産科ドラマ「コウノドリ」 看護学校で見本になるほどリアル？

綾野剛が産科医を演じるTBSドラマ「コウノドリ」が好評放送中です。医療ドラマは数あれど、産科をテーマにした切り口が新鮮とあって、視聴率は初回12.4％を記録しました。

現役助産師・看護師の評価も高いと話題になっています。

ＪーＣＡＳＴニュース

看護学校の先生も納得の再現度？

現役助産師・看護師からも「リアルに作られている」と評価が高いようです。特に出産シーンには本物の新生児が出演しているそうで、したたる血液まで細部にわたり再現しています。

そのため、とある看護学校では、生徒に「コウノドリを見て現場の雰囲気を知りなさい」と言っているとか。手術シーンの医師・看護師のやり取りや心理描写に対し、「本番さながらの緊張感」という現場の声が多いからでしょう。番組公式サイトに医療従事者からの応援メッセージが多い点からも人気がうかがえます。

本物の新生児で再現 吉田羊すら「結婚できない」現実

また、忙しい産科スタッフの働きぶりもよく描けているとネット上で声が挙がっています。

星野源演じる産科医、四宮春樹が食事の時間を惜しみ、ジャムパンと牛乳で済ませているシーンは毎回出てきます。他のスタッフも食生活は惨憺たるものです。原作のお団子ぱっつん前髪の再現度がすごいと話題のベテラン助産師・小松留美子（吉田羊）にいたっては、「忙しすぎて結婚できない」と嘆いています。

激務、訴訟リスクにより産科数は過去最少に

吉田羊ほどの美人が結婚できないほどの忙しさ！？という話はおいておくとしても、産科医療の現場には、激務がつきものです。待ったなしのお産には息つく暇はありません。

それに加えて、訴訟リスクも他科に比べて高いです。福島県立大野病院で前置胎盤による帝王切開を受けた産婦が死亡したことで、2006年に産科医が業務上過失致死と医師法違反の容疑で逮捕・拘留されたことがありました（大野病院事件、2008年に無罪確定）。過失を認定するのが困難な医療事故に対し、警察が介入するということは医療の根幹を揺るがしかねないとして大きな波紋を呼びました。

この事件を機に産科を志す医師・看護師・助産師はさらに少なくなったといわれています。

こうした人材不足を受け、産婦人科や産科を掲げている全国の病院は昨年10月時点で1361施設（前年比14施設減）と、過去最少となったことが厚生労働省の調査で分かりました。厚労省は夜間・休日対応の多さなど厳しい勤務環境による人手不足が理由の一つと分析しています。

中学生が「私が育てる」とは言わない リアルな対処

ドラマの内容がリアルだという話に戻ると、最近の医療ドラマによくある「とにかく凄腕」なゴッドハンド医師は登場しません。綾野演じる鴻鳥サクラは、未受診妊婦や高齢出産、妊婦の風疹感染などあくまで現実に起こっている事例に対し、自分のできる範囲で最大限の対処をします。

象徴的なのは中学生の出産がテーマになった回です。これまでのドラマなら悩みながらも「赤ちゃんは私が育てます」という展開になるのがお決まりでした。しかし、コウノドリではサクラ自身の養護学校での経験が判断材料の一つとなり、里子制度の明暗なども絡めながら、不妊で悩む夫婦の元へ養子に出されることで決着がつきました。現実的な結末にネット上では「きれいごとじゃないのがいい」「その後を描いてくれて参考になった」などと賞賛の声が上がっています。

松岡茉優「命が生まれる場所」 産科の役割再考を

今後、少子化が進む世の中で産科医療はより大きな役割を担っていくでしょう。妊婦の高齢化が進み、出産に伴う危険が増えていくと考えられるからです。一方で、産科医療スタッフは不足しています。誰しも働く上で、激務や訴訟のリスクは避けたいものです。それでも、命の誕生に立ち会える現場は他にありません。とても尊い場所です。ドラマ内で松岡茉優扮する新米産科医・下屋加江も、産科を選んだ理由について「命が生まれるのを見届けられるところ」と挙げていました。

コウノドリは、産科医療の役割や社会貢献度、やりがい、もちろん大変な部分も含め、今一度確認するきっかけになるかもしれません。

（関連記事）

『コウノドリ』舞台挨拶レポート記事「ドラマ『コウノドリ』は看護師にとってもリアル？綾野剛・星野源に聞いた！」

ドラマ『コウノドリ』と厚生労働省がタイアップ！特製リーフレットで助産師を応援

（参考）

ドラマコウノドリ公式ＨＰ

日刊ゲンダイ

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