NSAIDs を使う場合に胃薬は必要?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

 

今回は「NSAIDs投与時の胃薬の使用」に関するQ&Aです。

 

佐々木剛
大阪市立総合医療センター薬剤部担当係長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

NSAIDsを使う場合に薬は必要?

 

短期間の投与でも胃薬を使ったほうが、NSAIDs潰瘍のリスクが低減されます。

 

〈目次〉

 

なぜNSAIDs潰瘍は発生するのか

日本において、1991年に日本リウマチ財団が、NSAIDsを3か月以上服用していた患者1008人に内視鏡検査をした結果、62.2%に上部消化管病変が認められたと報告しています。また、ロキソプロフェンナトリウム水和物やジクロフェナクナトリウムによる上部消化管出血の発現率は、非服用者に比して5.5~6.1倍高率であったとの報告もあります。

 

NSAIDsによる胃腸障害の発生メカニズムは、NSAIDsが構成型COX-1を抑制し、胃粘膜保護作用(胃酸分泌抑制、胃粘膜血流増加、胃粘膜分泌促進)のあるPGE2 の産生を抑制することによるとされています(図1)。

 

図1消化性潰瘍の病因

消化性潰瘍の病因

 

胃潰瘍ガイドラインの適用と評価に関する研 究班編:EBM に基づく胃潰瘍診療ガイドライ ン第2 版.じほう,東京,2007:9. より引用

 

COX(シクロオキシゲナーゼ)は、ほとんどすべての細胞で発現している構成型のCOX-1と、炎症的刺激によって誘導される誘導型のCOX-2に分けられます。COX-1はPGE2やPGI2の産生を介し、胃粘膜保護にはたらきます。COX-2は炎症刺激により誘導され、炎症と疼痛に大きくかかわっています。多くのNSAIDsがCOX-2のみならず、COX-1も阻害するため、胃腸障害が発生すると考えられています。

 

特に表1のようなリスク因子をもつ患者には、NSAIDsによる潰瘍発生に注意する必要があります。

 

表1NSAIDs潰瘍発生のリスク因子とリスクの層別化

NSAIDs潰瘍発生のリスク因子とリスクの層別化

 

* 1 出血、穿孔など
* 2 中等度リスクに示した1~4のリスク因子

 

NSAIDs潰瘍はどう予防する?

「消化性潰瘍診療ガイドライン」での診療指針において、「NSAIDs潰瘍の予防には、高用量のNSAIDsの投与を避け、PG製剤(ミソプロストール:サイトテック )、PPI(プロトンポンプインヒビター:タケプロンなど)、H2RA(H2ブロッカー:ガスターなど)を併用する」とされています。

 

しかし、これらを予防で使用するには、日本では保険適応がなく(予防は保険診療の適応外)、また海外でのエビデンスが多いものの、日本でのエビデンスは依然として得られていないのが現状です。

 

日本でのNSAIDs潰瘍に使える胃薬

2010年以降PPI(ランソプラゾール15mg/日、エソメプラゾールマグネシウム水和物20mg/日)がNSAIDs投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制の適応を取得しており、潰瘍既往がある高リスク患者では、潰瘍再発の予防を目的としたこれらのPPIの投与が可能となっています。

 

エビデンスレベルはC1(行うほうがよい)ですが、レバミピドがPG製剤と同等の抗潰瘍効果があるとされています。

 

また胃腸障害を低減するために、炎症反応に関与するCOX-2のみを選択的に阻害するNSAIDsも開発されています。このCOX-2選択的阻害薬を使用することにより、従来型NSAIDsよりも消化管障害発生率が低いことが示されています。

 


[文献]

  • (1)菅野健太郎編:低用量アスピリン・NSAIDs 潰瘍 対策ハンドブック.先端医学社,東京,2011.
  • (2)日本消化器病学会編:消化性潰瘍診療ガイドライ ン.南江堂,東京,2009.
  • (3)胃潰瘍ガイドラインの適用と評価に関する研究班 編:EBM に基づく胃潰瘍診療ガイドライン第2 版. じほう,東京,2007:9.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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