体位調整したら、気道(挿管)チューブが抜けてしまった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、体位調整したら気管(挿管)チューブが抜けてしまった場合について解説します。
河北総合病院看護部
救急看護認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
気管チューブの誤抜去は、固定方法や人工呼吸器回路の重さに伴うものがあります。
体位変換の際は、直接口元の気管チューブを保持し、体位を調整する場合は声かけを行いながら実施するなど、役割分担や声かけをすることで回避できることもあります。
起こった状況
症例
70歳代、女性、脳疾患による意識障害があり人工呼吸器管理中。
看護師2人で患者さんの体位調整を行うため、気管チューブと点滴ルートを見ながら側臥位にしたところ、頭側にある人工呼吸器の回路にテンションがかかり気管チューブが引っ張られてしまいました。
気管チューブの固定テープのずれはありませんが…。
どうしてそうなった?
人工呼吸器の回路の重みで気管チューブが引っ張られ、気道のトラブルが生じた可能性があります。
気管チューブの誤抜去は、カフが膨らんだまま声帯や気道粘膜を損傷することや上気道浮腫のリスクがあります。
気管チューブ抜去により気道閉塞の状態が続くと、酸素化不良から生命が危険な状況になる可能性があるため注意が必要です。
どう切り抜ける?
1 気道トラブルを疑う症状を確認する
気管チューブの誤抜去が予想される場合、呼吸状態の観察を行います。人工呼吸器の換気により胸郭が挙上するか(図1)、左右差がないか、聴診では呼吸音の異常音や左右差がないか観察します。
図1換気時の胸郭挙上

肺雑音がある場合は気管内吸引します。
呼気性喘鳴(笛のような高い音)や嗄声が聴取できる場合は上気道浮腫のリスクがあり、緊急度が高いと判断します。
SpO2(酸素飽和度)が低下した場合、SpO2が90%になると呼吸不全の定義であるPaO2(動脈血酸素分圧)60Torrとなります。
これは組織への酸素供給量が低下していることを指すため、人工呼吸の吸入酸素濃度を増量し、酸素化が改善するかどうかを確認する必要があります。
次に、患者さんのバイタルサインや全身状態の把握を行います。
頻脈の場合は呼吸を代償している可能性があり、ショック徴候がないか注意する必要があります。
鎮静レベルの程度や精神状態の変化がないか、チアノーゼや四肢冷感の有無も確認し、ショック徴候がある場合は緊急度が高いと判断します。
2 気道トラブルの原因
気管チューブの口角の固定テープの位置(女性20~22cm、男性22~24cm)がずれていない場合でも、口腔で気管チューブがたわんでいる場合(図2)があります。
図2気管チューブのたわみと脱出

カフリーク(声漏れ)がある場合はカフ圧の異常がないか確認し、カフ圧が低下している場合は、20~25cmH2Oに調整します。
カフ圧を追加してもゴロゴロと音がしてカフリークが持続する場合は、気管チューブの移動によりカフが声門から脱出していると考えられるため、再挿管や気管チューブを適切な位置に調整する必要があります(図3)。
図3気管チューブカフの声門からの脱出

3 気道トラブルの対応
気道トラブルにより危機的状況と判断される場合は、速やかに応援を要請し、救急カートとバッグバルブマスク(BVM)を準備します。
気管チューブにBVMを接続し、換気ごとに胸郭の挙上があるか、SpO2が上昇するか確認します。医師が到着後は気道トラブルの経緯を報告し、再挿管も考慮し準備を行います。
気管チューブの位置を把握するため胸部X線撮影を行い、適切な位置にあるか(気管分岐部より3~4cm上)確認します(図4)。
気管チューブの位置のずれがある場合は、位置調整を行います。
図4胸部X線

再挿管が必要と医師が判断する場合は、再挿管に必要な物品を用意します。
上気道浮腫によって同じサイズの気管チューブが入らない場合に備え、それよりも1段階細いサイズの気管チューブも用意します。
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1) 讚井將満:人工呼吸管理に強くなる.羊土社,東京,2013:170-176.
2) 山勢博彰:クリティカルケア アドバンス看護実践.南江堂,東京,2013:8-17.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社


