最終更新日 2018/03/12

前立腺炎

前立腺炎とは・・・

前立腺炎(ぜんりつせんえん、prostatitis)とは、狭義には尿路からの前立腺実質への逆行性感染による急性細菌性前立腺炎のことで、排尿痛排尿困難重症例では高熱を伴う敗血症の状態を呈することもある。
一方、前立腺炎症候群とは、頻尿残尿感、会陰部不快感、射精時の疼痛、下腹痛などさまざまな症状を呈する症候群で、器質的な疾患を認めないことが多く難治性である。本稿では前者について述べる。

【原因】
・腸内細菌の尿道からの逆行性感染
(1)急性前立腺炎の起炎菌は、大腸菌が60%程度を占める。
(2)膀胱鏡や尿道カテーテル留置などの医原性の逆行性感染もある。
・前立腺がん発見のため経直腸的針生検など直接菌が入る場合もある。

【診断】
・排尿困難:排尿痛を伴い急激に悪寒戦慄を伴う発熱をきたした場合、急性細菌性前立腺炎を疑う。
・直腸指診では、圧痛を伴い腫大した前立腺を触れる。逆行性の感染が進むと精巣上体炎を併発し、陰嚢内に圧痛を伴う弾性硬の腫瘤を触れることもある。
尿検査では膿尿を認め、血液検査では白血球上昇、CRP上昇が認められる。前立腺がんがなくても前立腺の腫瘍マーカーであるPSAが上昇するので注意を要する。
・尿の細菌培養検査を行い起炎菌の同定を行う。重症例では血液培養も行う。

【治療】
・軽症例では、前立腺に移行の良いニューキノロン系の抗生剤を投与する。最近はニューキノロン耐性の大腸菌が多いので、培養の結果、耐性が認められれば他の抗生剤に変更する。
・重症例では敗血症を起こす場合もあるので、入院でβラクタム系の点適抗生剤投与を行い、培養結果が出たら結果に応じて変更も考慮する。2週間以上の長期にわたり投薬が必要である。

執筆: 米瀬淳二

がん研有明病院 泌尿器科部長

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