血液製剤の基礎のキソ|いまさら聞けない!ナースの常識【18】

毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?

知ってるつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。

そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。

 


 

Vol.18 血液製剤の基礎のキソ

さまざまな治療に利用される血液製剤。基本的には安全性検査をパスしたものだけが臨床現場に届くが、その安全性を手放しで信用するにはリスクが大きい。

実際、過去には、薬害エイズや薬害肝炎など、血液製剤によって引き起こされた大きな事件も存在する。

 

この機会に再度、血液製剤の基礎的な知識とリスクについて見直してみよう。

 

そもそも血液製剤とは

日本で使用される血液製剤には、輸血用血液製剤(いわゆる輸血)と血漿分画製剤がある。

 輸血には

 

・全血製剤

・血液成分製剤(赤血球、血漿、血小板)

 

があり、

血漿分画製剤には

 

・血症凝固第Ⅷ因子製剤

数万人分の血漿から血液凝固第Ⅷ因子を集めたもの。血友病Aの患者には重要

 

・アルブミン製剤

数万人の血漿からアルブミンだけを抽出したもの。大量出血によるショックや熱傷、肝臓病、腎臓病などの治療に使われる

 

・免疫グロブリン製剤

血漿中の抗体=免疫グロブリンを集めたもの。抗生剤が効かない患者に使われるものと、B型肝炎ウイルスに対する抗体を高濃度に含むため針刺し事故の際に使われるもの

 

などがある。

 

看護師がするべきこと

血液製剤を使用する場合、まず重要なのは患者への説明。血液製剤は生命の維持には必要だが、将来的な感染症や、血液製剤による副作用などリスクも伴う。

 

血液製剤の使用だけに限らずごく当たり前のことだが、血液製剤を使用することになった時、「なぜ必要なのか」・「血液製剤を使用した場合の現在のリスクと将来的なリスク」の2点は包み隠さず説明し、しっかりと理解してもらう必要がある。

海外製の薬剤を使用する場合は、その点も説明が必要になるだろう。その上で同意書に署名捺印をしてもらう。

 

そして必ず記録をすること。血液製剤は必ず、使用した日時と患者氏名、使用薬剤に添付されているロット番号を記録する義務がある。将来的に何かしらの問題が起きた時、このロット番号が追跡調査の鍵になる。

 

それから投与中の観察と記録。観察ポイントは疾患や使用する薬剤によって異なるが、血液製剤を使用して副作用がみられた場合も、国へ報告することになっている。場合によっては国からの救済が受けられるケースもあるので、患者のためにもここはしっかり報告しよう。

 

 

血液製剤の抱えるリスク

 

血液製剤について、特に上記のような気遣いをするべきなのはなぜか。

日本で製造される場合、血液製剤の元となる血液は全て献血によるものだ。血液が提供される段階から、血液製剤が医療機関に届くまでの間に様々な安全対策が施されている(図1)。

しかしこれでも100%安全とは言い切れないのだ。

 

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図1 献血から血液製剤提供までの流れ

 

 

その理由は大きく2つ。

1つは現時点で未知の感染症には対応できないこと、もう1つはウィンドウ・ピリオドと呼ばれる期間があることだ。

 

ヒトが何かのウイルスなどに感染すると、それが検査で明らかになるまで数日の日数を要する。この期間のことをウィンドウ・ピリオドと呼ぶ。

病原体によってこの期間は異なるが、この期間に献血した血液は、現在の技術では100%検知することは出来ないため、安全性に対する検査をパスしてしまうことがある。

 

例えばHIVウイルスは、感染後22週間しないと検出されないといわれている。対策としては「何らかの感染の危険性が少しでもある場合は献血を受け付けない」ことだが、献血の際の問診票などから判断するしかないため確実性は低い。

 

もう1つの対策として、日本赤十字社では1991年より、核酸増幅検査(NAT)を導入している。これは、ウイルスそのものからDNA(またはRNA)の一部を約1億倍に増幅させることで、通常の検査よりも早くウイルスへの感染を発見できる検査方法である。

 

平成20年度の献血の行方を辿ってみると、献血人数5,077,238人のうち、例えばHBV(B型肝炎ウイルス)感染により利用が不適切となったのは一次検査で17,757人分、さらにNATでは80人分だ。

もちろんその後の血液製剤製造過程でウイルス等の除去・不活化処理は行われているのだが、すり抜けてしまう可能性もある。

 

 

血液製剤は日本製とは限らない

 

また、製造元が日本以外の血液製剤もある。日本の血液製剤供給量をみると、輸血用血液製剤は自給率100%だが、血漿分画製剤は約半数以上を海外からの輸入でまかなっている。

それは薬剤のラベルを見るとわかる。

 

1991年以降、世界的な統一として「この製剤の基となっている血液はどの国で採血されたもので、それが献血なのかどうか」が明記されている。

製剤自体は日本の安全基準をパスしたものではあるのだが、例えばそれが海外で非献血(日本でいう売血、あるいは献血とは明確になっていないもの)と書かれていたら、心情的に嫌がる患者もいるかもしれない。そういう意味の配慮として明示されることになったようだ。

 

さまざまなリスクを抱えているとはいえ、今目の前で血液製剤を必要としている患者がいれば使わざるを得ない。看護師としては供給されている製剤は安全であると信用するしかないのが現実なのかもしれない。

だからこそメリット・デメリットをきちんと理解し、正しい投与法で投与する、必要な記録はきちんとするなど、少しでも安全に提供できるように努めなくてはならない。

 

【岡部美由紀】

 

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