避妊方法|家族計画指導②

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は避妊方法について解説します。

 

吉川芙雪
滋賀医科大学医学部看護学科助教

 

 

避妊方法

1コンドーム

使用可能時期

産後、初回の夫婦生活から使用可能。

 

効果

コンドーム内に精子を留めることにより、精子の子宮内への進入を防ぐ。

 

注意点

・使用法を誤ると失敗率も高くなるため、使用法に関する適切な知識が必要である。
・JISマークが付いている品質が保証されたものを使用する。
・財布などに入れると劣化するため、保存方法にも注意する。
・天然ラテックスゴムのアレルギーの人は使用できないため、ポリウレタン製の製品を使用する必要がある。

 

使用方法

1手を清潔に洗う。

2性器接触前に、陰茎が勃起状態になってすぐに装着する。

3破損しないようにコンドームを個別包装内の端に寄せてから開封する。

4表裏を確認し、空気が入らないようコンドームの先端をつまむ。

5コンドームを亀頭の先端に密着させる。

6コンドームをゆっくりとペニスの根元に向かって、転がしながらかぶせていく。

7根元まで行ったら、周囲の皮膚を伸ばしながら、奥までしっかりとかぶせる。

8射精後は速やかにコンドームを押さえながら、ゆっくりと腟外へ抜き出す。

9使用したコンドームは生ゴミとして処理をする。

 

 

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2経口避妊薬(低用量ピル)

使用可能時期

母乳栄養の場合は、母乳期間終了から使用可能である。

 

母乳栄養とピル

ピルが乳汁分泌を抑制するため、授乳中は使用できない。

 

・人工栄養の場合は、深部静脈血栓症(DVT)のリスクがない人は産後3週間(産後21日以降)から使用可能である。DVTのリスクのある人は産後42日以降から使用可能である。

 

産後3週間しないと内服できない理由

出産により血液凝固能は増加し、血栓ができやすい状態にある。ピルは血栓症のリスクがある人は内服できないため、血液凝固系が回復する3週間後からの服用となる。できれば産後8週前後からの内服が適当といわれている。

効果(図1

エストロゲンプロゲストーゲンの混合薬を内服し、排卵を抑制する。
・子宮内膜が厚くならず、着床しにくい。
子宮頸管粘液の粘稠度が上昇し、精子の侵入を妨げる。

 

図1 ピルによる避妊の仕組み

ピルによる避妊の仕組み

 

プロゲストーゲン

プロゲステロン(黄体ホルモン)と同じ作用をもつ、人工的に合成された物質の総称。プロゲステロンは経口与薬での効果はないが、プロゲストーゲンは経口投与が可能で、経口避妊薬の主成分となっている。

ピルの副効果

・月経困難症の改善
・卵巣がん、子宮内膜がん、両性の乳腺腫瘍の予防
・子宮筋腫・子宮内膜症の予防、症状の緩和
・にきび、多毛症、PMSの改善

 

注意点

血栓症の既往や高血圧脂質異常などの人は内服できない場合がある。
・嘔気、浮腫などの副作用が出ることがある。

 

ピル服用による副作用

①起こりやすい副作用:嘔気、頭痛、乳房緊満感→内服周期を重ねることで軽減する。現在超低用量ピルも処方されており、このような副作用が起きにくいと報告されている。
②頻度は少ないが重大な副作用:血栓症・血栓性脳卒中・心筋梗塞→下肢痛や突然の激しい頭痛、胸痛がみられた場合はすぐに受診をする必要がある。
③ピル長期服用後の無月経

 

・内服を中止すると、3か月程度で避妊効果がなくなる。
・使用に際して、産婦人科の受診と処方が必要である。診察時、処方や相談をスムーズに行うために「OCLEP初回時問診チェックシート」に記入する場合がある(表1)。

 

 

表1 OC・LEP初回処方時問診チェックシート

OC・LEP初回処方時問診チェックシート

(日本産科婦人科学会:OC・LEPガイドライン2015年度版より改変)

 

OCとは

低用量経口避妊薬のことで、ピルという呼び名が一般的。
英語のOral Contraceptives(経口避妊薬)の頭文字を取ってOCといわれる。

LEPとは

月経困難症や子宮内膜症など疾患の治療を目的とした低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬をLEP(Low dose Estrogen Progestin)と呼び、避妊を目的として用いる薬剤をOCと区別している。

ピルと喫煙の関係

喫煙者がピルを服用すると、血栓症や心筋梗塞などの重大な副作用を起こすリスクが高くなる。さらに年齢が高くなり、喫煙本数が増えるほどリスクが増加する。35歳以上で1日15本以上タバコを吸う人はOCを服用することができない(表1)。

 

使用方法

産婦人科を受診し、ピルを処方してもらう(図2)。

看護師イラスト

21錠タイプ:月経初日から毎日一定時間に1錠ずつ、21日間連続して内服し、その後、7日間休薬する。
28錠タイプ:月経初日から有効成分入りのものを、毎日一定時間に1錠ずつ、21日間内服し、その後7日間はホルモンが入っていない偽薬(プラセボ)を内服する。

 

図2 経口避妊薬の服薬スケジュール

経口避妊薬の服薬スケジュール

 

 

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3IUD:Intrauterine device(子宮内避妊具)

使用可能時期

産後2か月以上が経過した後、使用可能となる。

 

効果

子宮内に異物があることによって、受精卵の着床を防ぐ。

 

注意点

子宮筋腫や骨盤内炎症性疾患などの人は使用してはならない。
・自然脱出したり、挿入したままで妊娠する可能性がある。
・出産経験がなければ挿入が困難である。
・妊娠の可能性を考慮し、月経中もしくは月経終了後7日以内に挿入する。
・不正出血下腹部痛、骨盤内感染などの副作用があるため、定期健診が必要である。

 

使用方法

・産婦人科を受診し、挿入する。
・挿入直後は炎症予防のため抗生剤を内服する。
・2~3年は交換不要である。
・抜去すれば妊娠可能である。

 

銅付加IUD(ノバT®

従来のIUDに銅線を巻きつけたもの(図3)。銅イオンが受精や着床を妨げる効果があり、高い避妊効果がある。銅アレルギーの人は使用できない。

 

図3 IUD(子宮内避妊具)

IUD(子宮内避妊具)

IUS:Intrauterine contraceptive system(ミレーナ52mg)

従来のIUDに黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を付加したもの(図4)。黄体モルモンが放出されるため、排卵抑制や子宮内膜の増殖を抑制し子宮頸管粘液を減少させることで、受精や着床を防ぐ効果があり、高い避妊効果がある。交換時期は5年間と長い。

 

図4 子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ52mg)

子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナⓇ52mg)

 

 

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4Natural family planning(NFP)

①基礎体温法

使用可能時期

月経周期が規則的になり、基礎体温が二相性になったことを3回以上確認してから使用する。

 

出産後の排卵周期

出産後の初回月経の約30%は無排卵であるが、第2周期目では80%、第3周期目では95%は排卵周期となる。

 

効果

自身の排卵日を知ることで、受精可能期間に禁欲し妊娠を避けることができる。

 

可能期間

卵子生存期間:24時間
精子生存期間:3日間

 

注意点

・産後は夜間授乳などの育児により、睡眠時間が一定に確保できないと正確な基礎体温が測定できないことがある。
・男性の協力が必要である。
・失敗率が高い。

 

使用方法

1婦人体温計を用意する。

2朝、目が覚めたら寝たまま体温計を舌の裏にくわえる。

 

基礎体温の正しい検温部位

舌下のいちばん奥にある舌小帯(中央のスジ)の両側が正しい測定位置

 

3測定した体温をグラフに記入する。

4低温期から高温期へ移行するときに排卵するため、妊娠を希望しない場合
・月経開始から高温期に入って3日目まで→避妊が必要。
・高温期に入って4日目から次の月経まで→避妊が必要ない。

5妊娠を希望する際は低温期から高温期へ移行するときの前後3日間の時期に夫婦生活を行う。

 

②オギノ式

使用開始時期

月経周期を再度6か月以上確認してから使用する。

 

注意点

・月経周期が一定でないと難しく、失敗率が高い(表2)。

 

表2 各種避妊法使用開始1年間の失敗率(妊娠率)

各種避妊法使用開始1年間の失敗率(妊娠率)

* 理想的な使用とは:選んだ避妊法を正しく続けて使用している場合
** 一般的な使用とは:飲み忘れを含め一般的に使用している場合
Contraceptive Technology, 20ed., Ardent Media, 2011, Table3-2改変、バイエル薬品ホームページより)

 

使用方法

16か月から1年の自分の月経周期から次回の予定月経を予測する。

2そこから逆算して12~19日の8日間を受胎期として禁欲する。

 

 

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引用・参考文献

1)横尾京子編、助産師基礎教育テキスト2013年版 第6巻産褥期のケア/新生児期・乳幼児期のケア,日本看護協会出版会,122-134, 2013
2)我部山キヨ子、武谷雄二:助産学講座7、助産診断・技術学Ⅱ[2]分娩期・産褥期、第4版、p.315~317、医学書院、2012
3)中山明子他編:お母さんを診よう-プライマリ・ケアのためのエビデンスと経験に基づいた女性診療、南山堂、2015
4)灘久代:産後の性交と避妊の実態-初めての出産から5か月が経過した女性の調査から、母性衛生、46(1):121、2005
5)倉智博久他:特集ホルモン治療UP TO DATE、ピルの普及とOCガイドライン、産婦人科治療、93(4):409~415、2006
6)牧野恒久他:避妊Ⅶ避妊法の選択3、産後の避妊、産科と婦人科、67(増刊号):264~267、2000

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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