インスリン2単位を輸液に混注する指示のところ、2mL混注してしまい 、患者さんの意識が混濁した!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、インスリン2単位を輸液に混注する指示のところ、2mL混注してしまい、患者さんの意識が混濁した場合について解説します。

松井 貴生

総合大雄会病院看護部
集中ケア認定看護師

 

 

インスリン2単位を輸液に混注する指示のところ、2mL混注してしまい、患者の意識が混濁し焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

薬剤を投与するときは6Rを確認し、準備・投与の間に中断がないようにします。
薬剤によっては専用の注射器を使用するもの、特殊な輸液ルートを必要とするものなど、さまざまな注意事項があります。
扱ったことのない薬剤を使用する場合には、先輩や薬剤師などに相談しましょう。

 

POINT
  • インスリンに限らず、臨床ではさまざまなハイリスク薬を使用します。
    また、薬剤の種類によって異なる単位を使用するため、事故事例が多く報告されています。
    薬剤投与の際はルールを守り、投与薬剤の特性を理解した観察が必要となります。

 

 

起こった状況

症例

患者Aさんは、右被殻出血にて入院中で意識レベルはGCS:E4V4M6です。経管栄養投与中です。

 

血糖値の推移を確認した医師からインスリンの皮下注射および12時より開始予定の輸液内へ、インスリン2単位の混注指示がありました。

 

看護師Bは看護師Cと「患者Aさんの12時からの輸液内にインスリン2単位を混注します」とダブルチェックを行いましたが、看護師Cは電子カルテの指示を確認したのみで、看護師Bが準備した薬剤を確認しませんでした。

 

看護師Bは輸液内に通常のシリンジで準備したインスリン2mLを混注しました。

14時に訪室した際に患者Aさんの意識レベル低下(GCS:E1V2M4)に気づき医師へ報告しました。

CT検査と血糖値を測定するよう指示がありました。

簡易血糖測定器での血糖値はlowを示しました。

 

 

どうしてそうなった?

指示されたインスリンの投与量は2単位(0.02mL)ですが、200単位(2mL)投与してしまったため、過剰インスリンにより低血糖に起因する昏睡が生じたと考えられます。

 

即時に大量のグルコースを静脈注射しないと、中枢神経系の神経細胞に不可逆的な損傷が生じることになります。

 

 

どう切り抜ける?

1 ハイリスク薬の認識と投与ルールの確認

医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアルにおいて、インスリンは投与量が単位(Unit)で設定されている注射薬として、特に安全管理が必要な医薬品です。

 

また薬剤の準備時・投与直前に6Rを確認するよう日本医療機能評価機構は求めています(図1)。

 

図1薬剤準備・投与直前に確認する6R

 図1薬剤準備・投与直前に確認する6Rを表した図

 

今回の症例では看護師が単位とmLを混同した、もしくはそもそも知らなかったということが考えられます。

 

また看護師Cの確認にも不備があり、“インスリン2単位は当然、専用の注射器で準備したはずだ”という思い込みがあったのかもしれません。

 

インスリンを準備する際は、専用の注射器を使用し、指示された単位数で準備できているか確認することが必要です(図2)。

 

図2専用注射器

専用注射器の写真

 

2 意識障害を認めたら“AIUEOTIPS”(アイウエオチップス)

患者Aさんの意識障害は主疾患が右被殻出血ということもあり、出血増悪も十分に考えられます。

陥りやすい思考ですが、こうなると出血の増悪だと判断する材料ばかりを集めてしまう傾向にあります。

 

例えば、「右被殻出血の患者さんである」とか、「そういえば、昼の血圧が少し高かった」など、問題ではなかったものも脳出血の増悪であるという判断を間違いないものにしようと合理化する特性があります。

新たな症状が見られた際は一度、頭の中を意識的にリセットしましょう。


カーペンターの分類(AIUEOTIPS、表1)は、意識障害の鑑別に役立ちます。

中でも今回の症例のような低血糖であるかどうかは簡易血糖測定器ですぐに判断できます。

 

低血糖による神経細胞の損傷は不可逆的であるため、緊急性が高く、迅速な判断と対応が必要になります。

 

表1カーペンターの分類:AIUEOTIPS

カーペンターの分類:AIUEOTIPSを表した表

 

 

3 低血糖時の対応

医師の指示に従い、50%ブドウ糖液20〜40mLの静脈注射が必要となるため、静脈路がない場合は確保が必要です。

 

50%ブドウ糖液の静脈注射後は一時的に血糖が上昇しますが、服薬内容によっては低血糖が遷延する場合があるため、経時的な血糖値のモニタリングが必要です。

 

意識障害の程度により、気道の維持が困難となる場合は気管挿管も考慮されるので、緊急カートも準備しておきましょう。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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