高齢心不全患者の治療に関する指針を発表|第20回日本心不全学会学術集会【学会トピック】

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日本心不全学会(理事長:磯部光章・東京医科歯科大学教授)は10月7日、今後の心不全治療の指針として『高齢心不全患者の治療に関するステートメント』を発表した。

ステートメントでは、高齢心不全患者であっても積極的に治療すべき症例が存在することを再確認する一方、積極的治療によってQOLが悪化する症例も存在するとしてQOL重視の治療の意義を強調、さらには終末期を意識した多職種による緩和ケアなどの導入も提言した。

 

理事長の磯部氏は「日本心不全学会として初めて発刊する、診療に関する本格的な提言である。第一線で診療に当たる医師、医療従事者をはじめ多くの人々によって、質の高い高齢者心不全診療の実践のために活用されることを切に願う」とコメントしている。

(三和護=医療局編集委員)

 

日本心不全学会で開催された特別企画

写真1 日本心不全学会で開催された特別企画 

 

心不全患者の爆発的な増加(心不全パンデミック)が現実のものとなりつつある中、今後さらに高齢化する社会において、しかも限られた医療資源のなかで、医療人はこれら高齢者心不全をどのように理解し、いかに対処すべきなのか――。ステートメントは、こうした問い掛けに始まり、専門学会としての「答え」を提言という形で集約している。内容は「高齢者心不全の診断と臨床的・社会的評価」「高齢心不全患者に対する急性期・救急対応」「高齢心不全患者に対する終末期医療の指針」など7つのテーマごとにまとめられ、それぞれにおいて学会としての考え方が提示されている。

 

同学会は10月7日、ステートメントの全文を学会のウェブサイトで公表。さらに同日から札幌市内で始まった第20回日本心不全学会学術集会において、特別企画を開催し学会員間での議論を深めるなど、ステートメントの普及と浸透に乗り出している。 

 

策定委員会の委員長を務める広島大学副学長の木原康樹氏は特別企画で登壇し、「策定委員会はステートメントで扱う高齢者を後期高齢者(75歳以上)と定義し、これに相応するエビデンスを検索・収集・解析した」と説明。

その結果、我が国の高齢者心不全の特徴は、

「(1)コモン・ディジーズであり、その絶対数がさらに増加してゆく、(2)根治が望めない進行性かつ致死性の悪性疾患である、(3)その大半が心疾患以外の併存症を有し、個人差が顕著である――の3点に要約された」

と語った。

その上で、このような高齢心不全患者を診るためには、「基幹病院の専門医とかかりつけ医あるいは多職種によるチーム管理システムが必須である。延命以外の治療目標がしばしば重要となり、個人や家族の希望に沿うことができるよう早期から終末期への準備を始めておくことが求められる」と強調した。

 

ステートメント策定委員の1人である兵庫県立尼崎総合医療センター循環器内科部長の佐藤幸人氏は日経メディカルの取材に対して、「今回のステートメントの意義は大きく2つある。1つは、高齢心不全患者でも積極的に治療するとよい場合もある、という方向性を再確認したこと。もう1つは、合併症が多く終末期が近い高齢心不全患者では、積極的治療がかえってQOLを落とすため、治療の差し控え、あるいは終末期では緩和ケアなどをチーム医療で考慮するという方向性が示された点だ。個人的には、後者が盛り込まれたことの意義は大きいと思っている」と話している。

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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