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2016年01月10日

ペースメーカーの種類と適応

心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、ペースメーカーの種類と適応について解説します。

 

〈目次〉

 

ペースメーカーとは何か

原点に立ち返ってみましょう。心筋は脱分極による個々の心筋細胞の短縮によって、全体として心臓内腔の容積を減らす“収縮”という仕事を行います。

正常では、洞結節の自発的・周期的脱分極が心房に波及して、心房を収縮させ、その興奮が房室結節・ヒス束を経て心室を脱分極させ、心室が収縮します。

洞結節が周期的に電位を発生して、心臓の拍動リズムをつくるゆえに、洞結節はペースメーカー(pacemaker:PM)といわれているわけです。

この周期的な電位を直接心臓に与えて、人工的に収縮リズムをコントロールするのが、人工ペースメーカー(以下ペースメーカー)治療です。この心臓に加える電位を刺激といい、この人工的な電気刺激で心臓が調律されることをペーシングといいます。

 

体外式と植え込み型

電気刺激を発生する装置、ペースメーカー本体をジェネレーターといいます。このジェネレーターに電線を接続し、先端を心臓に接触させペーシングします。この電線をリードといいます。

ジェネレーターを体外に出して、リードのみが体内~心臓に入っているのが体外式または一時的ペースメーカー、ジェネレーターを皮下に埋め込む場合を植込み型あるいは永久ペースメーカーといいます。それぞれ専用のジェネレーターとリードを使用します。

体外式は、感染などの問題から長期間の留置はできず、一般には1週間が限度です。比較的簡単な手技で、緊急時、永久ペースメーカー植込みまでのつなぎで使用します。

植込み型は、10年以上の電池寿命があり、皮下に留置するため、1~2時間の手術が必要ですが、体内に留置するため日常生活が可能です。

 

まとめ

  • 体外式・一時的ペースメーカー:緊急手技、短期間
  • 植込み型・永久ペースメーカー:待期手術、長期間

 

ペーシング部位は

さて、心臓内で収縮する部位はどこでしょう。そう、心房と心室です。ですからペーシングできるのは心房と心室です。心房に刺激を与えて心房収縮させるのが心房ペーシング:A pacing、心室では心室ペーシング:V pacingといいます。

心房ペーシングは右房に、心室ペーシングは右室先端(心尖部)にリードを留置することが一般的です。

ここでポイント。心房と心室ではどちらが主にポンプ機能を担当しているでしょう。

当然心室ですね。心室が収縮すれば、ポンプ機能は維持されますから、心室ペーシングのほうが重要です。体外式は緊急処置ですから、基本的には心室ペーシングです。

 

ペースメーカーの機能は

刺激

ジェネレーターが電気刺激(pacing:P、ペーシング)を出す機能です。刺激電位が弱すぎれば心筋を脱分極つまり興奮させられません。心臓を興奮させる最小の刺激の強さを閾値(いきち)といいます。つまり、閾値以下の電位ではペーシングできません。閾値を超えた強さで刺激すれば当然ペーシング可能ですが、強すぎれば電池の消費が速いというデメリットがあります。

 

感知

心臓の自発的興奮があった場合、これをジェネレーターが心筋興奮と認識する機能が感知(sensing:S、センシング)です。どの程度の波高を感知するかを感度といいます。たとえば感度を5mVに設定すれば、5mV以上の電位を心筋興奮として感知します。

 

抑制

たとえば、心拍数60回/分で心室ペーシングを行うとします。60回/分ですから1秒間に1回心室を刺激します。

もし、1秒もたたずに心室の自発的興奮が発生して自己QRS波が出現した場合、その興奮を感知して、そこから1秒間刺激を待つという機能が抑制(inhibit:I、インヒビット)です。心室の興奮が出現したらペーシングはお休みするというわけです。

これは洞結節のリセットと同じで、自己興奮が出れば、その時点で周期をリセットします。もし、次の1秒の間にさらに自己興奮があればまた感知して抑制します。

言い換えれば、設定心拍数が60回/分の場合、自己心拍の周期が1秒未満ならばペースメーカーは作動せず抑制され、1秒を超えて自己心拍がなければペーシングされることになり、60回/分の設定は最低保証心拍数ということになります。

 

同期

心室収縮は心房の収縮からわずかに遅れることで、より効率のよいポンプ機能を発揮します。心房興奮を感知してそこからわずかに遅らせたタイミングで心室をペーシングする機能を同期(trigger:T、トリガー)といいます(図1)。より生理的な心臓の動きに近づけるため、心房収縮と心室収縮のタイミングを合わせる(同期させる)わけです。

図1心室をペーシングする機能:同期

心室をペーシングする機能:同期

 

ペースメーカーの種類はどんなものがあるか

刺激や感知の機能の組み合わせでペースメーカーが作動しますが、その種類を表現するためにアルファベット3文字(+1文字)のコードがあります。

最初の文字は、刺激(ペーシング)する部位で、A:心房、V:心室、D(dual):両方(心房と心室)のいずれかが入ります。

2番目は感知(センシング)する部位でA:心房、V:心室、D(dual):両室のいずれかです。

3番目は感知した興奮波に対する反応様式で、I:抑制、T:同期、D(double):両方のいずれかが入ります。

これに、運動時に設定心拍数を上げる機能(Rateresponse:R)を4文字目に入れることもありますが、原則3文字のアルファベットで4文字目のRはオプションです。

この組み合わせをモードといいます(表1)。よく使用されるモード別に説明します。

表1ペースメーカーの分類コード

ペースメーカーの分類コード

 

VVIモード

心室でペーシング、心室の自己心拍(自己QRS波)を感知、自己心拍を感知した場合は、その時点からペースメーカーの設定周期はペーシングしない(抑制する)というモードです。右室だけに留置する1本のリード(このリードで刺激・感知兼用)ですみます(図2)。

図2VVIモード

VVIモード

 

洞不全で、房室伝導が正常な場合は、理論的には心房ペーシングだけで有効ですからAAIモードでもよいのですが、洞不全は後に房室ブロックを合併することがあるため、最近では心房ペーシングのみのAAIモードはほとんど選択されません(図3)。

図3AAIモード

AAIモード

 

VDDモード

心室でペーシング、2文字目はD:両方で心房の自己興奮(P波)、心室の自己興奮(QRS波)のいずれも感知可能です。3文字目もDですから、心室の自己心拍については抑制(I)し、心房波を感知して、わずかにタイミングを遅らせて心室をペーシングする機能(T:同期)の両方の機能をもっています。

VDD専用リードでは、先端が右心室心尖部にあり、刺激・感知を行い、同じリードの心房に接触する部分で心房波を感知するので、2か所で感知可能で、リードが1本ですみます(図4)。ただし、心房接触部位は不安定でペーシングはできません。

図4VDDモード

VDDモード

 

DDDモード

両方(心房と心室)でペーシング可能、両方で感知可能、抑制・同期いずれも可能です。心房・心室に1本ずつ計2本のリードが必要になります(図5)。

図5DDDモード

DDDモード

 

リードが心房、心室に1本ずつ留置してあれば、DDD、VDD、VVIいずれのモードも切り替え可能です。また、VDD専用リード(1本で心房は感知のみ、先端は心室で感知・刺激)なら、VDDをVVIモードに切り替え可能ですが、DDDにはできません。また、VVI専用リードは、VVI以外は選択できません。

 

どんな場合にどんなペースメーカーを入れるのか

徐脈による症状(脳虚血症状:めまい・失神、心拍出量低下症状:心不全)があれば、原則的にはペースメーカーの適応です。

薬剤や急性心筋梗塞、心筋炎など回復の可能性のあるものは、体外式(一時的)ペースメーカーの留置だけで徐脈の改善とともに不要になります。

体外式は、よりシンプルに心室だけにペーシングするので、鎖骨下静脈や頚静脈、または大腿静脈から1本のリードを挿入しVVIモードを選択します。

徐脈の回復が望めない場合、または一過性でも再発する危険がある場合は、永久ペースメーカー植込み(pacemaker implantation:PMI)を行います。

心室は必ずペーシングが必要でアルファベットの1文字目はVまたはDになります。心房機能を温存したい場合は、心房ペーシング機能、心房と心室の同期機能をもつモード(VDD、DDD)を選択します。

 

まとめ

  • 徐脈症状があれば、原則ペースメーカー治療の適応
  • 緊急時は体外式、VVIモードが基本
  • 永久ペースメーカーは、VVIまたは、心房機能を温存する場合は、VDD、DDDモード

 

混乱しているでしょうから、アクティブ心臓病院看護部に例えて、頭の中を整理しましょうね。

ペースメーカーが必要な看護部は、要するに命令が心室病棟に届かず、業務(ポンプ機能)が滞っている場合です。

原因は2つしかありません。

①洞結節総師長からの命令が出ない(洞機能不全)

②心房管理室と心室病棟のつなぎ役である房室結節副総師長〜ヒス束病棟師長の伝達能力の不良(房室伝導障害:高度房室ブロック・完全房室ブロック)

いずれも、下位からの命令(補充調律)が出ないと心室病棟業務はストップしてしまいます。院内のスタッフではどうにもならんということで、命令を出す人を外部から看護部に入れる方法が人工ペースメーカーです。

心房管理部で周期的に命令を出して、管理部スタッフに仕事をさせる(心房を興奮させる:P波をつくる)のが心房ペーシング。心室病棟でスタッフに仕事をさせる(心室を興奮させる:QRS波をつくる)のが心室ペーシングです。

ある程度の強い口調で命令を出さないと、スタッフは仕事をしません。仕事をさせる最低の口調(刺激)の強さを閾値(いきち)といいます。

命令周期を設定して、その周期内に心臓が自発的に仕事をすれば、その時点で自発仕事を評価〔感知(センシング、S)〕して、外部命令は休み、周期をリセットします。これが抑制(インヒビット、I)で次の周期までに自発的仕事がなければ外部からの刺激で強制的に仕事をさせます。

心房管理室と心室病棟の仕事にうまく時間差をつけて、コラボさせる調整機能が同期(トリガー、T)です。具体的には、心房管理室の仕事を感知して、設定時間分遅らせて、心室病棟に命令を出して仕事をさせます。

心房管理室の自発仕事の評価(感知)、強制命令(刺激)両方を行うためには、心房専属スタッフ(心房リード)が必要です。同様に、心室病棟の自発仕事の感知と、刺激も心室専属の心室リードが必要です。

特殊な人材としては、心房は評価(感知)だけ、心室は評価(感知)、命令(刺激)とも可能なかつ感知した心房管理室の仕事と、心室の刺激をコラボ(同期)させるVDDという外部スタッフがいます。この外部スタッフの連携の仕方をモードといいます。心室病棟でだけ、評価(感知)し設定時間内に仕事がなければ、命令(刺激)するのがVVI(同様に心房だけで感知、抑制、刺激を行うのはAAIです)です。

心房管理室、心室病棟にそれぞれ専属スタッフを入れて、どちらでも感知・抑制・刺激が可能なうえに、管理室と病棟をコラボさせる機能(同期)をもつものがDDDです。

 

〈次回〉

ペースメーカーの心電図

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『ナースのためのアクティブ心電図』(著者)田中喜美夫/2014年3月刊行

ナースのためのアクティブ心電図

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