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2018年02月07日

“攻撃性のある”認知症者にどう対応する?

『エキスパートナース』2016年7月号より転載。
“攻撃性のある”認知症者への対応について解説します。

桑原 良子
聖路加国際大学大学院 看護学研究科 老年看護学 助教
聖路加国際大学 教育センター 生涯教育部 認定看護師教育課程(認知症看護)主任教員(老人看護専門看護師)

 

〈目次〉

 

① なぜ“攻撃的”になっているのかを考える

認知症は時間とともに病状が進行していきます。脳の機能が低下することにより、今まで経験した記憶を思い起こすことに時間がかかります。このような状況は、日々の暮らしのなかにある小さな判断にも迷うことになります。

認知症の人の「攻撃性」はなぜ起きるのかを図1に示します。

図1認知症者の「攻撃性」はなぜ起きるのか

認知症者の「攻撃性」はなぜ起きるのか

 

認知症の人は、周囲の人に行動を焦らされると判断に迷い、不安になりやすく混乱します。BPSD(認知症による行動・心理症状)は、認知症の人によく起きます。BPSDのなかには、対応が困難と言われる「攻撃性」があります。

認知症の人は、自身のつらく感じる症状を的確な言葉で表現することが難しく、感情的な反応を示すこともあります。まず医療者は、身体のどこかに「感染症」「脱水」、あるいは「便秘」等の異変がないか確認します。

ほかには、看護師がおむつ交換、あるいは口腔ケア等をするときに、大声で怒鳴ったり、蹴ったり、つねったりといった暴力行為を示すこともあります。

認知症の人に不安や混乱をきたす環境は、看護師のアセスメント力によって左右されます。医療者を含めた周囲の方の配慮や対応によって、認知症の人の攻撃性がなくなることもあります。

 

[事例]“攻撃性”のある認知症者への対応を考える

下記に事例を示します。

“攻撃性”のある認知症者への対応を考える

  • Aさん・80代、男性
  • 誤嚥性肺炎のため呼吸不全になったアルツハイマー型認知症、FAST分類5(中等度認知症)
  • 看護師は、誤嚥性肺炎予防のため口腔ケアは大切なケアと認識しており、Aさんには「肺炎にならないために、口をきれいにしましょう」と説明していた。しかしAさんは、看護師に手を上げていた

 

1Aさんはなぜ“攻撃的”になっている?

  • 看護師はAさんにケアの説明をしているが、Aさんにとっては、「これから歯磨きをする」と認識する前に、突然、何か(歯ブラシ)を口の中に入れられた状況だった
  • Aさんは、何をされるのかわからない恐怖があり、手を上げることにより、「不快」であることを表出していた

 

2“攻撃性”のあるAさんへの対応

  • Aさんが混乱を招くような表現(“自分は肺炎なのか!?”など)は控える
  • ブラシやコップがAさんに見えるようにし、視覚からの情報により、歯磨き行動の準備につながるようにはたらきかける

“攻撃性”のある認知症者への対応を考える

 

  • 歯磨きの方法を理解することができるように、歯を磨く導入部分について、看護師が部分介助する。

“攻撃性”のある認知症者への対応を考える

  • このように“何をするのか”行動の導入部分を示し、認知症の人の行動を待つと、自然に何をどのようにするのか方法がわかり、自分で歯を磨くことができるときもある。

 

②“攻撃性”のある認知症者への対応をチームで考える

攻撃性のある言葉や行動は、認知症の人の家族介護者の精神的な負担につながります。

看護職の限られた情報だけではなく、多職種チームの持っている多面的な情報を共有し、認知症の人はどのような要因により攻撃的になっているのか、その原因をチームで検討します。

いつもの慣れ親しんだ自宅(施設等)と入院環境は異なるため、認知症の人は、入院環境に慣れることに時間がかかります。そのため、入院直後から数日は特に混乱しやすく、夜間せん妄になりやすいと言われています。夜間せん妄の1つには「攻撃性」があります。

認知症の人へのケアマネジメントは、認知症の人とその家族、多職種チームにおいて医学的判断と特性を踏まえ、認知症の人の治療・ケアのエンドポイントを何にするのか検討することが肝要です。

 


[参考文献]

  • 1.山下功一,天野直二:BPSDとその対応.日本認知症学会 編,認知症テキストブック,中外医学社,東京,2008:70-80.
  • 2.高橋智:認知症のBPSD.日本老年医学会雑誌 2011;48(3):195-204.
  • 3.坂一幸:負の心理反応・感情・状態への治療介入.深津亮,斎藤正彦 編,くすりに頼らない認知症治療Ⅰ─ 非薬物療法のすべて─,ワールドプランニング,東京,2009:59-62.

[Profile]

桑原 良子(くわばら よしこ)
2011年聖路加看護大学大学院看護学研究科博士前期課程修了。2012年老人看護専門看護師。2015年より聖路加国際大学に勤務。

*略歴は掲載時のものです。


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2016照林社

P.50~51「“攻撃性のある”認知症者にどう対応する?」

[出典] 『エキスパートナース』 2016年7月号/ 照林社

著作権について

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