術後の初回離床のとき、立位直後に、めまいを訴え顔面蒼白になった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、術後の初回離床のとき、立位直後に、めまいを訴え顔面蒼白になった場合について解説します。
市立奈良病院看護部
集中ケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
離床時の苦痛は、患者さんの離床意欲を大きく低下させる危険性があります。
離床前のかかわり方で、起立性低血圧の発生リスクは軽減することができるため、日常ケアの中にヘッドアップや足関節の底背屈運動を取り入れて準備を進めていきましょう。
- 術後の早期離床は術後合併症を予防し、在院日数を減少させると言われています。
しかし、術後早期では、侵襲による影響で循環動態が変化しており、離床を行う際に、起立性低血圧を生じることがあります。
起立性低血圧は離床時の有害事象で最も多く、症状に注意しながら離床を行う必要があります。
起こった状況
症例
患者Bさんは胃がんに対する幽門側胃切除術を行い術後1日目。
主治医の診察後に離床許可が出たため、初回離床を行ったところ立位になった時点でめまいを訴えて顔面蒼白となりました。
担当していた看護師は倒れそうになるBさんを支えながらどうしたらいいのかわからず助けを呼んでいます。
どうしてそうなった?
離床後3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上の低下、もしくは拡張期血圧が10mmHg以上低下することを起立性低血圧と言います。
起立性低血圧の原因はさまざまですが、術後の患者さんでは、手術による生体侵襲反応で血管透過性亢進が生じて、循環血液量が減少しています(表1)。
表1MOOREの分類

そのときに、離床のため立位になると、重力によって静脈血は下肢に移動して、心臓に返っていく静脈灌流量が急激に減少して血圧の低下や頻脈となり、さらには、めまいや失神などの症状が出現します。
どう切り抜ける?
1 まずは患者さんの安全を確保する
血圧の低下によって脳血流が減少すると、めまいや気分不快などの症状が出現し、重度の場合には失神する可能性もあります。
失神を起こすと転倒する可能性が高いため、速やかに端座位や背臥位に戻して患者さんの安全を確保しましょう。
起立性低血圧であれば、背臥位にすることで、血圧は上昇し症状も軽減することが一般的ですが、血圧低下や意識レベルの低下が遷延している場合には下肢の挙上を行いましょう(図1)。
図1下肢挙上

2 血圧と心拍数(脈拍数)の測定を行い原因の検索を行う
起立性低血圧の原因はさまざまですが、血圧と心拍数(脈拍数)をみることで、ある程度の原因を推測できます。
離床開始に伴い血圧が低下し頻脈となった場合には、脱水や出血による循環血液量の減少が起こっています。
さらに、収縮期血圧が20mmHg以上の低下と頻脈を認めた場合には、侵襲によって炎症性サイトカインが分泌され、血管収縮反応が抑制されている状態が考えられます。
反対に、血圧・心拍数ともに低下した場合は、迷走神経反射によるものも考えられます。
術後の患者さんは痛みなどの苦痛やストレスを感じているため、迷走神経反射のリスクも考慮する必要があります。
3 離床を継続できるかを評価する
術後の早期離床は創治癒の促進や術後合併症の予防となるため、起立性低血圧を起こした場合でも、短時間で血圧が回復するのであれば離床を継続することが望ましいです。
具体的には、足関節の底背屈運動や足踏みを行い血圧が回復するのであれば離床を継続しましょう。
しかし、2〜3分ほど継続しても血圧が回復しない場合には離床を中止しましょう。
また、離床を継続するか判断している最中にも意識レベルの低下を認めた場合には、すぐに背臥位に戻します。
もしも、中止となる場合には、医療チーム内で原因を検討し対応を考えます。
4 早期離床に向けて離床前から準備を進めていく
離床の進め方は、①床上訓練:ヘッドアップ・下肢の運動、②端座位、③立位・歩行と進めていきますが、安全に離床を行うためには離床前の①が重要となります。
起立性低血圧のリスクが高い患者さん(表2)ほど床上訓練が重要であるため、呼吸循環動態が安定して創部に異常がない場合には、ケアや処置が終えたらヘッドアップや足関節の底背屈運動を促し、準備を進めましょう。
表2主な起立性低血圧のリスクと機序

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1) 日本離床学会ホームページ:離床マニュアル 起立性低血圧とリスク管理.(2024/3/18アクセス)
2) 山内康太,島添裕史,石村博史,他:胃癌術後における起立性低血圧の予測因子.日集中医誌 2013;20:387-394.
3) 尾野敏明編:イラストでわかる!ICUナースの生体侵襲ノート.日総研出版,名古屋,2015.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



