最終更新日 2019/06/06

浮腫

浮腫 とは・・・

浮腫(ふしゅ、edema)とは、組織間隙に生理的代償範囲を超えて過剰な水分が貯留した状態である。水腫と同義語であり、一般的にはむくみともいう。

浮腫の症状は、それが生じる場所とその程度によって左右される。小さな範囲の浮腫であれば無症状であることも多い(蚊に刺されるなど)。舌や喉頭に生じた場合は息苦しさが生じ、最終的には窒息する可能性もある。下肢に生じた場合には両下肢の重だるさや歩きづらさを自覚し、重度になると血流障害から潰瘍形成に至ることもある1)。

【浮腫の形成】
浮腫の形成には、膠質浸透圧および静水圧の変化、血管透過性の亢進が関与する。

膠質浸透圧血漿タンパク質による浸透圧。血漿タンパク質は分子量が大きいので、毛細血管膜を通過できない。このため、毛細血管内と間質との間に血漿タンパク質の濃度勾配が生じる。

静水圧:静かな水の中における圧力。ここでは、毛細血管から外へ水分を押し出そうとする圧力。

血管透過性:血管壁の透過性、液体が血管壁介して移動する際の通りやすさ。

毛細血管と細胞の間にある間質には間質液が存在し、酸素や水分などの物質の運搬が行われている。血管動脈側では、膠質浸透圧(25mmHg)よりも静水圧が高い(35mmHg)ため、血管内から間質へ水分(血漿など)が移動する。
一方、毛細血管静脈側では膠質浸透圧(25mmHg)より静水圧が低い(15mmHg)ため、間質から血管内に水分が移動する。間質内の水分(間質液)の一部は毛細リンパ管を介して鎖骨下静脈へと回収される。
通常は、これらのバランスが保たれているため浮腫は起きない。しかし、膠質浸透圧の低下、静水圧の上昇、血管透過性の亢進が起こると、通常よりも多くの水分が間質内に貯留する方向に働く。その結果として、浮腫が形成される1)~2)

浮腫を分類する方法に、以下のように発生機序による方法がある。

(1)低タンパク血症
肝硬変ネフローゼ症候群、タンパク質の摂取不十分など
(2)血管内静水圧の上昇
心不全腎不全、静脈血栓妊娠、薬物など
(3)間質液膠質浸透圧の上昇
炎症、外傷、アレルギー悪性リンパ腫甲状腺機能低下症など

このほか、場所(全身性浮腫と局所性浮腫)や性質(圧痕性浮腫と非圧痕性浮腫)による分類もある。

【検査・診断】
観察と触診によって診断する。観察では、浮腫が全身性か局所性か、他の部位と比較して程度がどうか、左右差などを比べて評価する。触診では、患者が訴える場所や肉眼的に浮腫だと思われる場所を指で押してみる。全身性浮腫や下腿浮腫の場合、一般的には脛骨前面を押して圧痕性か非圧痕性かを評価する。圧痕性浮腫は押した部位の凹みがすぐには戻らない浮腫、非圧痕性浮腫は押した部位が直ちに元に戻る浮腫のことをいう。

【治療法】
浮腫の治療法は原因によって異なる。たとえば、アレルギーによる浮腫であれば抗アレルギー薬、打撲や外傷による炎症性浮腫であれば抗炎症薬を用いる。心不全や腎不全などによる全身性浮腫の場合には、利尿薬を用いる。


【引用参考文献】
1)北風政史編.ここが知りたい 利尿薬の選び方,使い方.中外医学社,2014,1-5.(ISBN:9784498117020)
2)古谷伸之.診察を極める!Dr.古谷のあすなろ塾 第3回 浮腫を極める!.レジデント.3,2008,6-7.

執筆: 小森大輝

順天堂大学大学院医学研究科 総合診療科学大学院生

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