急変対応中バッグバルブマスク換気をしているがSpO2が上がらない!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、酸素チューブがバッグバルブマスク(BVM)に接続されていないことに気づかなかった場合について解説します。
新潟大学医歯学総合病院集中治療部
集中ケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
バッグバルブマスク(BVM)は自己膨張式換気装置です。
バッグの部分は外部の空気を取り込んで自然に膨らむため、酸素ガス供給がなくても換気が可能です。
しっかり酸素を接続し、リザーバーバッグ(酸素を充填する袋)が膨張していることを確認しましょう。
- 気道・呼吸の異常は短時間で生命の危機に直結します。
徒手的に人工呼吸を行う場合、使用する器具の構造上の注意点を知っておくことは重要です。
また、人工呼吸の手技についても理解しておかなければなりません。
起こった状況
症例
患者Aさんは、肺炎で入院中です。
肺炎が改善し食事が開始されましたが、常食のパンを咀嚼している際に咳嗽があり、息を吸った瞬間に苦しみ出し、誤飲による窒息となってしまいました。
看護師は応援を要請し、とっさに背部叩打法を行うことにより何とかパンを排出することに成功しましたが、Aさんは急激な意識障害・呼吸停止となりました。
橈骨動脈は触知可能で、モニタ上脈拍数は110bpm程度ですが低下傾向です。
BVMを用いて人工呼吸を開始し、胸郭は挙上しているのですが、SpO2が40~50%台の表示で上昇してきません。
原因がわからず焦っています。
どうしてそうなった?
酸素チューブがBVMに接続されていないことが原因です。
BVMは自己膨張式の換気装置なため、酸素を接続しなくても換気を行うことができます(図1)。
図1BVMの構造

その場合は室内気で換気を行うことになります。
酸素供給源をBVMへ接続し、リザーバーバッグが酸素によって充填・膨張していることを確認しなければ、高濃度酸素を投与することができません。
急変対応の処置の途中で、酸素の延長チューブを踏むなどして、誤って酸素チューブの接続が外れることも想定されます。
酸素チューブがBVMへ接続されていないことに気づかなければ、生命の危機的な状況となります。
どう切り抜ける?
1 患者さんに使用する前に正常に作動するか確認する
どのような医療機器でも言えることですが、正常に作動するか否かを患者さんで試してはいけません。
BVMを使用しなければならない緊迫した場面ではありますが、酸素延長チューブをしっかり接続し、リザーバーバッグが膨張すること、バッグを圧搾するとマスクからガスが出ることを事前に確認する必要があります(図2)。
図2膨張したリザーバーバッグではマスクに手を当ててガス排出を確認する

2 気道を確保する
BVMによる換気がうまく行かない原因で一番多いのは、気道確保がうまくいっていないことと、マスクのフィットができずマスクと顔の隙間からエアリークしてしまうことです。
手が小さくて気道確保とマスクフィットがうまくいかない場合などは、両手を使いましょう(図3)。
図3母指球法(VE法)

3 胸郭の上がりを確認する
BVMでうまく換気ができていれば胸郭が挙上します。
目視で確認することが大切です(図4)。
図4胸郭の上がりを目視で確認する

また、ガス交換がうまくいっていれば、チアノーゼが改善します。
人工呼吸の効果を判定するときは、SpO2の値だけでなく、顔(特に皮膚の薄い唇など)や手指など皮膚の色調を確認します。
緊張して力いっぱいバッグを圧搾してしまうかもしれませんが、胸郭の上がりを確認したらバッグの圧搾をやめてください。
気道抵抗がなければ、優しく肩揉みをしているぐらいの力で十分なことが多いです(図5)。
図5バッグ圧搾の程度(肩揉み程度で行う)

力いっぱいバッグを圧搾して気道内圧を上げすぎると、食道へ送気してしまい(図6)、胃が空気で膨張するため、横隔膜を挙上してしまい換気を障害してしまう可能性があります。
図6圧搾しすぎると気道内圧が上がりすぎて食道へ送気してしまう

4 リザーバーバッグが膨らんでいるか確認する
胸郭が上がっているにもかかわらず、SpO2の値が上昇しない場合、高濃度酸素が投与されていない可能性があります。
リザーバーバッグが膨らんでいるか、酸素チューブが外れていないか(図7)、ガス供給源の根本から確認するようにしましょう。
図7酸素チューブの外れ

5 BVMの組み立ては確実に行う
BVMは、一方弁があり、吸気時・呼気時それぞれ一方向にガスが流れる仕組みになっています。
過去にBVMの組み立て間違いによる医療事故が起きていることから、臨床工学技士が点検・組み立てを行っている施設や、組み立てが不要なシングルユース製品を採用する施設も増えています。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



