ブドウ糖製剤が点滴されている上部から採血し高血糖であったため、インスリン注射した。患者さんが意識混濁となった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、ブドウ糖製剤が点滴されている上部から採血し高血糖であったため、インスリン注射したところ患者さんが意識混濁となってしまった場合について解説します。
広島市立北部医療センター安佐市民病院看護部
糖尿病看護認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
採血を行う場合には、点滴されている上部から行わないことが鉄則です。
血液データが本来と違った値になることで、患者さんに対して異なる治療が行われる可能性もあり、非常に危険なことにつながります。
採血を行う際には部位に注意していきましょう。
- 採血は日常的に行われる看護技術の1つですが、採血部位の選択も重要です。
誤った採血部位により、患者さんに不要な治療が行われる可能性があるため注意が必要です。
起こった状況
症例
糖尿病のある患者Aさん。絞扼性腸閉塞のため緊急手術となり、手術後は絶食・点滴管理となっていました。
朝方、担当看護師が採血を行い、採血した血液で簡易血糖測定を行ったところ血糖値が高値でした。
スライディングスケールに沿ってヒューマリンRⓇを皮下注射し、1時間後に訪室したところ、Aさんの意識が混濁していました。
緊急コールにより駆けつけた看護師が、ブドウ糖製剤が点滴されている上部に採血の跡があるのを発見しました。
どうしてそうなった?
ブドウ糖製剤が点滴されている上部から採血したことで、採血した検体にブドウ糖が混ざり本来の血糖値よりも高くなった可能性があります。
そして、本当の血糖値がわからない状態でインスリン注射を行ったことにより、低血糖を引き起こし、意識障害を起こした可能性があります。
どう切り抜ける?
1 迅速評価・一次評価を行う
意識障害など急変の場面においては、まずは速やかに迅速評価を行うことが重要です。
仮に低血糖を疑ったとしても、この時点では患者さんに何が起きているかまったくわからない状態です。
そのため、まずは急変対応として評価をすることが大切です。
迅速評価では、感覚を用いて短時間で評価し、一次評価では簡単な器具を使用しABCDEを評価していきます。
2 血糖測定を行う
意識障害を起こした患者さんの場合には、まず血糖測定を行い、低血糖を除外することが重要です。
意識障害を来す病態は多くあり、「AIUEOTIPS(アイウエオチップス)」という意識障害を起こした際の鑑別診断法が有用です(図1)。
図1AIUEOTIPS(アイウエオチップス)

低血糖はその中でも緊急を要し、かつ迅速に対応ができる病態の1つになります。
まずは、低血糖がないかを確認し、速やかに低血糖対応をしていくことが重要です。
3 速やかに低血糖対応をする
低血糖とは一般的に血糖値が70mg/dL未満のことを言います。
低血糖を起こしている場合は、速やかに低血糖対応をする必要があります。
低血糖対応の基本はブドウ糖の投与になりますが、意識がある場合と意識がない場合とで対応が異なります。
1)意識がある(経口摂取が可能な)場合

ブドウ糖10gまたはブドウ糖を含む飲料150〜200mLを摂取してもらいます。
ショ糖では少なくともブドウ糖の倍量(砂糖で20g)を飲ませますが、ブドウ糖以外の糖類では効果発現が遅延するため注意が必要です。
また、α-グルコシダーゼ阻害薬という糖尿病薬を内服している場合には、必ずブドウ糖を選択することとなります。
2)意識がない(経口摂取が不可能な)場合

意識障害がない場合、無理に経口摂取をすることは、誤嚥や窒息の原因となります。
そのため、意識障害がないと判断した場合は、ブドウ糖を静脈内投与します。
まず末梢静脈路を確保し、20%グルコース注射液40mLもしくは50%グルコース注射液20mLを静脈内投与します。
末梢静脈路が確保できない場合は、グルカゴン注射液の筋肉注射やグルカゴン点鼻薬粉末剤の点鼻といった方法もあります。
4 意識状態と血糖値の把握
低血糖対応後は、意識レベルが回復したかどうかと血糖値が改善したかどうかを把握する必要があります。
血糖値は経時的に確認していきますが、まずは、低血糖対応15分後に血糖値を再検し、血糖値が上がっていることを確認します。
その後は医師の指示に従い血糖測定を行います。
また、一時的に低血糖が改善しても、インスリンの作用が続いている場合は再び低血糖を起こすことがあります。
その場合は、引き続き低血糖症状に注意していくとともに、ブドウ糖液を持続点滴することも検討します。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



