脳室ドレナージ中の患者さんがCT室から帰室後、頭痛と嘔気を訴えた !(オーバードレナージ)
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、脳室ドレナージ中の患者さんがCT室から帰室後、頭痛と嘔気を訴えた(オーバードレナージ)場合について解説します。
日本赤十字社 愛知医療センター 名古屋第二病院 看護部
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
ドレナージ回路の開放忘れを防ぐためには、フィルタークランプとロールクランプの取り扱いを覚える必要があります。
検査への搬送やギャッチアップなどで頭の高さを変える際にクランプを閉鎖した場合には、必ず0点設定やチャンバーの高さが適切であるか確認をしてから、必ず2名でクランプの開放を確認するなどの対策が必要です。
- 脳室ドレナージの管理では、ドレナージ回路のクランプを開閉することがあります。
その際に誤った操作を行ったり確認を怠ると、とても危険な状況となります。
ドレナージ回路の正しい取り扱い方法を理解し実践できるようにしましょう。
起こった状況
症例
入院中の患者Aさんは、くも膜下出血により脳室内に貯留した血液や脳脊髄液の排出、頭蓋内圧のモニタリング、水頭症の予防などの目的で脳室ドレナージを留置していました。
頭部CTを撮影するため、医師によりドレナージ回路のフィルタークランプ2か所とロールクランプ2か所(図1)をそれぞれクランプし、CT室へ搬送しました。
図1フィルタークランプとロールクランプ

CT室からの帰室後、看護師がドレナージ回路のロールクランプを開放しました。
その後、Aさんから「頭が痛い」「気持ち悪い」という訴えがあり、脳室ドレナージの回路を見ると、血性の排液が流れるように出てきていました。
どうしてそうなった?
ドレナージ回路を確認するとドリップチャンバー上のフィルタークランプだけが閉じていました。
脳室ドレナージは、ドリップチャンバーの上にあるフィルターにより大気と交通しているため、開放式ドレーンになります。
閉鎖式ドレーンのように刺入部から排液バッグまでの落差によるドレナージではなく、チャンバーの高さで頭蓋内圧を調整し排出量をコントロールしています。
そのため、ドリップチャンバー上のフィルタークランプだけが閉じていると、開放式ドレーンから閉鎖式ドレーンとなり、外耳孔(圧の0点)から排液バッグまでの高さ(落差)分だけ陰圧となり、サイフォンの原理で脳室内の髄液や血液が排出され続ける状況となってしまいました(図2)。
図2脳室ドレナージの仕組みとオーバードレナージ

医薬品医療機器総合機構:開放式脳室ドレナージ回路使用時の注意点について.PMDA医療安全情報 No52,2017年12月.(2024/5/23アクセス)より引用
どう切り抜ける?
1 意識レベルやバイタルサインの観察を行う
頭痛や嘔気などの症状が出現した場合には、再出血などによる頭蓋内圧亢進による症状が疑われるため、患者さんに変化がないかを観察しアセスメントする必要があります。
頭蓋内圧が亢進すると、脳に血液が送りにくくなるため血圧が上昇し、心拍数は低下(徐脈)します。
このように、頭痛や嘔気以外にも、血圧の上昇、心拍数の低下などのバイタルサインの変化が見られます。
また、オーバードレナージにより髄液や血液が急激に排出されることで硬膜下血腫を発症したり、脳室内ドレーンの先の近傍にある脳実質に陰圧がかかり脳出血を引き起こしたりすることで、意識レベルの低下などの症状がみられることがあります。
2 ドレナージ回路の観察を行う
再出血であればドレナージ回路から血液が多量に流れてきます。
そのため、意識レベルやバイタルサインの観察と同時に、ドレナージ回路の確認も行います。
また、ドリップチャンバー上のフィルタークランプが閉鎖されていれば、サイフォンの原理によるオーバードレナージになります。
一方、ドリップチャンバー上のフィルタークランプが開放されている場合は再出血の可能性もありますが、チャンバーの高さが医師の指示よりも低い設定になっている場合や、0点設定よりも高い位置に外耳孔がある(ベッドがギャッチアップされている)状況で開放された場合にも、頭蓋内圧が高くなり、多くの排液が流出することになります。
そのため、0点設定(図3)は適切か、拍動の有無※、排液の性状や流出状況などの観察を行います。
※脳室ドレナージでは心拍に同調して液面の上下運動、つまり拍動があります。
拍動がない場合は、ドレーンの閉塞やドレーンの逸脱が疑われます。
図3脳室ドレナージの0設定

ドレナージタワーの0cmのと外耳孔の高さをレーザーポインターで合わせる。
3 医師へ報告し対応する
ドリップチャンバー上のフィルタークランプの開放忘れであれば、これ以上の陰圧を与えないようにするために、安全性を考慮して患者さん側のロールクランプを行ってから医師に患者さんの状態と状況を報告します。
また、0点設定やチャンバーの高さの設定間違いでも患者さん側のロールクランプを行い、医師に患者さんの状態と状況を報告し、指示のもと0点設定をやり直します。
クランプを開放する前には、クランプの開閉の順番(図4)を守り、安全に開放できるようにする必要があります。
図4クランプ開放の順番

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1) 池田亮編著:くも膜下出血,急性期脳卒中観察とドクターコール.日総研出版,名古屋:2011:121.
2) 開放式脳室ドレナージ回路使用時の注意点について.医薬品医療機器総合機構PMDA医療安全情報,No52,2017年12月.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



