SpO2が低下したので吸引したが、上昇しなかった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんのSpO2が低下したので吸引したが、数値が上昇しなかった場合について解説します。
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
クリティカルケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
低酸素血症が発生した場合、最も優先されるのは酸素投与です。
「SpO2が下がったら吸引をする」をルーチンで行うのではなく、患者さんの状態や既往歴を把握し、迅速に医師に報告して適切な対応をすることが重要です。
- 低酸素血症の原因には、①肺胞低換気、②換気血流比不均衡、③拡散障害、④シャントがあります。
原因によっては治療や看護ケアが異なり、よかれと思って行った吸引が逆効果となることもあります。
患者さんの病態から低酸素血症の原因をアセスメントすることが重要です。
起こった状況
症例
既往歴にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)があり、肺炎で入院中の患者Aさん。
酸素1L/分吸入中です。
Aさんから息苦しいと訴えがあったため、パルスオキシメータを測定したところ、SpO2が85%と低下していました。
看護師Bは急いで吸引を実施しましたが、SpO2が上昇しません。
Aさんの息苦しさはさらに悪化しており、看護師Bはどう対応してよいか迷っています。
どうしてそうなった?
SpO2は血液中の酸素飽和度を経皮的に測定しています。
AさんのSpO2が低下しているということは、空気中から酸素を取り込み、体内で生じた二酸化炭素を排出するという肺の換気機能が果たせない「呼吸不全」の状態と考えられます。
低酸素血症の原因は4つあり、原因によって、吸引を行ってもSpO2が改善するとは限りません。
どう切り抜ける?
1 患者さんの意識状態の確認と、酸素投与を考慮する
動脈血中の酸素が不足していると呼吸回数や換気量が増え、呼吸困難や不整脈、意識障害などの症状となって現れます。
呼吸不全の状態が長引くと全身の重要な臓器への酸素の供給が滞り、臓器障害を引き起こすため、迅速な対応が必要です。
呼吸不全は、空気吸入下の動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下と定義され、パルスオキシメータで測定したSpO2では90%以下が目安となります(図1)。
図1PaO2およびSpO2と呼吸不全

これを下回る場合は直ちに医師へ報告し、酸素投与を考慮します。
2 酸素投与を行う場合、患者さんの既往歴に注意する
酸素投与において注意すべき点は、AさんがCOPDの既往歴を有していることです。
COPDの患者さんに対して高濃度の酸素投与を行うと、CO2ナルコーシス注)が引き起こされ、呼吸停止のリスクが高まります。
患者さんが酸素投与を受けている場合は、既往歴を確認し、SpO2の目標値を事前に医師に確認することが重要です。
注)慢性呼吸不全の患者さんに酸素投与を行うことで、低酸素の刺激で維持されていた呼吸が抑制され、血中二酸化炭素濃度が増加し、意識障害など中枢神経障害が現れる病態
3 低酸素血症の原因を知る
低酸素血症の原因は4つあります(図2)。
図2低酸素血症の4つの原因

1)肺胞低換気
気管支の狭窄、または呼吸筋力の低下などが原因で、肺胞内を出入りする空気が極端に減少し、酸素量が少なく、二酸化炭素が多くなっている状態です。
高二酸化炭素血症を伴います。
2)換気血流比不均衡
痰の蓄積などにより、換気量が減少した肺胞と、そうでない肺胞があり、換気血流比が適切に分布していない状態です。
この状態は臨床上で最もよく見られ、肺炎、肺水腫、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症などによって引き起こされることがあります。
3)拡散障害
肺胞間質の炎症による滲出液の蓄積や線維化により、肺胞壁の肺胞毛細血管膜が厚くなり、肺胞内の酸素、二酸化炭素が通過できず、ガス交換ができなくなる状態です。
主に間質性肺炎や肺水腫で見られます。
4)シャント
シャントとは、換気が行われず、静脈血が動脈系に達する状態です。
臨床では、痰の貯留による無気肺や、肺気腫などの閉塞性肺疾患などで、気道が閉塞した場合に見られます。
酸素投与を行っても効果がありません。
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1) Collins JA, Rudenski A, Gibson J, et al: Relating oxygen partial pressure, saturation and content:the haemoglobin oxygen dissociation curve. Breathe(Sheff). 2015;11(3):194-201.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



