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2016年10月12日

FASTで外傷患者の緊急処置の必要性を判断

画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
今回は、「FASTで外傷患者の緊急処置の必要性を判断」についてのお話です。

 

加藤真吾
(横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室)

 

ここでは、外傷患者さんが来院した際に行うFAST(ファスト)という検査について解説します。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、とても大切な検査です。

FAST? 聞いたことないです。どんなエコー検査なんですか?

一言で言うと、外傷がある患者さんの体内に出血があるかどうかを、素早く診る検査です。

体内で出血があると、緊急性が高くなって大変ですよね。
すごい重要な検査じゃないですか!?

その通りです。だから外傷がある患者さんにとっては、必須の検査なんです。
FASTの画像を見る前に、FASTについて詳しく学んでいきましょう。

 

〈目次〉

 

FASTは出血の有無を判断するための検査

FASTとは、Focused Assessment with Sonography for Traumaの略です。直訳すると、「外傷に対する焦点を絞った超音波による評価」です。

FASTは、外傷の患者さんに出血があった場合、エコーで検出しやすい場所を絞って、迅速に出血の有無を判断する検査のことです。

基本的にFASTで評価する場所(プローブを当てる場所)は、心嚢腔胸腔腹腔の3箇所で出血が無いかを判断します。通常、検査の手順は、①心嚢腔、②モリソン窩、③右胸腔、④脾臓周囲、⑤左胸腔、⑥ダグラス窩の順番に行い、液体貯留の有無を検索していきます(図1)。

図1プローブを当てる位置

プローブを当てる位置

①心嚢腔、②モリソン窩、③右胸腔、④脾臓周囲、⑤左胸腔、⑥ダグラス窩の順にプローブを当てます。

 

ココが大事!FAST陽性は出血があり危険

FAST陰性(なし)・・・心嚢腔、胸腔、腹腔に出血なし。

FAST陽性(あり)・・・心嚢腔、胸腔、腹腔のいずれかに出血の疑いあり!→ 緊急処置!!

 

FAST行う必要がある患者

FASTは、外傷の患者さんに対して、心嚢腔、胸腔、腹腔における出血の有無を確認するために行います。そのため、外傷で来院した患者さんには必ず行う検査です。

出血の量がわずかな場合は、エコーで検出できない可能性があります。そこで、初回のFASTで液体貯留が認められなくても、時間をおいて反復して施行することが重要です。

 

ココが大事!FASTは必須検査

FASTは、外傷のある患者さんには必須のエコー検査です!

 

FASTで確認すべき場所

心タンポナーデは心臓が圧迫された状態

心臓と心臓を包む膜(心外膜)の間の空間のことを、心嚢腔と言います。通常、ここにはエコーで指摘できるほどの液体の貯留はありません。

しかし、外傷の影響で出血が起こると、心嚢腔に血液が溜まることがあります。心嚢腔に血液が溜まると、心臓が動けるスペースが少なくなり、心臓が圧迫されてしまいます。このような病態を、心タンポナーデと言います(図2)。

図2心タンポナーデの状態

心タンポナーデの状態

心嚢腔に血液が溜まり、心臓が圧迫されています。

 

心タンポナーデになると、心臓の動きが制限されるため、早急に処置をしないと非常に危険な状態となります。

 

胸腔内出血があると肺が広がらず危険

胸腔内出血を評価する際に、注目する箇所は、厳密に言うと胸膜腔です。

肺の構造を見ていくと、通常、肺は肋骨の内側にぴったりとくっついています。そして、両者が滑らかに運動できるように、肺と肋骨の内側はそれぞれ膜で覆われています。この肺側の膜のことを臓側胸膜、肋骨側の膜のことを壁側胸膜と言い、この間のスペースを胸膜腔と言います(図3)。

図3胸膜と胸膜腔の関係

胸膜と胸膜腔の関係

胸膜腔に血液が溜まると、肺が十分に広がりません。

 

胸膜腔に血液が溜まると、肺が十分に広がることができなくなるため、早急に処置が必要な状態となります。

 

腹腔内出血はモリソン窩、脾臓周囲、ダグラス窩を確認

腹腔とは、横隔膜より尾側にある腹部のスペースのことです。

私たちの身体には、仰向けに寝ると低くなる部分(液体が存在した場合、液体が溜まりやすい部分)が腹腔内にあります。この部分の代表的な場所が、モリソン窩、脾臓周囲、ダグラス窩の3つです(図4)。

図4モリソン窩、脾臓周囲、ダグラス窩の位置関係

モリソン窩、脾臓周囲、ダグラス窩の位置関係

A:正面図、B:側面図。
モリソン窩、脾臓周囲、ダグラス窩の位置を覚えましょう。

 

エコー検査では、モリソン窩、脾臓周囲、ダグラス窩に、液体貯留が存在するかを診ていきます。この3つの部分を診ることで、腹腔内に出血があるかを判断します。

これらの部分は、ヒトが仰向けに寝た時に、最も低くなる部分です。このため、腹腔内に液体があると、この3つの部分のいずれかに液体が貯留することが多いです。腹腔内出血は、多くの場合、圧迫されるものがないため、自然には止まりません。このため、緊急止血術が必要となります。

 

ナースへのアドバイス

FASTで陰性と言われた場合は、「心嚢腔・胸腔・腹腔に出血がない」という意味です。

逆に、1つでも陽性となった場合には、早急に処置をしないと命にかかわる事態です。医師から、緊急で多くの指示が出ることが予想されるので、気持ちの準備をしましょう。

FASTで行われる体内出血の描出法は、他の場面でも使われることがあります。例えば、病棟で腹腔内臓器の術後の患者さんに急変が起こった時に、腹腔内の出血を確かめる場合などにも使われています。

 

Check Point

  • 外傷の患者さんに対して行う、心嚢腔・胸腔・腹腔内出血のスクリーニング検査をFASTと言います。
  • FAST陽性の場合は、命にかかわる事態のため、医師から緊急の指示が出るということを覚えておいてください。
  • 外傷の患者さんが来るとわかっている場合は、エコーの準備をしておきましょう。

 

次回は、実際に心嚢腔に行ったFASTのエコー写真を紹介します。
検査の準備や、申し送り時、看護記録記入時のポイントについてもしっかりと覚えましょう。

 

〈次回〉

FASTのエコー像(心嚢腔)

 

 


[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室


Illustration:田中博志


著作権について

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