島の患者さんは全員ここへ～上五島～｜へき地・離島ナースリレーコラム【8】

へき地・離島で働く看護師リレーコラム。8回目は、長崎県の上五島(かみごとう)で働くあさみさん。

離島だからこそ見えてくる、医療の“つながり方”についてお書きいただきました！

◆あさみさんのコラム1回目はこちら

京都から11時間！長崎県上五島の看護師生活

(寄稿協力：特定非営利活動法人ジャパンハート)

命を救いたい！医療者の連携プレー

ある日、片麻痺の症状が出た患者さんが救急搬送されてきました。

搬送された患者さんの診断は脳出血で、ICUの空気がピンと張り詰めます。どこからともなく医師が集まり、看護師がテキパキと処置を始めました。医師は連携病院の本土の大学病院に連絡、相談。その間も今後の展開を予測しつつ、サクサク処置は進んでいきます。

患者さんは50歳代の女性で、麻痺はあるものの意識レベルはよく、ご自身も本土での積極的治療を望んでいました。そうと決まれば、すぐにドクターヘリの準備！

患者さんは、一報を聞きつけ駆けつけた娘さんと、涙で言葉にならないまましっかりと抱き合い、バタバタとストレッチャーでヘリポートへ向かいました。その途中、患者さんは字にならない字で、しかし力強くペンでと書いてくれました。

「ありがとうございました」と。

救急車でヘリポートに搬送(写真と本文は関係ありません)

上五島病院は島で唯一の有床病棟で、唯一手術施設を持つ病院です。つまり、島の救急車はすべて、島の端からでもやって来るのです。

救急からICU、医師と看護師間など院内の連携プレー。

当院と本土病院、ドクターヘリなど院外の連携プレー。

ひとつの命を救うべく同じ目標に向かって動く…。

その連携は言葉のみならず、お互い“あうんの呼吸”で展開されていくのです。

この時は、その現実とチームワークを垣間見た瞬間でした。

上五島ではヘリポートに搬送してからドクターヘリで本土へ(写真と本文は関係ありません)

島全体で患者さんをカバーしています

以前勤務していた病院では、患者さんの入院目的の疾患や、院内の診療科での既往は把握できましたが、なにもかも同じ病院で診てもらっているという方はほとんどいなかったと思います。他の病院でかかっている既往が知りたいときは、紹介状を確認するか患者さん本人に聞くしか方法がなかったんです。

上五島病院の外観

一方、島で入院できる病院は上五島病院だけですが、入院施設がない診療所や医療センターは地域ごとにあります。診療情報が電子カルテで共有できるようになっているので、それぞれの施設での患者さんの診療内容、行われた処置、処方された薬などがわかります。上五島病院の医師が診療所や医療センターに診察に行っていることもあって、その場合は医師に直接患者さんのことを聞いたり。

病院がたくさんある都市では、患者さんが病院を選ぶという感じでしたが、島にはその選択肢がない分を病院内のスタッフや地域の診療所、医療センターが連携してカバーするって感じでしょうか。

チームワーク抜群の上五島病院の看護師さんたち

どちらがよいかは分かりません。それぞれにメリット、デメリットがあると思います。

でも、上五島病院のスタッフはみんな、ここしかないからこそ患者さんのためにベストを尽くす。そのためにスタッフ一人ひとりが常に考えて動いているという印象がすごく強いです。そんなすばらしい場所で看護師をさせてもらってます！

次回は、島根県の隠岐島で働く“キコ”さんにお話しいただきます。お楽しみに！

■寄稿協力

特定非営利活動法人 ジャパンハート

2004年に代表の吉岡秀人医師が設立した国際医療ボランティア団体。今回紹介したへき地離島への医療研修は国際看護長期研修の一つで、ミャンマーでの医療研修も含め1年間のプログラムとなっている。ほかにもカンボジア、ラオスでの医療支援や医療者育成支援など、さまざまな支援活動を行っている。医療者が参加できる活動として、子どもや貧しい人々のために巡回診療や手術を行う、3日～7日程度の休暇で参加が可能な国際医療短期ボランティアなどがある。

■ジャパンハート公式サイト

■国際看護長期研修専用サイト