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2016年04月12日

呼吸音と副雑音の分類|基礎編(5)

聴診器を使用する際のコツや、疾患ごとの聴診音のポイントについて、呼吸器内科専門医が解説します。
構成は、聴診器の使い方から呼吸器の構造を解説した【基礎編】と、疾患の解説と筆者が臨床で遭遇した症例の聴診音を解説した【実践編】の2部に分かれています。基礎編は全8回にまとめましたので、初学者はまずはここからスタートしてください。

〈前回の内容〉

呼吸音が聴こえる仕組み|基礎編(4)

第5回目は、「呼吸音と副雑音の分類」についてのお話です。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科准教授)

 

気道や肺といった呼吸器系の構造や呼吸音の発生のメカニズムは理解できたと思うので、次は、聴診器で聴こえる呼吸音と副雑音の分類について解説します。

分類ということは、音には色々な種類の音があるんですか?

その通り! 呼吸音だけでなく、副雑音にはラ音と呼ばれる音が数種類あります。

そんなにあるんですか!? なんだか複雑ですね。

どんな音があるかを知っておかないと、聴診器で音を聴いたときに患者さんの異常に気付けなくて危険ですよ!
まずは、正常な呼吸音をしっかりと覚えておきましょう。

 

〈目次〉

 

呼吸音は生理的な音

普段、私たちが聴診器で聴いている肺音は、呼吸音と副雑音に2つに分けられます

呼吸音は、生理的な音で、正常な呼吸音には、気管呼吸音と気管支呼吸音、肺胞呼吸音があります図1)。

図1呼吸音の分類

呼吸音の分類

 

正常な呼吸音が聴こえている場合は問題ありませんが、呼吸音に異常がある場合は注意が必要です。

呼吸音に異常がある場合は、呼吸音が弱くなったり、聴こえなくなる「呼吸音の減弱や消失」といった状態や、ゆっくりとしか息を吐けなくなる「呼気の延長」といった状態の音が聴こえることがあります。このような異常に気づいた場合は、表1のような疾患を疑いましょう。

表1呼吸音の異常と疑うべき疾患の関係

呼吸音の異常 疑うべき疾患
呼吸音の減弱/消失時 気胸、胸水、無気肺
呼気の延長時 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息

 

副雑音にはラ音と胸膜摩擦音がある

呼吸音ではない音を副雑音と言います。副雑音には、ラ音と胸膜摩擦音があります(図2)。

図2副雑音の分類

副雑音の分類

 

代表的な副雑音であるラ音は、表2のように、さらに細かく分けられます。

表2ラ音の分類

ラ音 名称 音の聴こえ方
断続性ラ音 水泡音
(coarse crackles)
ゴロゴロ、プツプツ
断続性ラ音 捻髪音
(fine crackles)
チリチリ、パリパリ
連続性ラ音 笛音
(wheezes)
ヒューヒュー、キューキュー、ピーピー
連続性ラ音 いびき音
(rhonchi)
グーグー

 

実際、患者さんを聴診をすると、ラ音はよく聴く異常音です。特に、水泡音捻髪音カルテや看護記録に書かれることもよくあるので、表2にある4つの音はしっかりと覚えておいてください。

 

ストライダーとスクウォークは吸気時のみ聴こえる

連続性ラ音の中には、吸気時に聴こえるストライダーと、スクウォークと呼ばれる副雑音もあります(表3)。

表3ストライダーとスクウォークの特徴

名称 音の性質 音の聴こえ方
ストライダー
(stridor)
音域はさまざま ゼーゼー、ヒューヒュー
スクウォーク
(squawk)
一瞬の笛音 キュン、キュッ、ピッ

ストライダーは吸気時に聴こえる長い音なのに対して、スクウォークは一瞬の音のため、聴き分けは簡単です。

 

ストライダーは、咽、喉頭、上部気管など、胸郭外気道の狭窄(腫瘍や喀痰、喉頭軟化症、帯の機能不全、甲状腺腫瘍、喉頭蓋炎、異物など)やアナフィラキシーが原因で発生する音で、吸気時に聴かれます。ストライダーに対して、スクウォークは一瞬の音のため、聴き分けは簡単ですが、笛音との聴き分けは難しいことがあります。

スクウォークは、「スクウィーク(squeak)」とも呼ばれることもありますが、細気管支から発生する音で、捻髪音と一緒に聴こえることもあります。

なお、スクウォークは末梢気道で発生する音のため、胸部では聴こえますが、頸部では聴こえないという大きな特徴があります(1)

 

ラ音が聴こえた場合に疑うべき病変

聴こえたラ音から、患者さんにどのような病変があるかがわかります。ラ音と疑うべき代表的な病変の関係は、表4の通りです。

表4ラ音と疑うべき病変の関係

ラ音 疑うべき病変
水泡音・捻髪音 気道病変
間質領域の病変
笛音・いびき音 気道病変

 

しかし、このような病変があっても、なぜラ音が聴こえるのかという理由については、まだわかってはいません。大切なことは、ラ音と疑うべき病変の関係性を覚えておいてください。

 

memo音は狭い部位ほど高くなる

狭い部位で高い音が出るという事象は、私たちの身近な例でもあります。

例えば、口笛を吹く際、口のすぼめ方をきつくした方が高い音が出ます。

この原理を覚えておくと、高い副雑音が聴こえた場合は、音が発生している場所が気管の奥の方(末梢部)だと予想できるようになると思います。

ただし、例外として、笛音は頸部でもしばしば聴こえることがあります。

 

目指せ! エキスパートナース肺炎の患者さんと健康な患者さんで聴こえる音が変わる理由

肺炎の患者さんの肺ではどのような現象が起きているかを、コップとストロー、そして水で再現してみました(図3)。コップは肺を、ストローは気管支を現しています。また、左側のコップは肺胞腔内に水が溜まった肺炎の患者さんの肺を、右側のコップは通常のヒトの肺をイメージしています。

図3コップを使った肺のイメージ

コップを使った肺のイメージ

 

左側のコップには水が入っているため、ストローから空気を吹き込むと、音が「プツプツ」と聴こえることがわかります。これは、肺胞腔内に水が溜まっている肺炎の患者さんの肺では、普段、聴こえる低い音(肺胞呼吸音)に加えて、プツプツという水泡音が聴こえるということを現しています。

一方、右側のコップには水もないため、ストローから空気を吹き込んでも、「プツプツ」という音はなりません。これが健康なヒトの呼吸音です。

 

Check Point

  • 正常な呼吸音には、気管呼吸音と気管支呼吸音、肺胞呼吸音の3種類がある。
  • 副雑音には、水泡音や捻髪音・笛音・いびき音と呼ばれる4つのラ音と、胸膜摩擦音がある。また、吸気時にのみ聴こえるストライダーとスクウォークというラ音もある。
  • スクウォークは、胸部では聴こえるが、頸部では聴こえない。
  • 副雑音(ラ音など)が聴こえた場合、それぞれの副雑音で疑うべき病変がある。

 

〈次回〉

正常な呼吸音の特徴|基礎編(6)

 

 



[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科講師

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授


Illustration:田中博志


著作権について

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