、いちばん短い間隔で電気信号を出す能力をもっているので、心臓全体がそのリズムで動きます。次に強力なのが房室接合部(房室結節・ヒス束)、そして脚・プルキンエ線維と下位に行くほど、自動能は弱く、不安定になっていきます。

 

具体的には、洞結節は1分間に50~150回、房室接合部(房室結節・ヒス束)は40~60回、脚・プルキンエ線維は30~60回の頻度で、周期的に発生する自動能をもっています(図16)。この頻度は、そのときの状況で変わりますから固定されたものではありません。

 

図16自動能

自動能

 

まとめ

  • 自動能とは、周期的に電気信号を発生する能力
  • 自動能の強さつまり、より高頻度に信号を発生する能力は、洞結節がいちばんで、房室接合部、脚・プルキンエ線維と下位に行くにしたがって弱く不安定になる

 

リセット現象

聡明な皆さんは、前項の自動能を勉強して、「そんなに、いろいろな場所に自動能があるのに、なぜ洞結節だけがリズムをつくるのか?」という疑問をもったかもしれません。確かに、それぞれが自動能を発揮して、各周期で信号を出すと、ややこしいことになりますね。

 

そこで、必要なのが“リセット”という機能です。

 

タイマーにも付いていますが、ゼロに戻す機能、つまりいままでのことは水に流そうという都合のよい機能です。自動能は、外からの信号で興奮するとリセットされてしまうのです。

 

話を簡単にするために、洞結節が1秒間に1回(60回/分)、房室接合部が1.5秒に1回(45回/分)、脚・プルキンエ線維が2秒間に1回(30回/分)の電気信号を出す自動能をもつとしましょう。洞結節から、信号が発信されますと、房室接合部(房室結節・ヒス束)、脚・プルキンエ線維と伝導していきますから、各自動能をリセットしていきます。

 

上位の自動能が下位の自動能より強力なかぎり、下位の自動能は出る幕がありませんね。

 

しかし、たとえば洞結節が故障して、信号が届かなくなったら、今度はリセットされない、房室接合部は1.5秒間に1回(45回/分)の信号を発生します。さらに、もしヒス束の伝導がなくなって(房室ブロックといいますが)、心室に信号が届かなくなれば、リセットされない脚・プルキンエ線維が自動能を発揮して2秒間に1回(30回/分)の間隔でペースメーカーとなるのです(図17)。

 

図17リセット現象

リセット現象

 

洞結節もリセットされます。1秒の間隔で、信号を出している洞結節に、たとえば0.7秒のタイミングで、外から信号が入ってきますと、その時点で洞結節の自動能はリセットされて、そこから1秒後に信号を出します。

 

会社組織も、役所も、病院もリーダーシップの強いトップが命令を出して、組織を引っ張っていきます。でも、トップが不調になれば、次に偉い人、そこもダメなら、さらに下の人といった具合に、なんとか仕事が継続されていきますが、やはり下からの命令は弱いというわけです。

 

まとめ

  • 自動能は、外からの刺激で興奮するとリセットされる

 

刺激伝導系をアクティブ心臓病院看護部に例えながら総復習しましょう。

 

洞結節総師長は、収縮看護には参加しません。全体のリーダーで、規則正しい周期で、電気指示を出すのが仕事です。自ら脱分極・再分極を繰り返す自動能が、全看護師中いちばん強いので、リーダーシップをとりますが、外からの刺激命令が入るとリセットします。

 

心房看護管理室は、心室病棟の補助です。活動電位持続時間が短く、不応期が短いのが特徴です。つまり心房管理室スタッフは勤務時間(持続時間)が短く、そのかわり命令も頻繁に受けることが可能(不応期が短い)です。ただし、勤務時間の終わり頃の受攻期に命令を受けると、心房細動という暴動を起こすことがあります。

 

房室結節副総師長・ヒス束病棟師長(接合部コンビ)は、命令をまとめて心室病棟に伝える中間管理職です。命令はすべてここを通ります。伝導速度が遅く、不応期が長く、洞結節総師長の次に自動能が強いという3つの特徴があります。この特徴にはそれぞれ意味があります。

 

伝導速度が遅い:心室病棟に、準備時間を与える、つまりタメをつくる。

 

不応期が長い:一度命令を心室病棟に伝えたら、しばらくの時間は伝えない。矢継ぎ早にドンドン命令が出ても、接合部コンビが握りつぶして、心室病棟に伝えないことで、心室病棟のパニックを防ぐ。

 

自動能が洞結節総師長の次に強い:もし、洞結節総師長が病気で休んだ場合は、接合部コンビから、規則正しい間隔で命令が出る。ただし、その周期は洞結節総師長より長い。

 

命令は、右脚・左脚両主任、プルキンエリーダーを通って、病棟心室筋スタッフに伝導されて、スタッフは収縮看護で、血液患者さんを循環させます。

 

右脚・左脚主任と、プルキンエリーダーは、順序、段取りよく素早く心室筋スタッフに仕事をさせますので、伝導速度が速いという特徴をもちます。弱いながら自動能ももっています。

 

心室筋スタッフは活動電位持続時間が長く、仕事の終わり頃の受攻期に命令を受けると暴れて、心室細動という暴動を起こすことがあり、収縮看護停止という恐ろしい事態になってしまいます。

 

自律神経と心臓

リラックスしているときや眠っているときは脈がゆっくりで、緊張しているときや運動しているときは脈が速くなっています。このことは経験として理解できますね。この調整は自律神経が行っています。自律神経とは、文字どおり自ら律する神経で、身体の要求に応えてその機能を発揮します。

 

循環を強化するほうと、弱めるほうの反対の仕事をする2種類の神経があり、強化するのは交感神経、弱めるのは副交感神経(迷走神経)といいます。いずれも心臓全体に分布していますが、とくに洞結節と房室結節にたくさんの神経末端をもっています。この2系統の神経は、正反対つまり、興奮抑制という作用で、お互いバランスをとります(図18)。

 

図18自律神経の働き

自律神経の働き

 

具体的には、交感神経は循環強化ですから、血圧や体温を上げて、心臓の収縮力を強めて、心拍数を上げます。これは、攻撃態勢に入るための神経です。逆に、副交感神経迷走神経)は循環を弱める神経ですから、血圧や体温を下げて、心臓の収縮力を弱め、心拍数を下げます。

 

刺激伝導系への作用を詳しくみると、交感神経は、洞結節の刺激発生頻度を上げて、心拍数を上げるとともに、房室結節の伝導速度を上げてかつ不応期を短くします。つまり房室間の興奮が通りやすくなります。

 

これに対して、副交感神経(迷走神経)は、洞結節の刺激発生頻度を低下し心拍数を下げるとともに、房室結節の伝導速度を下げ、不応期を長くして、房室間の通りを悪くします。

 

少々難しいことを説明しますと、交感神経が心臓に接合している神経末端からは、アドレナリンというホルモンが、そして副交感神経(迷走神経)からはアセチルコリンが放出されることによって作用を発現します。アドレナリンはまた、副腎というところから全身に分泌されるホルモンでもあります。

 

皆さんの身体で考えてみましょう。

 

人前で発表があるとしましょう。いままさに開始という直前は、身体の活動状態はピークに達し、交感神経がマックスに亢進して、その心臓接合の末端からアドレナリンが大量に放出されます。また副腎からもアドレナリンが分泌されます。洞結節は刺激発生が増えて心拍数は上昇、収縮力は増して、血圧はぐんぐん上がります。つまりドキドキ状態になります。これが交感神経亢進状態です。

 

発表が終わり、苦労を分かち合った友人とお茶でも飲んでリラックスすると、交感神経の活動が低下して、副交感神経(迷走神経)が優位になります。アセチルコリンの作用で、洞結節の信号発生もゆっくりになって、心拍数は低下、血圧も下がり、ほっとした気分になりますね。

 

薬の話を少ししますと、このアドレナリンの作用をブロックするのがβ遮断薬、アセチルコリンの作用をブロックするのがアトロピンです。β遮断薬は、交感神経を抑えるので、結果的に副交感神経(迷走神経)が優位になり、逆にアトロピンは、副交感神経(迷走神経)を抑えるので交感神経の作用が優位になります(表1図19)。

 

表1自律神経の作用

自律神経の作用

 

図19薬物と自律神経

薬物と自律神経

 

コラム迷走神経反射

緊張や痛みといった、心身のストレスに対しては、通常は交感神経活動が亢進して、脈が速くなりますが、同時に副交感神経(迷走神経)も活発になります。このとき迷走神経の活動のほうが強くなりすぎてしまうと、心拍数や血圧が下がってしまい、顔面蒼白、ときに倒れてしまう場合があります。これが迷走神経反射です。

 

注射のときなどに、気分が悪くなってしまうのはこういう状態ですね。

 

[次回]

心電図の記録法|心電図とはなんだろう(1)

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

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