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2018年08月21日

幾度も襲うフラッシュバック…暴力・セクハラに傷つく看護師たち

病室のイメージ写真

 

性暴力やセクシュアルハラスメント被害に対して声を上げるムーブメント「#MeToo」。日本でも大きな反響や議論を巻き起こし、これまでは見過ごされてきたようなことも「やっぱりおかしいよね」と問い直すきっかけが生まれました。

 

そしてこの流れは、看護師が経験する暴力・セクハラ被害にも。

 

「病気だからしかたない」「看護師なんだから、それも仕事のうち」と、その業務の特性から被害が表面化することの少なかった看護現場の実態に、少しずつ社会の関心が高まっています。

 

2回にわたり、看護師の暴力・セクハラ被害について考えます。

 

 

こんなことされるために国試を乗り越えたんじゃないのに

看護師はどんな暴力・セクハラ被害に遭っているのでしょうか。

 

看護roo!編集部では、看護師の皆さんの体験談や意見を募集。次のような声が寄せられました。

※プライバシー保護のため、内容は一部改変しています。

 

「清拭などのときに、患者さんが私のお尻や腰、胸に手を持ってくるため振り払ったら『看護師のくせして、患者にそんな扱いしていいのか』と罵声を浴びせられ、顔を叩かれた

 

「男性患者が、夜勤で巡回する複数の看護師に故意に自慰行為を見せ、『手伝ってくれ』と言う

 

「『一緒に寝よう』と腕を思い切り引っ張られた」

 

 

このほかにも理不尽なクレームや謝罪の要求、暴言など、被害の内容は身体的、精神的、性的なものと多岐にわたります。被害にあった看護師がその後、本来の看護ができなくなったというケースも少なくありません。

 

 

「フラッシュバックを何度も起こし、病室に行けない」

 

「こんなことをされるために、つらい学生生活も国家試験も乗り越えて看護師になったわけではない。新人ですが、辞めたくて仕方ない。看護を提供する立場なのに、自分がどうにかなりそうです」

 

「看護師という職業を汚された、尊厳を傷つけられたと感じている看護師もいる。(管理職として)対応やメンタルフォローなど、どうしていけばいいか悩んでいます」

 

 

寄せられた声からうかがえるのは、患者からの暴力やハラスメントに傷つき、切実に悩んでいる看護師たちの姿です。今回、複数の方が取材に応じてくれました。

 

 

腕にくっきりと残った歯型

病院のベッドサイドで寝具を整える看護師のイメージ写真

納得できないモヤモヤした思いが西島さん(仮名)に募る(※写真はイメージです)

 

神奈川県内にある病院の地域包括ケア病棟に勤務する西島ひろこさん(仮名・40代)が語ってくれた体験は半年前、夜勤で夕食の配膳をしていたときのこと。

 

「ごはん来ましたよー」

いつものように声をかけながら、西島さんは、軽度の認知症がある高齢の男性患者の背中に腕を回して身体を起こしました。ふと、そばにあった車椅子の方に目を向けた瞬間、片腕に走った強烈な痛み。

 

見ると、その男性患者が西島さんの腕に思い切り噛み付いていました。

 

「もう、ものすごい力でガブーッと。反射的に『痛い!』と声を上げたので、すぐほかのスタッフが駆け付けてくれて引き離してもらったんですが、腕にはくっきりした歯型と引き抜いたときの擦過傷が付いていました」

 

西島さんは同僚の勧めで当直の医師に診てもらい、インシデントレポートも書いて上司に報告しました。

 

「でも、『噛まれちゃったんだって? 大変だったね』とサラッと言われておしまい。医療安全部署の担当者もフォローの言葉はかけてくれましたが、具体的に対策を講じてくれたということはありませんでした」

 

「実は噛まれた翌朝が、ちょうどその患者さんの退院日。病院を出るタイミングで偶然、ご家族にお会いしたんですけど、包帯を巻いた私の腕を見て『あ、なんかごめんなさいね、おじいちゃんが噛んじゃったみたいで~』と。ああ、看護師の被害はこんなに軽く済まされちゃうのかって思いました」

 

看護職に就く以前、飲食店などの他業種で働いてきた経験のある西島さんは、こう話します。

 

「例えばファミリーレストランで同じようなことが起きれば、警察に被害届を出します。でも病院内では、まずそうはならない。それはなぜなんだろうって、いつも思います。看護師だって人間。暴力を受ければ怪我もするし、それ以上に心が傷つくのに…」

 

こうした状況に理不尽さを感じる一方で、看護師として患者からの暴力をどうとらえるべきなのか、考えは揺れています。

 

「認知症の周辺症状として現れた暴力であれば、病気のせいだからしかたないというか…。食事をしたくなかったのに起こされたのが気に障ったとか、何か理由があったんでしょう。こちら側の対応一つで(暴力行為がなくなるなど)変わることも確かですし、次はこうしようとか、自分の対応に気を付ければいいんだとは思います」

 

納得できないモヤモヤにふたをするように、西島さんは「あんまり考えたらやっていけないよね」とこぼしました。

 

 

日常となっていった被害、感覚は麻痺した

患者から受ける暴力や暴言、セクハラについて話す精神科勤務の看護師・田川まりさん(仮名)の写真

「ほかの病院ではどうしているのか知りたい」と話す田川さん(仮名)

 

「わたしの感覚はもう麻痺していると思う」。

 

東京都内の精神科で10年以上働く看護師・田川まりさん(仮名・40代)はそう切り出しました。

 

初めて患者からの暴力を受けたのは駆け出しのころ。暴力をふるったのは、隔離室に入っていた統合失調症の男性患者でした。

 

「ドアを開けた瞬間、こちらにピョーンと飛びかかってきて殴られました。それが拳だったのかどうかもわからないくらい突然で、身構える余裕もなかったですね」

 

幸い軽症でしたが、田川さんは目の下を切る怪我を負いました。このときのことを思うと、今も身体がザワッと震えると言います。

 

「『ブス』『デブ』みたいな暴言は日常茶飯事。精神科に来て間もないころ、男性患者の採血中に『旦那とは仲良くしてんの?』とか、性的にからかわれながら胸を触られたときは、なんだか本当に悲しくなっちゃって。『なんで私、こんなことされてるんだろう』って、悲しくて悔しくてボロボロ、ボロボロ、涙が止まらないことがありました」

 

しかし、田川さんは今、こうしたことが日常的に起こる環境に慣れてしまっている自分にも気づいています。

 

採血で手がふさがっている看護師の胸や股間を常習的に指でつついてくる患者がいても、「採らせてくれるなら、まあいいや」とあまり気に留めない。看護師の容姿について侮辱的な言葉を投げつける患者も、「正直だよねー」「女扱いされてるだけいいんじゃない?」と看護師同士、”あるある”の笑い話にして流す――。

 

自分も含め、看護師個人の感覚の鈍りに加えて、田川さんは、「症状だから仕方ない、みんな我慢すべき」といった暗黙の空気や、被害を報告しても「あなたの対応はどうだったのか、何か悪かったのではないか」と責められるような雰囲気があると指摘します。

 

「こないだも暴力を受けてしまったので、いちおう申し送りで報告したんです。そうしたら、若い同僚ナースがとっさに、『田川さんの対応に何にも悪いところはなかったんです!』とかばってくれたんですね」

 

「必死になって言ってくれる彼女を見て『暴力やセクハラの被害に遭ったら、自分たちの対応が責められる』と若い世代に思わせてしまったんだな、と申し訳ない思いでした。暴力を受ける=看護師が悪い、という図式をつくってしまっていたんですよね」

 

「自分の感覚は麻痺している」と自嘲気味に言いながらも、田川さんは、「精神科だから患者からの暴力やセクハラは起きて当然、というのはやっぱり違うと思う」と訴えます。

 

「我慢しろ、対応が悪かったではなく、まずは一言、『大変だったね』と受け止めてほしい。暴力が起きないようにするにはどうする、起きてしまったらどうするといった研修を取り入れるとか、病院としてきちんと取り組んでもらいたい。やっぱり暴力やセクハラが起きれば、患者さんを押さえ込んだり、本来のケアができなくなったりするわけですから、患者さんのためにも必要なことだと思います」

 

 

自分を責めて周囲からも責められる

患者・家族からの暴力・セクハラに直面したとき、看護師は、ショックや怒り、悲しみに襲われる一方で、「わたしのアセスメントや技術が未熟だったから」と自分を責めがちです。

 

また、職場によっては、被害に遭った看護師の対応を責めるような指導をしたり、「そんなの、たいしたことではない」「自分の方がもっとひどいことをされてきた」と過小評価したりすることで、さらに被害者を傷つける二次被害も起きています。

 

次回は、看護師が暴力・セクハラ被害に遭ったとき、自分の感情にどう向き合うか、どんな対応をすればいいのかを考えます。

 

 

 

看護roo!編集部では、「患者・家族から看護師に向けられる暴力・セクハラ被害」について看護師の皆さんと考え、情報を発信していきます。

 

うちの病院では、こんなふうに対策に取り組んで効果があった

管理者として、被害防止にこんなことを気をつけている

など、ご自身の体験談や勤務先での対策、この問題をめぐるご意見など、ぜひこちらまで情報をお寄せください。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

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コメント一覧(1)

1匿名2019年04月05日 11時17分

次やったら引っ叩くからね。とハッキリ言った。
言うときは言う。警察に通報してもいい。看護師だからって我慢する必要ない。

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今日の看護クイズ 挑戦者4182

酸素飽和度についての説明で、正しいものはどれでしょうか?

  • 1.酸素飽和度とは、静脈内の赤血球中のヘモグロビンが酸素と結合している割合を示したものである。
  • 2.パルスオキシメータを用いて測定した値をSaO2、動脈血ガス分析で測定した値をSpO2という。
  • 3.SpO2が正常であれば、体内の酸素量は十分であると判断できる。
  • 4.健康な人の酸素飽和度は96~99%だが、酸素吸入時はSpO2を90%以上維持すれば通常は十分である。
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