院長が体位変換する病院～牧丘～｜へき地・離島ナースリレーコラム【7】

2014/06/18

へき地・離島で働く看護師リレーコラム。7回目は、山梨県の牧丘で働くMichiさん。患者さんと医療スタッフの距離感についてお話いただきました！

◆Michiさんのコラム1回目はこちら

バスは1日5本。山梨県・牧丘ナース

（寄稿協力：特定非営利活動法人ジャパンハート）

看護師より看護師らしい院長？

牧丘では、医療スタッフが患者さんと接するときに、ただの患者さんではなく一人の人として、きちんと関係を築いています。

退院し、在宅で治療を続けている患者さんに聞いた話です。

入院中、隣のベッドの方が、すぐ人に用事を頼む人だったそうです。「あれとって」「カーテン閉めて」などなど。そんなある日、

「違う！もっとこっちに体を向けて！」

「こうけ？」

「違う！」

と、怒鳴られながら隣の患者さんの体の向きを変えようとしている男性の声。看護師はたいてい女性なので、男性の看護師はめずらしいなと思って振り向いてみると、牧丘病院の院長だったそうです。

その後も、食事中の患者さんの魚の骨を取ってあげていた、退院して在宅医療に切り替えたとき冷蔵庫の食べ物の賞味期限を確認してくれた、など院長の逸話が続きます。

医師というものは、患者さんから何か頼まれたらたいてい「看護師さん呼んでくるから」とその場からいなくなってしまうものだと思っていたけれど、院長は快く患者の体の向きも変えてくれる。院長とは15年以上の付き合いになるというこの患者さんは、目を細めて語ってくれました。

道端で自らパンクしたタイヤを交換する院長

スタッフが語る患者さんのドラマ

患者さんが話してくれる医師や看護師の話に感動したり笑ったりすることがありますが、医療スタッフが患者さんの話をしてくれることもたくさんあります。

たとえば在宅医療を続けている肺が悪い患者さんの話。満州から日本に戻り、山を開墾して牧場を開き、年月が経って牛も集落もなくなってしまったけれど、酸素吸入しながら最後の住人としてそこに暮らすお年寄りの人生を、スタッフは壮大なスケールで語ってくれます。

ただの風景も映画の舞台のように…

そうして訪問診療で患者さんに会うと、ただのお年寄りではなくきらきら輝いた映画の主役のように見えてしまいます。

医療という視点だけでなく患者さんと向き合う。私はその大切さを牧丘で学んでいます。

雄大な富士山が見守る牧丘

みんながチームの一員として

在宅医療のチームが動き出すとき感動したことが、チームに上下関係がなくフラットだということです。院長自身が患者さんの体位交換や摂食介助、冷蔵庫の賞味期限の確認を行う、看護師の視点も持っている方なので、話が早く在宅の計画や問題もチームで共有しやすいのです。

その分、看護の領域の重要性を知っている院長であるがゆえの厳しさもあり、気が引き締まる思いです。

ドクター、看護師というような立場は関係なく意見交換ができます

在宅チームには、院長のチーム以外にも魅力的な女医のチームがあります。このチームも各職種が最大限に意見を交わす、活気のあるチームです。

「チームの一員よ」。女医を含め、各職種の言動や働く姿勢から、互いにそう思っていることが見て取れます。医師だけの力、看護師だけの力でなく、チームで一緒に作り上げる。それができる人が牧丘にはたくさんいます。

次回は、長崎県の上五島で働く“あさみ”さんにお話いただきます。お楽しみに！

■寄稿協力

特定非営利活動法人ジャパンハート

2004年に代表の吉岡秀人医師が設立した国際医療ボランティア団体。今回紹介したへき地離島への医療研修は国際看護長期研修の一つで、ミャンマーでの医療研修も含め1年間のプログラムとなっている。ほかにもカンボジア、ラオスでの医療支援や医療者育成支援など、さまざまな支援活動を行っている。医療者が参加できる活動として、子どもや貧しい人々のために巡回診療や手術を行う、3日～7日程度の休暇で参加が可能な国際医療短期ボランティアなどがある。

■ジャパンハート公式サイト

■国際看護長期研修専用サイト

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