細胞外液の点滴を行う患者さんを間違えて、違う患者さんに投与してしまった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、細胞外液の点滴を行う患者さんを間違えて、違う患者さんに投与してしまった場合について解説します。
社会医療法人 河北医療財団 河北総合病院 看護部
急性・重症患者専門看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
患者確認の原則は、①自分でフルネームを言っていただく、②ネームバンドを見て確認することです。
どのような場合でもこの原則を怠ってはなりません。
それと同時に、その患者さんの治療目的を理解し、適切な輸液が適切なルートで適切な方法で行われているかどうかの確認も重要です。
起こった状況
症例
肺炎と脱水で入院した患者さんに投与予定の生理食塩液500mLを、間違えて同室の心不全の患者さんへ投与してしまいました。
どうしてそうなった?
この看護師は患者確認を確実に行わなかったのが原因です。
突然声をかけられて名前を呼ばれたとき、反射的に相手の顔や目を見ようとするのは自然なことです。
このとき、名前を呼ばれた人は、その名前の本人であると回答しているわけではありません。
反射的に目を向けたに過ぎません。
しかし、声をかけた側は、顔と目が合ったということだけで、本人が自分であると認識したものと誤認してしまうことがあります。
だからこそ、本人確認の際は、患者さんにご自分の名前を名乗っていただくのです。
また、同姓同名の区別のために、ご自分の生年月日を言っていただくことも重要です。
さらに、患者認証のためのリストバンドは重要です。
リストバンドが外れたり、切れたり、紛失した場合は速やかに再発行しなければなりません。
これらの認証行為を省略してしまうと、このような事故が発生してしまいます
どう切り抜ける?
1 細胞外液と維持液の間違いも多い
輸液治療は日常広く行われていますが、輸液時のヒューマンエラーは重大な事故につながることがあります。
すべての看護師が輸液ミスの重大性を認識しておかなければなりません。
輸液投与内容の間違いで一番多いのは細胞外液と維持液の間違いです。
細胞外液は、血漿とNa濃度がほぼ等しい輸液製剤のことです。
出血などによる循環血液量が減少したときの補給・充填や、Naを投与したい低張性脱水などの補給・充填に用いられます。
大量・急速に投与することで、心不全や腎不全がある患者さんでは肺水腫などが出現するため注意を要します。
2 循環血液量の増加と輸液負荷の症状を観察する
投与された患者さんの病態を確認し、輸液負荷による影響を観察するとともに、今後予測されるリスクをアセスメントする必要があります。
具体的には、循環血液量の増加と、輸液負荷の症状の観察です。
まず、呼吸の状態を観察します。
輸液により影響されやすいのは肺水腫のような肺胞間質への水分のうっ滞です。
呼吸のしづらさや喘鳴は聴取されるか、頻呼吸になっていないかを観察します。
同時に、尿量の確認も行います。
腎障害がある場合は、少量の輸液でも腎の排泄機能が低下し、体内に水分が残りやすい状態となっています。
そのために呼吸状態の変調を来す場合があります。
それらを継続的に観察し、症状が出現した場合は誤投与による影響をアセスメントするとともに、医師の判断による医療的対応が必要となります。
3 患者さんに合った薬剤かどうかの確認も大事
大前提として、薬剤の誤投与を防ぐための確認行為は必須ですが、その前に、投与されている薬剤が患者さんに必要なものかどうかを理解しておくことが大切です。
その患者さんの治療内容に合っているかどうか、正しい目的で、正しい薬剤を投与しているかどうかが重要です。
それらを看護師が理解していれば、薬剤を準備するときや投与する前の段階で、気づくことも可能です。
医師の指示をただルーティン業務や流れ作業のように処理しているだけでは、誤投与も起こり得ます。
誤投与は、今回の症例のように看護師が患者さんの取り違いをする場合もあれば、医師が処方する段階で患者さんを間違えることもあります。
そのため、看護師も患者さんの治療経過をしっかり理解しておくことが必要になるのです。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



