オリンピック中に搬送が増える疾患とは?看護師が知っておきたいリスク

いよいよ開幕した2016年リオオリンピック。

盛り上がりの一方で、医療者として気になるのは健康問題や事故による搬送の増加です。寝不足による体調不良や観戦時のトラブル、さらにアルコール中毒や熱中症の心配もあります。

そこで今回は、看護師として心に留めておきたいオリンピック開催中に起こりうる問題についてまとめてみました。

 

 

【目次】

 

オリンピック観戦で寝不足…自律神経の乱れは意外と深刻

オリンピック期間中は、日本代表選手のために寝ずに応援するという方も多く、その寝不足が原因で自律神経のバランスが乱れ、体調を崩してしまう恐れがあります。

今回のオリンピックは日本の裏側であるブラジルの南東部、リオ・デ・ジャネイロで行われます。現地との時差は12時間で、日本の時間とは真逆です。そのため、リアルタイムで観戦しようと思うと徹夜どころか寝ずにテレビをチェックしていなくてはなりません。

 

寝不足に陥ることにより、自律神経の乱れが懸念されます。自律神経が乱れると、身体にはさまざまな悪影響が出てきます。

 

 

●ホルモンバランスの乱れ

人間の身体は、24時間周期で体内リズムを調整するホルモンの働きが不可欠です。そのホルモンの多くは寝ている間に分泌されます。そのため、寝不足はホルモンバランスの乱れに直結するのです。その結果、倦怠感、頭痛、吐き気、動悸、冷えなどの症状があらわれます。女性であれば、女性ホルモンの乱れから、月経不順や便秘、むくみ、肌荒れといった気になる症状の原因になります。

 

●基礎疾患の悪化

ホルモンを調節する自律神経の乱れは、基礎疾患がある方の、病気を悪化させる要因にもなりかねません。また、免疫力が低下するため風邪などの感染症にもかかりやすくなります。

 

●精神の不安定

自律神経の乱れは身体面だけでなく、精神面にも影響を及ぼします。心が不安定になるため、ストレスを対処することができなくなりうつ状態に陥ったり、よい睡眠が取れず不眠になるなど、症状がまた新たな症状を招くという悪循環になる可能性もあるのです。

 

●集中力の低下

集中力の低下も懸念されます。これは看護師自身にとっても重大なリスクです。寝不足のまま業務を行うことで、仕事中のミスやインシデントを起こしてしまう危険性はぐっと上がります。看護師は命を預かる仕事です。もしもインシデントを起こしてしまったら、オリンピックで寝不足だったということは言い訳になりません。

 

命の危険もある急性アルコール中毒

ワールドカップ等の大きなイベントの際や、お花見などの季節には必ずと言っていいほど話題にのぼる急性アルコール中毒。今回のリオオリンピックの開催中にも急性アルコール中毒により搬送される方の増加が懸念されています。

 

 

日本国内での急性アルコール中毒の搬送者数は、たとえば東京では14,303人(平成26年度 東京消防庁)と決して少なくありません。

搬送者数は、イベントが多い12月、7月、8月に増えています。グループで集まって盛り上がるイベントが多いことが要因だとすると、オリンピックもそれに該当します。

 

急性アルコール中毒は、飲酒により血中アルコール濃度が急激に高くなることで、頭痛、吐き気からはじまり、次第に呂律が回らず歩き方もフラフラでまともに歩けないような状態になります。さらに重症化すると、呼吸抑制や血圧低下がみられ、最悪の場合死亡する危険もあります。

 

看護師である私たちは、このような患者さんが搬送されてくることを想定しておくことが必要です。アルコール中毒による症状だけでなく、飲酒による転倒やケガ、持病の悪化のために来院する患者さんの増加も予想しておきましょう。

 

深夜であっても注意!熱中症

日本の夏は高温多湿のため、日中の炎天下はもちろんですが、夜間でも湿度が高いと熱中症になることがあります。

総務省によると、平成27年の5月から9月の熱中症による救急搬送人員は全国で5万5852人。今年のオリンピック開催期間と重なる8月は、7月に次いで2番目に救急搬送人員が多かったと公表しています。

 

 

オリンピックは人々の熱中度が高く、温度管理がおろそかになりかねません。特に、テレビを観ながら室内で盛り上がっていると気付かぬうちに身体に熱がこもってしまいがちです。身体の小さな子どもやお年寄りは、なおさら熱中症になりやすい傾向があります。

在宅の高齢者は、冷房の使用に消極的だったり、適切な温度管理ができないことも多くあります。在宅の患者さんには、水分、ミネラルの補給を意識しながら安全に観戦するよう指導することも重要です。

 

大人が熱中しているスキの子どもの怪我

リスクがあるのは、オリンピックを観戦している本人だけではありません。小さな子どもから目を離してしまったときや、深夜まで観戦し日中子どもを見ているうちに知らぬ間に寝入ってしまったときなどに思わぬ事故に巻き込まれてしまう恐れがあります。

部屋で遊んでいたはずが、ベランダに出ててマンションから転落してしまったり、ガスを触って火傷、浴槽にたまった水で溺れるという事故は意外と多く発生しています。ほんのひと時の油断が、命を奪うことになりかねないのです。

 

 

世界中が注目し熱中するオリンピック。医療者としては、盛り上がりの裏にあるリスクも心に留めた上で楽しみたいものです。

 

 

【ライター:こたつむし】

 

(参考)

他人事ではない「急性アルコール中毒」(東京消防庁)

平成27年の熱中症による救急搬送状況(総務省)

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