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2017年02月17日

風しん【疾患解説編】|気をつけておきたい季節の疾患【4】

来院された患者さんの疾患を見て季節を感じる…なんて経験ありませんか?
本連載では、その時期・季節特有の疾患について、治療法や必要な検査、注意点などを解説します。また、ナースであれば知っておいてほしいポイントや、その疾患の患者さんについて注意しておくべき点などについても合わせて解説していきます。

→風しん【ケア編】はこちら

 

風しん主訴_後頸部リンパ節腫脹_後耳介リンパ節腫脹_赤色斑状皮疹

 

辻本登志英
日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部長 救急部副部長

 

〈目次〉

 

風しんってどんな疾患?

風しんの発生状況

風しんは「ワクチン接種で予防できる疾患」です。日本では風しん患者70%以上が男性です。また風しん患者のおよそ80%が1962(昭和37)年〜1991(平成2)年に生まれた人たちです(1)。この理由は予防接種の項で述べます。

風しんという疾患自体が生命にかかわることはほとんどありません。特に年齢が若ければ若いほど症状は軽く、風しんと分からずに経過する(知らないうちに風しんにかかっていた)ことさえあります。

問題となるのは、妊娠女性が風しんに罹患することで、これにより胎児に先天性風しん症候群という病態が生じます。妊娠前期に風しんに罹患した場合、およそ80%に先天性風しん症候群が生じると言われています(2)

 

風しんの感染経路

風しんは飛沫感染が主で、潜伏期は2~3週間です。風しんは、通常1回の感染で終生免疫を得るため、一度風しんに罹患したら再発することはまずありません。また、風しんの他者への感染性はあまり強くありませんが、皮疹出現の1週間前から皮疹出現後2週間までは感染の可能性があります

 

風しんの臨床症状

風しん患者には、発熱と全身倦怠感が見られますが、いずれも軽度です。特に小児は無症候性感染の症例も多く見られます。若年女性患者の場合は関節痛を訴えることがあり、指・手首・膝などの痛みを訴えます。

また、早期より耳介後部や後頸部にリンパ節腫脹を認めます。口蓋や咽頭発赤を認めることもあります。

しかしこのような症状は、決して風しんに特徴的というものではありません。ほかのウイルス性疾患(伝染性単核球症、麻しん、エコーウイルス感染症、コクサッキーウイルス感染症など)と区別がつかない症例もあります。

発疹

発疹(皮疹)は細かいピンク色の斑状発疹で、顔面から始まり、2〜3日で体幹・四肢に拡大します(図1)。皮疹は出現すると1日で消褪し始め、3~5日で消失します。発疹のない風しんもまれにあります。

 

図1風しんの皮疹

風しん_皮疹

赤色斑状皮疹で、2〜3日で全身に拡大します(Public health image library(CDC)より)。

 

風しんの検査所見

血液検査では白血球減少が早期から見られます。

 

風しんの合併症

風しんの合併症としては、血小板減少に伴う出血傾向、肝炎(軽症)、風しん後脳炎などがあります。風しん後脳炎は、6,000例に1例の割合で発症し、致死率20%ではありますが、回復すれば後遺症はほとんど見られません。

先天性風しん症候群

妊婦、特に妊娠初期の女性が風しんに罹患すると胎内感染(経胎盤感染)して、出生児に障害を引き起こすことがあります。これは先天性風しん症候群と呼ばれており、妊娠月別の発生頻度は、妊娠1か月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度と言われています(2)

先天性風しん症候群の症状は、先天性心疾患、難聴、白内障が3大症状です。難聴は高度であることが多いとされています。
これらの症状以外には、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球など、多岐にわたる症状を呈することがあります。

 

風しんの処置・治療法

風しんに対する治療法はありません。もし症状が強ければ、その症状に対する治療(対症療法)を行います(例:関節痛が強い→非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)あるいはアセトアミノフェンの内服)

風しんの予防接種

風しん罹患による大きな問題は、妊娠中の罹患により先天性風しん症候群を来す確率が高い、ということです。このため、妊娠中の女性が風しんを発症しないよう、妊娠する可能性のある女性への予防接種が重要です。

また、流行を阻止するために男性・女性とも免疫のない人に対して、ワクチン接種は必要です。2006年より1〜2歳時期と5〜6歳時期の2回、MRワクチン(麻しんと風しんの生ワクチン)の定期接種が行われています。

年代別の風しんの予防接種率の違い

厚生労働省の集計によると、2013年現在で20~40代の男性の約12.3%(20代 約6.1%、30代 約15.8%、40代 約16.3%)が風しんへの抗体を持っていません。この割合はほかの年代より、また風しん抗体のない女性よりも高いのです。その理由は、その時代によって風しんワクチン接種の対象者が変わっていたからです(表1)。

 

表1年代別風しん予防接種の有無

風しん_予防接種

 

1962(昭和37)年4月1日以前生まれは、風しんという疾患自体が多い時代で、自然に免疫を得る機会が多かったため、多くの人が抗体を持っています。
1962(昭和37)年4月2日~1979(昭和54)年4月1日に生まれた男性は風しんワクチンを接種される機会がなく、女性は中学生時にワクチンを接種されていました。このため男性に風しんに対する免疫がない人が多く見られます。 1979(昭和54)年4月2日生まれから1987(昭和62)年10月1日生まれまでは、中学生全員が予防接種を受ける対象でしたが、実際の接種率は低く、風しんに免疫のない人が多くみられます。
1987(昭和62)年10月2日生まれ以降は、男女とも幼児期に予防接種を受けています。その接種率は高いのですが、風しん自体が減少してきたため、予防接種を受けていない人の中に、風しんの免疫がない人が多く見られます。

 

風しんの感染性は中等度といえども飛沫感染する疾患であるため、風しん疑いの患者が来院したら感染予防策が必要です。また、患者が予防接種を受けているかどうかの確認は、風しんの可能性を知る上で有用なため、必ず行ってください。

女性の風しん患者の場合、妊娠の可能性については必ず聞くようにしましょう。もし、妊娠初期時に風しんに罹患した場合には、堕胎も考慮することになります

風しんの抗体検査は自治体が無料で行っています。地域の保健所での風しん抗体検査の実施状況を予め知っておくと、患者の不安や疑問に応えることができるでしょう。
また、医療者自身が過去に風しんにかかっているかどうかを知っておくのも重要です。

なお、通常、5類感染症は7日以内に最寄りの保健所に届け出る必要があり、麻しんは5類感染症ですが、24時間以内の届け出が求められています。

 



[監 修]
辻本登志英
日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部長 救急部副部長

芝田里花
日本赤十字社和歌山医療センター 看護副部長


[Design]
高瀬羽衣子


著作権について

 

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