FOLFOXIRI療法(看護・ケアのポイント)/大腸がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、大腸がん(大腸癌)の患者さんに使用する抗がん剤「FOLFOXIRI(フォルフォキシリ)療法」について、看護・ケアのポイントについて紹介します。

 

第1話:『FOLFOXIRI療法(化学療法のポイント)/大腸がん

FOLFOXIRI(フォルフォキシリ)療法

 

神崎洋光
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)

 

FOLFOXIRI療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:オキサリプラチンを長期間使用することで末梢神経障害はほぼ必発です!
  • ポイントB:オキサリプラチンによるアレルギー反応が生じることがあります。常に注意しておきましょう。
  • ポイントC:骨髄抑制の頻度が高く、特に好中球減少には注意しましょう。

 

〈目次〉

 

必ず覚えて! FOLFOXIRI療法の注意点

投与前の注意点

FOLFOXIRI療法は、進行がんの患者さんに対して行いますので、全身状態について十分評価しましょう腹水や胸水が高度な患者さんには、イリノテカン(カンプト)の投与は禁忌ですので注意しましょう。また、腹膜播種がある患者さんは、腸閉塞の危険性があるため注意が必要です。

 

memoイリノテカンを投与するレジメンはココに注意!

イリノテカンの代謝酵素に関連するUGT1A1という遺伝子について事前に検査して調べておくことが推奨されます。特定の遺伝子型では副作用が強く出ることがわかっており、副作用の予測につながります。

 

末梢神経障害の症状が出ていないか、事前に患者さんに聞いておきましょう。特に、高齢や糖尿病を合併している患者さんでは症状が強く出ることがあるため、十分に確認しておきましょう。 程度がひどくなる前には休薬する必要があるため、患者さんには十分に説明しておきましょう。

 

FOLFOXIRI療法のポイントA

  • オキサリプラチンを長期間使用することで末梢神経障害はほぼ必発です!

 

投与中の注意点

オキサリプラチン(エルプラット)の投与によるアレルギー反応に注意しましょう。また、オキサリプラチン(エルプラット)の投与によって、喉頭・咽頭の絞扼感を生じることがあります。その際は、投与を中断し、点滴速度を遅くすることで対処しましょう。なお、オキサリプラチン(エルプラット)によるアレルギー反応は、初回投与時に起こるとは限らず、いつ起こるかわからないため、常に注意しておきましょう。

 

投与中の早期型下痢(コリン作動性下痢)に注意しましょう。急にお腹が痛くなって下痢をするような患者さんはこの病態である可能性が高く、ブスコパンの投与を検討しましょう。

 

FOLFOXIRI療法のポイントB

  • オキサリプラチンによるアレルギー反応が生じることがあります。常に注意しておきましょう。

 

投与後の注意点

オキサリプラチン(エルプラット)特有の症状である末梢神経障害は、冷たいものを触ったりすると誘発されたり増悪するため、患者さんに十分説明しておきましょう。また、遅発性の下痢に注意を促し、食事摂取がままならない場合は、脱水の補正のために点滴が必要となることを説明しておきましょう。

 

また、Grade 3、4の好中球減少の発生率は50%と報告されており、使用する抗がん剤の量も多いため注意が必要です。突然の発熱などの症状が出た場合には受診するように説明しましょう。

 

FOLFOXIRI療法のポイントC

  • 骨髄抑制の頻度が高く、特に好中球減少には注意しましょう。

 

FOLFOXIRI療法時の申し送り時のポイント

アレルギー反応の有無を中心に急性末梢神経障害の症状がないか、血管痛などの症状がなかったかなどについて申し送りましょう。

 

申し送り例

本日より、進行大腸がんに対して、FOLFOXIRI療法を開始しています。本日の血液検査で抗がん剤の投与開始に問題ないことを確認しています。
イリノテカン投与直後から腹部痛があり、下痢を2、3回されていましたが、主治医の先生へ連絡し、ブスコパン投与の指示をもらいました。すぐに、ブスコパンを投与しましたが、それ以降は腹痛や下痢も治まっています。
オキサリプラチン投与によるアレルギー反応は認めませんでした。また、手足のしびれや胸部絞扼感もありませんでした。
現在は、フルオロウラシルの持続投与がされており、今後も継続してバイタルに注意して経過をみてください。

 

FOLFOXIRI療法時の看護記録に記載すべきこと

来院時の発熱の有無、食事や排便、睡眠の状況、抗がん剤投与中のアレルギー反応の有無や嘔気や嘔吐などの症状やその程度、急性末梢神経障害の有無などについて記載しましょう。

 

また、数コース投与してくるとしびれ(慢性末梢神経障害)が出ることが多いため、手足のしびれについて確認しましょう。腹膜播種がある患者さんには注意して使用する必要があり、腹膜播種の有無や腹水の程度についても記載しましょう。

 

患者ケア・看護ケアはココを押さえる

しびれや痛みなどの末梢神経障害の症状があっても我慢や遠慮をして医療スタッフに伝えない患者さんもいます。適切な時期に休薬ができないと回復しない末梢神経障害が残るため、積極的に問診をして症状の有無やその程度の把握に努めましょう。

 

次回の抗がん剤投与時にも、図1のような日常生活に支障をきたす症状が残っているようであれば、休薬を検討すべきです。

 

図1末梢神経障害によるオキサリプラチンの休薬を考慮すべき症状

末梢神経障害によるオキサリプラチンの休薬を考慮すべき症状

 

また、早期型下痢、遅発型下痢の2つに注意して、継続して抗がん剤治療が受けられるようにケアしましょう。患者さんにもその点を説明し、下痢がひどい場合には受診するように説明しておきましょう。

 

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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
神崎洋光
岡山大学大学院医薬学総合研究科消化器・肝臓内科学

 


*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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