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  4. ミトコンドリアでのATP合成とリソソームの働き|解剖生理をおもしろく学ぶ

2015年07月13日

細胞には発電所とゴミ処分場まである?|細胞ってなんだ(4)

解剖生理が苦手なナースのための解説書『解剖生理をおもしろく学ぶ』より
今回は、細胞についてのお話の4回目です。

〈前回の内容〉

細胞はタンパク質の工場|細胞ってなんだ(3)
細胞の世界を探検中のナスカ。前回はたんぱく質の製造工場と配送センターを探検しました。


今回は、なんと細胞の中にあるという発電所とゴミ処分場を探検します。

 

細胞の発電所──ミトコンドリア

 

先生、あのソーセージみたいなのは何ですか

あれはミトコンドリアよ。ミトコンドリアはもともと、単独の生命体だったといわれているの。その証拠にDNAだってもっています

それがどうして、私たちの細胞の中にあるんでしょう?

それには、ちょっと長い物語があるの。聞いてくれる?

聞きます、聞きます

地球上で最初に光合成を始めたのは、藻類の一種でシアノバクテリアとよばれる生物(過去記事参照)。そのシアノバクテリアが酸素を作り出すようになると、今度はそれを利用してもっと多くのエネルギーを生み出そうとする生物が現れます。どうやら、それがミトコンドリアだったらしいの

それで?

酸素を使ってエネルギーを生み出すのは、酸素を使わないよりずっと効率がよかったのね。ミトコンドリアはそれによって大きなエネルギーを取り出すことができるようになったんだけど、上には上がいるもので、今度は別の生物が、そのミトコンドリアを内部に取り込んじゃった

つまり、それが後の人間ってことですか

そういうこと。もちろん、人間だけじゃなく、核を持った真核生物はみんな、ミトコンドリアを内部に抱えているんだけれど……

 

ミトコンドリアは細長い楕円形で、ソーセージか芋虫のような形をしています。二重の膜に囲まれ、内側の膜にはクリステとよばれるヒダが付いています。
ミトコンドリアの内部には酵素が溶け込んでいて、細胞の中に入った栄養素を分解します。このときに、酸素を使ってエネルギーを生み出すため、細胞内の発電所にたとえられています。

 

図1ミトコンドリア

ミトコンドリア

真核生物の細胞に含まれる細胞小器官でATPを合成する。1つの細胞に数百~数千個が存在してる。長さ10μm、幅0.2μmの球形から円筒形の形をしている。肝臓筋肉、神経のようなエネルギー代謝の盛んな細胞ほど、発達している

 

ミトコンドリアは、生物にとってとても重要なの。酸素はもともと生物にとって恐ろしい毒だったと話したでしょう? その毒を、エネルギーを取り出す材料に変えたのがミトコンドリア。生物はミトコンドリアを取り込むことで、たくさんの運動エネルギーを獲得できるようになったのよ

エネルギーを取り出すっていいますけど、エネルギーの正体ってなんだろう。よくわかりません

 

 

酸素を使って物質を燃焼させると、熱が生産されますね。これも一種のエネルギー。でもね、ここではもっと大事なエネルギーが生み出されているの。ATPって知っているかな?

ATP?

物を食べる、呼吸をする、運動する、そんなすべての生体活動で使うエネルギーのモトになるもの。だから、エネルギーの源なんていわれています

 

ATP

ATPは、アデノシンというヌクレオシドにリン酸が3つくっ付いた構造をしています。正式名称はアデノシン三リン酸です。
私たちの身体では毎日、たくさんのATPがつくられ、消費されています。物質を燃焼させると、水と二酸化炭素ができるのはわかりますね。実はこのとき、同時にATPもつくられていました。

食物+酸素→水+二酸化炭素+ATP

ATPはたっぷりと充電された電池のようなもので、3つあるリン酸分子の1つが結合から離れると、エネルギーを生じます。ヒトにかぎらず、真核生物はすべて、このATPが分解される際に生じるエネルギーを使って活動しています(図2図3)。細胞膜を介した能動輸送に使われるエネルギーの源も、このATPです。

 

図2ミトコンドリアでのATPの合成

ミトコンドリアでのATPの合成

 

図3ATPの構造とエネルギー産生

ATPの構造とエネルギー産生

 

ATP(アデノシン三リン酸)が分解して、ADP(アデノシン二リン酸)となる際に、エネルギーが放出される

 

栄養素と酸素を使ってATPを作り出す過程については、後日『呼吸する』でさらに詳しく説明しますので、覚えておいてください。

 

ゴミ処分場──リソソーム

最後に、細胞の中にあるゴミ処分場を案内します。人間社会と同じように、細胞の世界でもゴミは出ます。定期的に捨てなければ、細胞の中がゴミだらけ、なんてことになります。そう、細胞は「きれい好き」でもあるんです。

 

図4リソソーム

リソソーム

 

細胞の中のゴミを処分するのはリソソームです(ライソゾームともよばれます)。リソソームは、厚さ6~8nm(ナノメートル)の膜に囲まれた、直径0.4~数μm(マクロメートル)の小さな袋です。この袋の中には、たくさんの強力な酵素が詰まっています(図4)。酸性フォスファターゼやリボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、カテプシン、アリールスルファターゼ、β‐グルクロンダーゼ、エステラーゼなどなど。これらの酵素は細胞内で不要になった物質を分解し、処分します。白血球が取り込んだ細菌やその他の異物、毒物も、リソソームの酵素によって分解されます。
内部に強力な消化酵素をもつということは、諸刃の剣です。袋が破けた場合、せっかくつくったタンパク質や核酸まで分解されてしまうこともあるからです。そのため、この袋はしばしば「自殺袋」ともよばれます。

 

さて、細胞の内部についてはおおかた理解できたかしら?

なんとなく、イメージできるようになりました

まとめると、細胞の中で日々、繰り返されているのは以下の3つです。

1.遺伝子の指示に従い、タンパク質を作る
2.酸素と栄養素を使ってエネルギーを取り出す
3.結果生じたゴミを、分解して捨てる

結構シンプルだと思いませんか。
一つひとつの細胞の営みは、身体全体が毎日繰り返している営みと、とてもよく似ています。生理学ではその営み全体を総称して「代謝」とよびます。代謝のプロセス一つひとつのは、単なる化学反応にすぎません。しかし、それが身体の中で起こると、「生きている」という現象になります。
今度はそれをより深く理解するために、細胞を離れ、血液の流れを追ってみましょう。「生きている」ことの意味をきっと実感できるはずです。

 

〈次回〉

多細胞生物が備えた物流システム|流れる・運ぶ(1)


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

[出典]『解剖生理をおもしろく学ぶ』(編著)増田敦子/2015年1月刊行

解剖生理をおもしろく学ぶ

引用・参考文献 

著作権について

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  • 1.生体に侵襲が加わると必ず供給される内因性エネルギーは、筋タンパク質異化により供給されるアミノ酸を基質とした糖新生のことである。
  • 2.侵襲が加わった患者さんへのエネルギー供給は、「内因性エネルギー+外因性エネルギー=TEE(一日総消費エネルギー量)」となるように供給する。
  • 3.Overfeedingとは、過剰エネルギー投与のことだが、侵襲下のOverfeedingが引き起こされる代謝性有害事象には1)高血糖と2)栄養ストレスの2つがある。
  • 4.侵襲が加わった患者さんに外因性エネルギー供給である栄養投与を行うと、ホルモン・サイトカイン環境に直接作用して侵襲反応を軽減する。
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