喫煙の発覚で禁煙外来が休診に―なぜ看護師はタバコを吸ってはいけないのか?

あなたはタバコを吸いますか?

 

先日(2016年10月2日)、敷地内での職員の喫煙が発覚したため、禁煙外来で算定していた4年半分の診療報酬を返還し、禁煙外来を休診したというニュースが流れました。

 

敷地内全面禁煙でも、隠れて吸っている人はいるよね…。

ルールを侵すことはいけないけれど、正直そう思った方もいるのではないでしょうか。

 

 

確かに医療者の禁煙に対しては、以前から各団体が精力的に取り組んでいます。

このニュースをきっかけに、医療者の喫煙はさらに糾弾されるのか?

そもそも医療者なのに吸っている方が悪い?

 

今回のニュースの背景とさまざまな意見をまとめました。

 

◆目次

 

 

【ニュースの概要】

禁煙外来を設けている島根県江津(ごうつ)市の済生会江津総合病院(300床)が、職員らが敷地内で喫煙したため禁煙外来の保険適用が認められなくなったとして、4年半分の診療報酬を返すことを決めた。

 

(中略)禁煙外来は9月27日から休診している。

朝日新聞デジタル 2016年10月2日より抜粋)

 

 

隠れて吸っている人は多い?少ない?

今回のニュースを受けて、「隠れて吸っている人が多いのでは…」「禁煙が守られていない施設が多いのでは…」という声が上がりました。

 

 

いまでは当たり前となりつつある敷地内全面禁煙

2014年10月時点で、全体の5割の病院(20床以上)が敷地内全面禁煙にしています。

 

屋内全面禁煙は約3割、残りの2割もなんらかの禁煙対策を講じているということです。

 

しかし実際、日本看護協会が行った調査(2013年)で、「敷地内全面禁煙」「屋内全面禁煙」「屋内喫煙場所設置」について、約 2 割のナースが「あまり守られていない」と答えています。

 

所属する機関の禁煙対策とその順守状況,日本看護協会:PDFより引用)

 

禁煙については、順守状況が良好とはいえないようです。

 

 

どうして病院の敷地内でタバコを吸ったらいけないのか?

では、どうして「敷地内/施設内全面禁煙」がここまで推進されてきたのでしょうか。

 

「医療機関における敷地内禁煙の意義」という論文の中では、「敷地内禁煙はそれ自体が無言の禁煙治療である」「患者の喫煙率低下にもつながる」などの理由が挙げられています。

 

また、受動喫煙が深刻な健康被害をもたらしているという報告が次々発表されています。

 

今年5月には、国内で年間約1万5千人が受動喫煙が原因で死亡していると発表がありました。

 

8月には、国立がん研究センターが、受動喫煙における日本人の肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」にアップグレードしました。

 

このように、「禁煙治療の促進」と、「受動喫煙防止」の2つが、施設内全面禁煙のおもな理由のようです。

 

 

どうして看護師は、タバコを吸ったらいけないのか?

さて、本題です。

看護師はなぜタバコを吸ってはいけないのでしょうか?

 

看護師を含め「医療者の禁煙」が言われるようになった発端は、WHO(世界保健機関)喫煙してはいけない集団を「妊婦」「青少年」「医療関係者」だと提言したことです(1999年)。

 

それ以降、「医療者の禁煙対策」は各医療団体により粘り強く実施されてきました。

 

日本医師会は、2003年に「禁煙推進に関する日本医師会宣言」として、「医師及び医療関係者の禁煙の推進」を掲げています。

 

日本看護協会も、長年にわたり看護職の禁煙に取り組んでいます。

 

実は、「2001年 看護職とたばこ実態調査」の結果では、看護職の喫煙率は全体で25.7%(女性 のみ24.5%)であり、一般成人女性の2倍以上という結果でした。

 

しかし、その後の取り組みにより、2013年には7.9%まで減少。

一般成人女性の平均を下回る結果になりました。

 

それだけでなく、看護師の喫煙者ゼロをめざすとし、「本会(日本看護協会)の今後の取り組み」として下記の5つを挙げています。

 

1.すべての看護職が、たばこが健康にもたらす影響について正しい知識を身につけ、受動喫煙から非喫煙者を守るためにも、看護職の喫煙をゼロにすることを目指します。

 

2.ニコチン依存者には、適切な禁煙治療・禁煙支援の必要性を啓発・推進します。

 

3.看護学生の喫煙防止教育や禁煙教育のさらなる推進に取り組みます。

 

4.病院・診療所、公共施設などでの禁煙対策の順守を実現します。

 

5.たばこのない社会に向け、必要な情報をすべての看護職に発信します。

 

禁煙治療の推進と、受動喫煙の防止のため、看護師の喫煙をゼロにすることが日本看護協会の方針のようです。

 

 

看護師の喫煙はゼロになるのか?

今回の事件では敷地内での喫煙が問題になりましたが、敷地内だけでなく、「医療者は喫煙してはならない」というのが各団体の方針です。

 

しかし、看護師の中にも喫煙者は一定数おり、各団体の方針と実情は一致しているとはいえません。

 

看護師の喫煙がゼロになる日は来るのでしょうか?

あなたはどう思いますか?

 

 

(参考)

禁煙外来病院で喫煙、4年半分の診療報酬返還へ 島根(Yahoo! ニュース)

医療機関における敷地内禁煙の意義(武蔵ヶ丘病院 呼吸器科)

受動喫煙で年1万5千人死亡 厚労省の推計が急増(日本経済新聞)

受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍 肺がんリスク評価「ほぼ確実」から「確実」へ(国立がん研究センター)

禁煙推進に関する日本医師会宣言(禁煙日医宣言)(日本医師会)

看護職とたばこ(PDF)(日本看護協会)

「2013 年 看護職のたばこ実態調査」結果(日本看護協会)

 

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