看護師をしながら妊活・不妊治療をするには?
産婦人科専門医

近年、女性の社会進出が進む中で、妊娠・出産と仕事・キャリアの両立に悩みを抱える女性が増えています。
看護師のみなさんの中にも、悩んだことのある方はいらっしゃるかと思います。
「妊娠や不妊治療について医学知識としては知っているけれども、いざ具体的に何をとなるとイメージがわかない…」
というご相談を看護師さんから受けることもありますので、今回は「看護師さんにとっての妊活・不妊治療」という視点でお話ししてみたいと思います。
妊活・不妊治療とは?

妊娠を望む場合、まずは「排卵期にタイミングをとる」といった試みから始めます。
ただ、生理周期が不規則だったり、長め、短めだったりという場合は、排卵日の予測が難しいこともあります。
基礎体温も参考にはなりますが、正確に測るのが難しいのと、夜勤もある看護師さんの場合は、毎日規則正しく基礎体温を測定するのは現実的には難しいと思います。
そんな方は、「妊娠を希望しているけど月経が不規則で排卵日が分からない」と婦人科で相談するのが良いでしょう。
婦人科では、ホルモン値の検査や超音波検査で、排卵の有無や卵胞の育ち具合を確認したり、排卵誘発剤で排卵を促したりすることで、タイミングを取りやすくできます。
毎月、排卵の時期に合わせた受診が必要になるため、通院が負担になりやすいのですが、日勤・夜勤のある看護師さんの場合、日中を自由に使える日があるため、逆に通院しやすいかもしれませんね。
もしちょうどよいタイミングで卵胞チェックに行けないとしても、ドラッグストアで購入できる排卵検査薬を活用してタイミングをはかることもできます。
しかし、タイミングが合っていても、1周期あたりの自然妊娠率は20代でも30%未満です。
不妊治療は、タイミング法、排卵誘発、人工授精(AIH)、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)など段階的に進んでいきます。
不妊治療は「無理なく、思いつめずに」

不妊の原因は多岐にわたり、女性側・男性側のいずれか、もしくは両方に原因があります。原因が不明なことも少なくありませんが、原因が分かるもののうち約半数は、男性にも原因があると分かっています。
不妊治療と仕事の両立はさまざまな困難を伴い、多くの女性が精神的・肉体的な負担を抱え、不妊治療と仕事の両立に悩む方も少なくありません。
不妊治療には大きく、
- 1経済的負担
- 2通院の負担
- 3精神的負担
の3つの負担があります。
不妊治療は保険適用化されましたが、それでも経済的負担を伴います。
また、不妊治療は、月に複数回の受診が必要となることがあり、勤務の調整が負担となることも多いです。
看護師さんは(われわれ医師もですが)テレワークというわけにはいかないので、シフトをやりくりして無理のない範囲で治療を続ける必要があります。
そして、やはりなかなか妊娠に至らないことが精神的につらく、仕事のパフォーマンスに影響してしまうこともあります。ただ、これはもともとの性格や考え方、パートナーとの関係性により個人差は大きいです。
「不妊治療は時間がかかるもの」と考え、あまり思いつめないようにするのがおすすめです。
妊活はいつ始める?

不妊を完全に防ぐ方法は残念ながらありません。裏を返すと、妊娠できるかどうかを事前に知ることはできないのです。
ですが、なるべく不妊の可能性を下げるのであれば、「先延ばしにしないで済む妊活は先延ばしにしない」ということになるでしょう。
自然妊娠率は、年齢が上がるにつれて低下します。35歳を超えると卵子の質が低下し始め、不妊治療を受けるケースが増えます。40歳を超えると妊娠率は大きく下がり、流産率も上昇します。
年齢だけは巻き戻すことができないので、やはり早めに妊活を始めるに越したことはありません。
もちろん、だれでも早めに始めることができるわけではありません。例えば、①すでにパートナーがいて、②どちらもお子さんを望んでいて、③すぐに妊娠できない事情もない、といったケースでしょう。
「妊活はもう少ししてからかな」となんとなく思っている場合は、先延ばしする明確な理由があるかどうかを改めて考えてみるのもよいかもしれません。
よく考えると、先延ばしする明確な理由は実はないということもあります。
将来いつか子どもがほしいけれど、今はまだパートナーがいないという場合は、30代前半までであれば卵子凍結しておく、というのも1つの選択肢です(東京都は補助がでます)。
キャリアもライフプランもあきらめないで

不妊治療と仕事の両立が困難なことで、キャリアをあきらめざるを得なかったり、退職や休職を選ぶ人も少なくありません。
厚生労働省が行った調査によると、不妊治療を行っている女性の11%が離職しています。
これは個人にとっての損失であるだけでなく、組織にとっても優秀な人材の流出という重大な課題です。
メンタルや体調による影響はすぐに対策をとるのは難しいですが、通院との両立が難しいという理由での退職や休職については、勤務時間の調整や時間給をとりやすくするなど、組織の工夫により対応できる可能性があります。
不妊治療についてはとりわけ相談しづらいと感じる方が多く、相談せずに離職しているケースもあると推測されますが、職場で相談すると、解決策が見いだせることもあります。
まずは相談して、仕事と不妊治療の両立を模索してみてください。
仕事を続けながら、理想のライフプランの実現を目指すことは決して贅沢なことではありません。
全てを完璧にするのは難しいかもしれませんが、どちらかをあきらめるのではなく、自分の中での優先順位をつけて、仕事もライフプランも実現可能な形を模索していきましょう。
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参考
- 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」
- Shoko Konishi,Fumiko Kariya,Kisuke Hamasaki,Lena Takayasu,Hisashi Ohtsuki,Fecundability and Sterility by Age: Estimates Using Time to Pregnancy Data of Japanese Couples Trying to Conceive Their First Child with and without Fertility Treatment.Int J Environ Res Public Health. 2021 May 20;18(10):5486.
Inaba Clinic 院長稲葉可奈子
産婦人科専門医・医学博士。京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得、双子含む四児の母。産婦人科診療の傍ら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報を発信している。
編集:北井寛人(看護roo!編集部)
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