胃はどれくらいの容量があるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
[前回]
今回は「胃の容量」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
胃はどれくらいの容量があるの?
胃は、非常に膨張性に富んだ臓器です。何も入っていない時には、わずか50mLの容量しかありませんが、最大限に膨張すると成人で2Lの飲食物を詰め込むことができます。胃の容量は新生児で50mL、2歳で500mLと大きくなっています。
胃は、胸部と腹部の境である横隔膜より下方の、やや左寄りに位置しています(図1)。横隔膜の下にある大きな臓器は肝臓だけですから、胃は残りのスペースを使って自在に伸縮することができます。
COLUMN胸やけが起こるメカニズム
胸やけは、飲食後に感じる胸骨下部の灼熱感や痛みのことです。胃の内容物が食道に逆流し、胃酸によって食道の粘膜が炎症を起こすことによって生じます。
正常な状態では、食道から胃に食塊が入ると、消化管ホルモンのガストリンが分泌され、噴門を閉じて逆流を防ぐ仕組みになっています。その後、食塊が十二指腸に達すると、セクレチンという消化管ホルモンによって噴門が開かれます。しかし、過食や脂肪の多い食事摂取によって胃での消化に手間どると、胃の中で食塊の渋滞が起こります。
このような時に食塊の一部が十二指腸に入ると、前述のように噴門部が開き、胃酸などが逆流して胸やけが生じます。胸やけは、噴門の筋力低下によっても起こります。高齢者の胸やけの原因の多くは、筋力低下によるものです。 噴門が開いた時に胃内の空気が逆流したものが「げっぷ」です。
COLUMN嘔吐(おうと)が起こるメカニズム
嘔吐は、乗り物酔いやめまいなどによっても起こります。様々な感覚刺激が延髄にある嘔吐の反射中枢に伝わると、迷走神経や大内臓神経(自律神経)、脊髄神経(横隔膜と腹壁の筋)に刺激が伝達され、嘔吐反射が起こります。
嘔吐反射が伝わり、実際に嘔吐運動が起こるメカニズムは次の通りです。
- ①胃の幽門が閉鎖され、噴門に向けての逆蠕動が起きます。これには大内臓神経が関係しています。
- ②深く息を吸い込んだ後、噴門が弛緩して声門が閉鎖されます。これには迷走神経が関係しています。
- ③幽門部がねじれ、横隔膜や腹壁筋が収縮して腹圧が上がると、胃の内容物が押し上げられます。これには脊髄神経が関係しています。
- ④咽頭や喉頭蓋が閉鎖され、食道が弛緩して内容物が逆噴射されます。これには迷走神経が関係しています。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版