放送大学が看護師の特定行為研修実施へ|どうなる?「特定行為研修」

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放送大学が、今年10月から始まる「特定行為に係る看護師の研修制度」(以下、特定行為研修)の指定研修機関の申請に向けて検討を進めていることが分かった。研修プログラムのうち、座学の講義や演習部分を同大が主に担い、実習部分については医療機関などとの連携により実施する運用を想定。2016年度中の開設を目指し、連携先を募っている。 

(井田恭子=日経メディカル)

 

特定行為研修は、臨床病態生理学や臨床推論、フィジカルアセスメントなど、同研修を受講するすべての看護師が共通して学ぶ「共通科目」(表1)と、「循環器関連」「創傷管理関連」など21の特定行為区分ごとに習得すべき内容を設定した「区分別科目」から成る。いずれも講義・演習・実習で構成されており、区分別科目の実習には患者に対する実技が含まれる。

 

表1 特定行為研修の「共通科目」(厚労省資料より抜粋)

表1 特定行為研修の「共通科目」(厚労省資料より抜粋)

 

研修を行う指定研修機関には、これら一連の研修をすべて機関内で実施するところと(図1のパターン1)、内容の一部を「協力施設」と連携して行う機関がある(同パターン2)。

 

図1 指定研修機関における研修の実施イメージ(厚労省資料より、一部改編)

図1 指定研修機関における研修の実施イメージ(厚労省資料より、一部改編)

 

後者の場合、指定研修機関で講義など座学を中心とした研修を実施し、同機関の「協力施設」となった病院や診療所介護老人保健施設訪問看護ステーションなどで実習を行うといった連携方法が考え得る。受講する看護師の所属施設が「協力施設」となっていれば、勤務先での実習も可能になるわけだ。

 

講義・演習はeラーニングで実施

放送大学が計画する特定行為研修は、「パターン2」での実施を想定したもの。

全国の看護師が受講できるように、講義・演習部分についてはオンライン上で学習する体制を整備する。討論や発表などもオンライン上でできる、双方向性を担保した内容だ。対面で行う必要のある演習については、全国57カ所に設置されている「学習センター」を活用し、集合研修を行う。一方、実習に関しては、ガイドラインやシラバスに相当するものは放送大学が作成し、内容を標準化した上で、同大と契約を結んだ「協力施設」において実施する計画だ。 

 

「国は、2025年に向けて『二けた万人』の養成を想定しており、単純計算でも年間1万人の養成が必要となる。全国規模での研修には当大学のシステムがなじみやすいし、働きながら受講できる点は、制度の趣旨とも合致する」。副学長の小寺山 亘氏はこう説明する。

 

放送大学の小寺山 亘氏

「全国規模での研修には当大学のシステムがなじみやすい」と話す放送大学の小寺山 亘氏。 

 

もともと放送大学は、看護師国家資格の取得を目指す准看護師向けに、看護師学校養成所の教育内容の一部の授業科目を開設しているほか、学生には学士取得を目指す3年制の看護系短大や専門学校卒の看護師も多く、看護師教育に長年のノウハウと実績がある。「共通科目」の中には、既に同大で開設している授業科目の類似科目が含まれている。また、オンライン授業を行うためのインフラも有しており、これら既存の資源を活かして研修体制が構築できる点は、同大の強みと言える。

 

 

一方、医療機関にとっては、特定行為研修に関心はあっても、自ら指定研修機関となるにはハードルが高い。「協力施設」として提携することで、自施設の看護師が働きながら研修を受けられる体制を整備できる点は魅力だ。「受講者が勤務する施設で実習し、職場の医師から指導を受けられるのが理想だ。指導する医師にとっても、教え甲斐があるのではないか」と、放送大学大学院生活健康科学プログラム教授で医師の田城孝雄氏は話す。 

 

放送大学の田城孝雄氏

「2016年度中の研修の開設を目指したい」と語る放送大学の田城孝雄氏。

 

第1弾として糖尿病関連の研修実施を検討中

指定研修機関の申請に当たっては、1科目以上の区分別科目を開設する必要がある。「まずは、特定行為区分の中で最も侵襲の少ない『血糖コントロールに係る薬剤投与関連』(インスリン投与量の調整)から開設を検討したい」と田城氏。既にいくつかの医療機関に対して提携の打診を始めており、好感触を得ているという。「協力施設のニーズに応じて、区分別科目のバリエーションは順次検討していく予定だ」(田城氏)。

 

放送大学の特定行為研修は、大学院科目としての開設を予定している。共通科目だけでも7科目、14単位に相当することから、オプションとして修士号を取得できるプログラムについても今後検討していくという。なお、同大の修士課程の授業料は1単位あたり1万1000円。特定行為研修についても、座学部分はこの料金体系がベースとなるが、演習や実習を含むことから「受講料については未定」(小寺山氏)だ。

 

研修の開設時期について田城氏は、「区分別科目の最初の1科目が確定した段階で申請したい。2016年度中の開設を目指している」と語る。多くの協力施設を募りたい考えで、「当大学のスキームでタイアップして研修を実施したい施設があれば、ぜひ声をかけてほしい」と田城氏は話している。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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