最終更新日 2018/05/28

松果体

松果体とは・・・

松果体(しょうかたい、pineal body)とは、左右の大半球の間、第3脳室の後上壁から突き出すように位置している長さ5~8mm、幅3~5mmの卵形の小器官であり、内分泌腺としての機能を有する。松かさ(松ぼっくり)のような形態からその名がついたとされている。

【働き】

内部には松果体細胞、神経膠細胞、無髄神経線維が存在する。松果体細胞からは視床下部-下垂体系を介してメラトニンが分泌されており、中枢神経系への作用としては、性線の発達抑制、成長ホルモン抑制、プロラクチン分泌促進などの抑制作用を示す。小児から成長するにつれて松果体は縮小傾向を示し、性機能の発達に関与しているとされる。

無髄神経線維は末梢自律神経系からきたもので、網膜に入った光刺激を伝え、松果体細胞の分泌を調節している。中枢系への作用のほか、メラトニンはヒトにおいては睡眠を促進する効果があるため、これにより昼行性の日内リズムを作っているとされる。光に感受性を持つ特性から「第3の眼」と呼ばれることもある。

しばしばレントゲンや頭部CT画像にて松果体は石灰化を認めることがあるが、臨床的に問題にならないことがほとんどである。

【松果体に関わる疾患】

松果体を起源とする脳腫瘍は、原発性脳腫瘍の中では2.8%を占める。また、欧米諸国よりアジア系人種にやや多くみられる。組織学的に胚細胞腫(germ cell tumors)、松果体実質腫瘍(pineal parenchymal tumors)、神経膠腫(glioma)などさまざまなものが報告されているが、胚細胞腫が最も多い。内分泌系の異常を伴うことがあり、小児においては性の早熟化などがみられる。腫瘍が大きいと中脳水道を圧迫して閉塞性水頭症を起こし、頭痛嘔吐などを生じることもあるほか、中脳の障害として眼球運動障害(垂直方向への注視麻痺や近点を見るときに両眼が内方に向く反射障害〈調節・輻輳反射〉)がみられることもある。

治療は、組織学的な分類や症状に応じて、手術や放射線治療、化学療法などから選択される。

執筆: 石田 光

元 神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター

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